田舎町、男が好きかもしれない(っぽい)俺、そして眩しいノエル・ギャラガー

I need to be myself
I can’t be no one else
俺は自分自身にならなきゃいけない
他の誰かにはなれないから

You need to find out
‘Cos no one’s gonna tell you what I’m on about
You need to find a way for what you wanna say
自分で見つけ出さなきゃいけない
誰も教えてくれないんだ
自分とは何かなんて
お前なりの意思表示を見つけるんだ

なんで、会ったこともないイギリス人が、
今自分に1番言って欲しいことを言ってるんだよ…。

自分のセクシャリティに悩んでいた浪人時代に、よく一人で自転車で海に行って、涙を流しながらoasisのsupersonicを聴いていた。

教育熱心な家庭に生まれ、進学校から有名大学に合格し、一流企業に就職して、幸せな結婚生活を送ることが人生の目的という、昭和のある種テンプレ的な育ち方をした自分にとって、自分がゲイだということはあまりに受け止め難い現実だった。

進学校で落ちこぼれて浪人し、セクシャリティに悩み、勉強も手につかない。だけど親の期待に応えなきゃいけない。

男とセックスしてる自分を気持ち悪いと思いながらも、やめられない。
もう、自分自身が何を考えているのかもわからないし、何をしたいのかもわからない。

自分と同じ、ゲイの人間に悩みを相談しても全然話が合わないし、女性的な側面を隠さずに接してくるゲイに関しては嫌悪感すらあった。

誰も自分を理解してくれない。
くたばれ世界。
そう思いながらも、勉強とセックスをダラダラと続けるという、荒んだ浪人生活を送っていた。

その頃の趣味といえば、音楽を聴くことくらいで、UKロック、特にブリットポップと呼ばれるジャンルが好きだった。

その中でも、oasisが断トツで好きで、素行不良、ダサいファッション、ビッグマウス、品性のカケラもないのに、曲のメロディが美し過ぎるギャップに完璧にやられていた。特に1stアルバムの荒削り感が大好きで、曲だけじゃなくて、ジャケットから、definitely maybeってタイトルまで好きで、definitely(絶対!)…maybe(多分)、ってどういうこと?笑
ってくらい、全部好きだった。

曲として好きだったのは、live foreverとslide awayで、自分の悪い癖で、アルバムを聴くとき、まずは好きな曲を何回もリピートして、もういいかなって思ってからアルバムを通して聴くので、supersonicの良さに気づいたのは少し遅かった。

I need to be myself
I can’t be no one else
俺は自分自身にならなきゃいけない
他の誰かにはなれないから

労働者階級の家に生まれて、15歳からレンガ積みの仕事をしてお金を稼いで、左利き用のギターがなかったから、右利き用のギターで練習して、倉庫番をしながら曲を作曲していたノエル・ギャラガー。

彼の思想の全てが、この2行に詰まっていると感じた。

15からレンガ積みで生計立てないといけないなんて、中卒コンビニバイトみたいなもんじゃん。15にして人生終わってるじゃん。利き手用のギターも買えないって貧しすぎるだろ…。

なのに、なんでこんなに強いんだよ…。
自分の人生を呪って不平不満言ったって許されるレベルなのに、なんで他者を羨まないんだよ。なんで、こんないい曲を作れるんだよ。
おかしいよ。

俺は、ノエルよりも恵まれているのに何で何もできないんだよ。     
なんで不平不満ばっかり言って、自分からも現実からも目を逸らしているんだよ。
おかしいのは、俺なのかよ…。

You need to find out
‘Cos no one’s gonna tell you what I’m on about
You need to find a way for what you wanna say
自分で見つけ出さなきゃいけない
誰も教えてくれないんだ
自分とは何かなんて
お前なりの意思表示を見つけるんだ

これまでの人生で、自分とは何かなんて真剣に考えたことなんてなかった。
自分が意思表示するなんてこと考えたことなかった。
だって、能力がない人間なんて無価値だと思っていたから。
自分よりも、優秀な友達の方が価値があり、自分がどういう人間であろうと彼らの方が社会的に価値があるため、自身の意見なんて無意味だと思っていた。

でも、ノエルは15歳の頃からやっていた。
労働者階級の子供に生まれ、父親から暴力を受けながら、利き手とは違うギターで意思表示をやっていた。
誰からも認められなくても、やっていた。
大好きなビートルズに憧れて。

遠いイギリスの知らない街で録音されたロックン・ロール。
それが、日本の田舎の欝屈している少年のもとに届いた。
ノエルがビートルズに憧れたように、少年はノエルに憧れ生き方を変えた。

当時、付き合っていたとも、付き合っていなかったとも言える相手に
「勉強に集中したいから、当分会えない。セックスも、自分は正直好きかどうかわかんないし、自分のセクシャリティにも誇りが持てない。」
初めて、自分が感じていることを口に出してみた。
「そうなの?面倒臭いね。楽に生きればいいのに。」
自分にとって楽に生きるとは、自分が納得する人生を歩むこと。
思考停止をすることが楽に生きることではなかった。
「そうなんですよ。僕、面倒なんです。それじゃあ。」
まぁこんなもんだよな、と思う自分と、わかってくれないんだなぁと思う自分がいた。傷つかなかったわけではないけど、これまでの自分とは違う気持ちで家路についた。

その後、悩むことがなくなり、勉強も順風満帆で、第一志望に合格!
………まぁ、そんな人生簡単じゃないですよね。笑

未だに悩むことも多くて、自分が選んだ道が正しかったと胸を張って言えることはないけれど。
自分の希望通りではないことが多い人生かもしれないけれど。

欝屈した浪人時代から10数年。
自分のセクシャリティを受け入れてくれる友人ができ。
彼の奥さんと一緒に、「ゲイと人妻チャンネル」なんていうフザケた名前でラジオをやっている、今の自分。

I need to be myself
I can’t be no one else
俺は自分自身にならなきゃいけない
他の誰かにはなれないから

You need to find out
‘Cos no one’s gonna tell you what I’m on about
You need to find a way for what you wanna say
自分で見つけ出さなきゃいけない
誰も教えてくれないんだ
自分とは何かなんて
お前なりの意思表示を見つけるんだ

やっぱり、ノエル・ギャラガーは神様かもしれない。

   


大好きなカリカリ梅や、勉強の書籍代に使わせていただきます。^^