シン   ――懐玉・玉折――


 悟は、ニートになった。

 バスケでプロになるため,就活をサボっていたらしい。
第二新卒で採用されるために今は一人で就活を続けている。

 硝子は、ヒモになった。
彼女なら上手くやっていくだろう。

必然的に私も一人になることが増えた。

 今年の夏は忙しかった。
昨年はあった夏休みは、労働者にはない。

 働く 受け取る (お金を)払う、その繰り返し。
 みんなが知ってる、労働の味。

 あの日から、自分に言い聞かせている。

 私が見たものはとても珍しい、誰もが知らない、私だけが体験したものだと。

「改めまして、内定した皆様ご内定おめでとうございます。」(拍手音👏)

 誰のために?

 ――あの日から。
 あの日から、自分に言い聞かせている。

 (時間を)払う (お金を)取り込む。

 私が見たものはとても珍しい、誰もが知らない、私だけの事だと。
知った上で、私は社会人として、皆の役に立つ選択をしてきたハズだ。

 ――(拍手の後景)――

 ――ブレるな。

「社会人としての責任を果たせ」

――数ヶ月後――

「は?」

「何度も言わせるな。傑が退職した」
「聞こえてますよ。だから「は?」っつったんだよ」
「傑はすでに実家で引き籠っていた。ただ結婚T」
「んなわけねぇだろォ!」
「悟、俺も何が何だか分からんのだ」

「や、硝子」
「(軽)犯罪者じゃん」
「お金の要らない、世界を作るんだ」
「ははっ 意味わかんねー」

――――――――――――――――――――――――――――――――――

「説明しろ 傑」

「硝子から聞いただろ。それ以上、以下でもないさ」

「だから、親にも迷惑を掛けるってのか?」

「親に迷惑を掛けて何が悪い? 私が生きている責任は親のモノだ」

「(社会的に)意味のないことはしねーんじゃなかったのかよ?」

「意味はある、意義もね。大儀ですらある。最近、ネットで診断を受けてみたんだが、私はどうやらASDの傾向があるらしい。国に申請すれば障害年金を受けれるかもしれない」

「あぁッ?!!」

「悟。他人のために生きて、何の意味がある? 「親孝行」と言って、モノをプレゼントをする。社会貢献を謡いつつ、会社に搾取され、家族や友達の時間を取れず、ただ働いて」
「そして自分の心は貧しくなっていく」
「労働とは、ただ金をもらうための行為だ。そこに「やりがい」を求めるのは、会社に適応できた強者だけだ。金をもらうことに意味はない」
「だから弱者は弱者らしく、周りに面倒を掛けるだけさ」

「私にならできるだろ? 悟」

「ねぇよ。国に迷惑を掛けて自分だけは楽して生きる? そんなの(人間的に)無理に決まってんだろ‼ できもしねーことをせこせこやんの、意味ねーっつんだよ!」

「傲慢だな」

「……?」

「君は他人にできやしないことを、『君にならできる』と言い聞かせるのか?」

「……」

「君は普通だから働くのか。普通じゃないから働くのか」

「何が言いてぇんだよ……?」

「もし私が国から援助を受け取れたら、このバカげた理想に地が付くと思わないか(……?)」

「生き方は決めた。あとは自分にできることを精一杯やるさ」

「くっ――、ウゥッ――。」

「働きたければ働け。それには意味がある。」(社会的に)

――虚式・茈――

「――えっ」

『呪術廻戦』シーズン2 、エピソード5 第29話 玉折より

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