エルとジョンの話
忘れもしない。
エルにするか?それともジョンか?
と父は言った。飼ってはいけないとは言わなかったことが嬉しかった。
弟が学校帰りに寄り道して遊んでいた家に産まれた茶色の子犬が我が家に来た。
数時間前に同級生の女の子がうちに来て、やっぱりうちでは飼えないから…と半ば強引に子犬を置いていった。
母は完全に迷惑だという顔をしていたが、
父は仕事から帰ってきて、犬を飼うなら名前をつけないとなと、私たち兄弟にそう言ったのだ。
うちはとても古いボロボロの家だったが、一戸建てだったので、飼うことになった。
私は間髪入れず、それならエルがいい!
と言って、名前はエルに決まった。
何もその2択から選ばなくてもよかったのだが、その時の私はエルを選んだ。
ハムスターを飼えばタマちゃん
リスを飼えばりっちゃん
という名前を付けていた私には、エル?える…
自分では思いつかないだろう名前を
結構気に入っていた。
しかし、なぜ選択肢が
エルとジョン
だっのか?
一応書いておくが父はエルトンジョンのファンではなかったと思う。
たまたまの思いつきが面白い父なので、なんの理由もなく口をついて出た名前なのだろう。
そういえば我が家のトイレの天井は父の思いつきである日突然青空になった。(青空の壁紙)
私はとても気に入っている。
我が家にやって来た雑種で茶色いエルは、私たちに癒しを与えてくれたが、短命でこの世を去った。
亡くなる1.2年前に赤ちゃんを3匹産んだ。
まっ黒の子犬
茶色の子犬
見事にミックスされた黒茶の子犬
私は茶色の犬が好きだったので、茶色を残した。
黒と黒茶は貰われていったが、黒がそれはそれは頭の良い犬だったそうだ。
そして黒茶は新しい家で、なんの運命なのか?
『ジョン』という名前を付けてもらい、とても可愛がって頂いていた。近い家だったのでよく遊びにも行かせていただいた。
寿命で亡くなった時など、飼い主さんから大泣きしながら電話がかかって来ていた。あまりの悲しさに、そのお宅はもう犬を飼うのをやめると言っていたが、しばらくして脚が短めの子犬を飼ったらしい。
これが30年以上前のエルとジョンの話。
ちなみに、我が家で飼うことになった茶色の子犬の名前は、、茶太郎だった。