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ファームエイジ これまでの実績

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【放牧の専門家集団】ファームエイジ㈱が過去に取り組んだ事業などをまとめています。
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#電気柵

小笠原諸島(父島)で世界初のプラナリア用電気柵を開発したときのこと

小笠原諸島が世界自然遺産に登録されたのは、2011年(平成23年)6月。 今回お話しするのは、そのさらに3年前、2008年の出来事です。 ミッション:プラナリアから島を守れある日、会社に一本の電話がかかってきました。 「プラナリアをなんらかの手段でコントロールしたいのですが、できますか?」と。 これだけでは何のことかさっぱりわからないと思いますので、順を追ってご説明しましょう。 まず、小笠原諸島には100種以上のカタツムリ(陸産貝類)の仲間が生息しており、そのうち9割以

知床五湖の電気柵がつなぐ、ヒグマと人の共生関係

クマ用電気柵への挑戦「ヒグマの生息する知床五湖に電気柵を」という話が立ち上がったのは、確か2004年(平成16年)のことだったと記憶しています。環境省からの依頼でした。 人間が知床の自然の中に入っていけるような遊歩道をこれからつくりたい。そのためには、ヒグマが登ってこられないような仕組みが必要である、というわけです。 ここでのテーマはあくまで、「観光客の安全」と「ヒグマとの共生」。 排除のためではなく、なるべくヒグマのあるがままの姿を守りながら、それを安心して観察できるだけ

国内初「エゾシカ対策用電気柵」誕生秘話(後編)

この記事は、先週に書いた「国内初『エゾシカ対策用電気柵』誕生秘話(前編)」の続きとなっています。 まだお読みになっていない方は、よろしければこちらからどうぞ↓ 貢献の実感、目の前の一人から シカ用電気柵の商品化に成功してすぐ、私は車で美幌峠を下っていました。すると、周りを森に囲まれたその場所に、大きな畑があるのが見えました。 「いかにも野生動物の被害に遭っていそうだな」と思った私は、すぐに車を止め、畑の隣の民家へと足を運びました。飛び込み営業です。 応対してくださったご主

国内初「エゾシカ対策用電気柵」誕生秘話(前編)

1985年創業当時、エゾシカによる北海道の農作物の被害額は約1億円と言われていました。 現在(約40億円)と比べるとまだ軽い方だと感じられるかもしれませんが、1980年代といえば、メスジカの狩猟禁止などの鳥獣保護政策が先立ち、シカの個体数が急激に増加し始めていたころ。 農業に携わる人たちが段々と、危機意識を持つようになっていました。 放牧用の電気柵の販売営業に回っていた私も、もちろん例外ではありません。エゾシカ被害は生産者さんの経営、生活に大きく影響します。被害防止のために