某外資系高級ホテルに1人で泊まった時の話(後編)夜明け〜まとめ

(お借りした画像はイメージです)

こちらの続きです。

前回まで:外資系高級ホテルに宿泊するも、数々の衝撃やら不思議な外国人との出会いやらで、夜になってもすっかり眠れなくなった私、さあどうする。

眠れない夜

布団の中でゴロゴロしている間に、気付けば深夜1時、2時と夜が更けていきます。今日はもう無理だと私は睡眠を諦めてベッドから降り、窓辺のソファに座って高層階からの夜景をぼけーっと眺めてみました。眠らない街TOKYOのネオン群、点ったり消えたりする赤いランプを見つめているうちに私は思い立って、ジョージ氏について調べてみることにしました。

詳細は伏せますが、ネットの検索結果から推測するに、彼はそれなりに有名人のようでした。ネット上の情報なのでどこまで真実かは不明ですが、まあ色々な噂だったり意見だったりが見受けられました。

これは後々になって気付いたんですけど、私にとっていくつか「おや?」と感じるポイントがありまして。

例えば昼間の会話。確かに彼の話は上手で人を惹き付ける力もあるので、その場では「なるほど!すごい!」とは思うのですが、少し時間が経ってみると何の話だったかがさっぱり思い出せませんでした。話を聞く姿勢や記憶力が悪いなどという私自身の問題もあると思いますが…。あと、「それが分からなくて経理が出来ますか?」と言われた時、冗談だとしても、相手の状況をよく知りもせずにそう言うのってどうなんだろう…なんだか煽られてる?と私は受け取ってしまいました。

そういえば菜食中心の食生活と言っていたけど、ナントカ肉のグリルやトンカツを食べてたなぁ…いや、きっと彼にとってみれば今日は何か特別な日だったのかもしれません。マウンテンバイクでアメリカ横断って結構ハードそうだけど、あの体型で大丈夫なのかな…いや、きっと当時は身体を絞っていて、現在はリバウンド後の体型なのかもしれません。。

都内某所 AM4:00〜チェックアウト

そんなことをしているうちに私は空腹を感じ始めました。考えてみたら、きちんとした夕食は摂っていませんでした。とはいえ深夜も深夜、こんな時間まで営業しているお店も少ないだろうし、東京都心の夜の街でひったくりにでも遭ったら嫌だな…だなんて不安になったりもしまして。結局、ホテル近くのコンビニまで出ることにしました。

時刻は午前4時。高層階のネオンから想像はつきましたが、深夜の東京は地上に降りても大変明るく、むしろ街灯の少ない住宅街よりも治安がいいのではないか?という気さえしました。春の夜風が気持ち良かったです。

サクッと買い物を済ませて部屋に戻ると、もう夜明けが始まっていました。次第に明るくなっていく空を見ながら、買ってきたハイボール缶を飲んだ後、永●園のカップ茶漬けをズズッと音を立てて啜る。ああ、あったかい。夜風にあたって少し冷えた身体に、五臓六腑にじんわりと染み渡る。この人工的な味の濃さ、胃の消化に良くない感じがたまらない。お茶漬けってこんなに美味しいものだったのか。

夜が明けきってすっかり朝になり、コーヒーでも飲もうとラウンジに出ることにしました。髪はボサボサ、すっぴんにメガネという出で立ちで目立たぬように隅っこの席を取ったはずなのですが、ジョージ氏にバッチリ見つかってしまいました。小綺麗な格好の方が多い中で、小汚い私のナリはかえって目立ってしまったのかもしれません。

昨晩のLINEの件もあり、何を話していいやら、というか、彼の顔をまともに見れませんでした。今日はどんな予定ですか、お出かけされるんですね、では引き続き良い旅を、みたいな当たり障りのない会話をしただけで、昨日とは違って比較的短時間で彼は去っていきました。コイツは食えない、と思われたのかもしれませんが、内心私はホッとしていました。

食後に部屋に戻ったところでようやく眠気が訪れたため、少し睡眠を取り、チェックアウトの手続きをしに再びラウンジへ。手続きはチェックインと同様に、大変スムーズでした。昨日のチェックインから今に至るまで、スタッフの方の応対で嫌な思いをすることが全くなく(日本語が通じなかったのは仕方がないとして)、改めてサービスの素晴らしさを感じました。おみやげにホテルの絵が入った可愛らしい紅茶缶も頂き、チェックアウト後もお好きなだけラウンジでお寛ぎくださいと言ってくださったので、最後の最後までラウンジを十二分に堪能させていただいたのち、ホテルを後にしました。

結局、私は田舎のネズミだった

あらゆるものが驚きの連続だった一泊二日でした。帰り道はゆっくりと余韻を楽しみたい…と思っていたのですが、自宅へ向かう電車に乗った瞬間、何だか一気に肩の荷が下りたような気がしました。旅行といえば旅行の帰りなので当然なのかもしれませんが、慣れない環境でずーっと気が張りつめていたんだと思います。無事家に着いて、安心すると同時にどっと疲れてしまいました。あれ、羽を伸ばしに行ったはずなんだけどな。いやまあ確かに休んだは休んだのですが。

しかし、非常に貴重な経験だったに違いはありません。すべてが非日常で、東京ド真ん中の高層階で、何もかもがキラキラふわふわとしていた場所。普段なら見ることができない、社会的に成功しているであろう方々の世界を一瞬でも垣間見ることができましたし、普段なら知り合うことのないであろう人(少しアヤシイ気配はありましたが)と言葉を交わすこともできました。

そしてこの経験を通し、自分はやはり庶民であることを改めて痛感しました。私の日常とは、座り倒してくたびれた家のクッションとか、いつもの電車の硬い座席とか、あとは昨日炊いて保温にしたままの硬くなり始めたお米とか、毎日スーパーで買う1本68円のお茶とか、そんなものたちに囲まれたものであり、そういう生活が肌に合っているのだということも。

イソップ童話の『田舎のネズミと街のネズミ』を思い出しました。田舎のネズミは都会の暮らしに憧れて、友達の街のネズミのもとにやって来る。街にはたくさんのご馳走があるけれど、散々危ない目に遭った田舎のネズミは、やっぱり自分に合っているのは田舎の暮らしだと分かって帰っていく。

結局私も田舎のネズミでした。慣れている環境のもと、質素に日々暮らしている。だけど、やっぱり煌びやかな世界に憧れることだってある。だからたまには街に出て、ホテルのアフタヌーンティーなんかで数時間キャーキャー言って、夢が醒めたら現実に戻っていく。そのくらいがきっと私にはちょうどいいんだと思います。

ということで…あれもこれも、と書いているうちにこんなに長くなってしまいました。お読みいただき、ありがとうございました。特に最初から最後までお読みくださった方は、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。笑

でも、眠れないまま、高層階で東京の夜明けを見ながら啜るお茶漬けは本当に美味しかった。ホテルでは他にもおしゃれなおつまみやアフタヌーンティーなどのご馳走も頂いたはずだけど、他より何よりこのカップ茶漬けが一番でした。多分私の人生史上でおいしかったもの上位にランクインします。また、あれ、食べたいなあ。でも、それだけのために数万使うのは…う〜ん。