見出し画像

某外資系高級ホテルに1人で泊まった時の話(前編)宿泊前〜チェックイン

(お借りした画像はイメージです)

ご覧いただきありがとうございます。スキもいただけてとても嬉しいです。ちなみにこのnoteは今のところ収益化のしの字もないので、私には一銭も入ってきません。

今回は数年前のことについてなのですが、細かい話も含めて書いてみたらとんでもなく長文になってしまったので3分割しました。

ざっくり言うと、数年前に憧れの某外資系高級ホテルに1人で1泊したら非日常の連続に衝撃を受けて帰ってきた、という話です。

高級ホテル、大好きです

普段は小市民として日々質素な生活をしている私ですが、実は高級ホテルとか行くの大好きです。ホテルラウンジでアフタヌーンティーとか、いい年してウキウキしてしまいます。

あの都会的で洗練された煌びやかな空間。座り倒してくたびれた家のクッションでもなければいつもの電車の硬い座席でもない、ちょうどいい感じにお尻が沈むふかふかなソファ。お上品な一口サイズで行儀良くプレートに並んだスイーツやセイボリー(サンドイッチなどの甘くない系のやつ)たちは、シャンデリアの光を浴びてキラキラと彩りも豊かで、食べる前から視覚的に楽しませてくれます。SNS依存症の代表であるわたくし、食べる前のスマホ撮影タイムも必須です。

そしてホテルで味わう紅茶は、普段家で淹れるティーバッグよりも何十倍も美味しい気がします。もちろん味そのもののの違いなんて私の貧乏舌では分かりません。某年始の番組でやってる格付けチェックをされたら、多分すぐに画面から消えると思います。高級ホテルの上質な空間で優雅にお紅茶をいただくという、その雰囲気が何よりも重要なのです。まるで自分のグレードまで上級国民になったような気がします。

ハイクラスの中のハイクラスを知る

私、数年前にホテルのアフタヌーンティーに集中して行っていた時期があったのですが、人間とは欲深き生き物でして、今度は数時間のアフタヌーンティーではなく、高級ホテルに一泊してみたいと思ってしまったのです。そこで、都内の高級ホテルについて調べてみました。

社会人なりたての頃に地元の有名ホテルに一泊した時の相場は大体3~4万円だったのですが、都内の高級ホテルとなると一泊10万円台とかって全然珍しくないんですね。思わずスマホを落っことしそうになりました。た、高い。

そして、そのようなホテルの中には大体、通常のお部屋があるフロアよりさらに上ランクの「クラブフロア」という存在があることも知りました。サービスはホテル毎で少しずつ違うようですが、クラブフロアのお部屋は通常のお部屋よりもゆったりとした造りになっていることが多い。また、クラブフロア宿泊客はホテル内のジムやプールも自由に利用できる。何より魅力的だったのは、クラブフロア宿泊客専用ラウンジなるものがあり、そこでは一日数回の軽食やおやつを出す時間があって、飲み物も自由に飲めるという点でした。

私は強烈な憧れを抱きました。泊まってみたい。一晩でいいから、こんな優雅な空間に身を置いてみたい。いやでもたかが一泊二日のために諭吉が何人も消えるだなんて。その金で東京ドームの外野席に30回以上も行けるじゃないか。数日間悩み、夫にも相談してみた結果、私1人で泊まることにしました。仕事のない日の平日、最も安いであろう曜日を狙って予約を取りました。サヨウナラ諭吉さん。サヨウナラ30回分の東京ドーム。

いざ、高級ホテルへ

待ちに待った宿泊日。ユニクロだらけのクローゼットの中から比較的マトモに見えるであろうワンピースを取り出し、誰も分からないけれど普段より気持ち濃い目に化粧をし、まるで中学生の初デート前のようなウキウキ気分。実際は30越えのオバサンか1人でホテルに泊まりに行くだけなんですけどね。

向かった先は、都内の某外資系ホテル。エレベーターでロビー階に降りると、向かいにある高級ブランド店から香水のいい匂い。以前アフタヌーンティーで訪れたロビーラウンジがあるけれど、今日は素通りして直接チェックインカウンターへ向かう。外資系だからか、やっぱり外国人のお客さんが多い気がします。私、浮いてないかな。精一杯のおしゃれをしたはずだが、何だか急に自分が安っぽく見えてきた。いやいや堂々としていよう。背筋をぴんと伸ばし、颯爽と歩く姿…を必死で装ってみる。周りからは滑稽に見えていたに違いありません。

私がカウンターに着くより先に、カウンター前にいた着物の女性スタッフの方が気付いて声を掛けに来てくださいました。予約を入れている旨を伝えると、素早くカウンターまで行って確認し、また戻って来る。「〇〇階でのお手続きになりますので、ご案内いたします」

なんだと。チェックイン前から既に未知の領域だった。チェックインカウンターでチェックインをしない、そんな世界がこの世にあったなんて。呆気にとられている間に案内されるままエレベーターで該当階に降り、眺望の良いラウンジに通されました。ここが例の専用ラウンジとやらなのか。常に人が行き来するロビーとは一転して、非常に静かで落ち着いた雰囲気。会話の妨げにも作業の邪魔にもならない心地の良い音量で、いい感じの音楽もかかっている。キョロキョロしている暇もなく、すすめられた席に着く。何となく書いてますが、ここまでめちゃくちゃスムーズな流れなんですよ。「あれっ?」という違和感を何一つ感じさせず、気が付いたら全てが終わっている自然な感じ。これが一流ホテルの接客なのですね。お見それいたしました…

すぐにお茶とおしぼりが運ばれてきて、ほどなくして先ほどとは別の女性スタッフがやって来て、チェックインの手続き。緊張してガチガチになっている私に、とても丁寧に説明してくれました。手渡された部屋のカードキーは厚みがある。ビジネスホテルみたいなペラッペラなヤツじゃない。このカードキーがないとエレベーターで専用フロアに来れないらしいです。「選ばれし民」な感じに早速テンションが上がります。

クラブフロアの部屋

通された部屋はツインルーム。事前にネットで散々下調べをしていたので何となく部屋の雰囲気は分かっていましたが、やっぱり広い。もちろん高層階なので部屋からの眺めもバツグンです。まずはスマホを取り出し1人お部屋撮影会をひとしきり楽しんだ後、とりあえずベッドにダイブ。予想はしていたが、ふわふわのフカフカだ。多忙なビジネスマンであれば、一日の激務を終えたあとにこの布団に入るのはきっと最高の気分なんだと思います。ベッドの端から端までゴロゴロし、ついでに隣にあるもう1つのベッドにもダイブ。小学生の修学旅行か。どこかに隠しカメラがあったらすごく恥ずかしい。部屋のマガジンラックに『東京カレンダー』(港区女子の日常、みたいなコンセプトの雑誌)があったのにはちょっと笑いました。できることなら私も港区女子になりたい。

東京という海外があった

部屋の見学ツアーを一通り終えた後、再び専用ラウンジへ向かいました。先ほどは気付かなかったのですが、かなり奥行きのある構造になっていました。中にはビュッフェコーナーがあり、一口サイズの軽食がずらり。数種類のチーズにサンドイッチに、野菜のジュレやパン、チョコレートやフランボワーズムースなどが彩りよく並んでいました。うひょー。そう叫びたいのを何とかこらえて、食べたいものを欲望のままお皿に取れるだけ取りまくり、着席。ビュッフェコーナーに飲み物がなかったので、近くの女性スタッフに何か飲み物があるか聞いてみると、一瞬の間を置いた後「申し訳ございません、私は日本語が分からないのです」と返ってきました。英語で。

うっぷす。ここって東京ですよね。ジャパンですよね。散々ネットで下調べをしたはずだったが、これは想定外だった。さすが外資系、客層はやっぱり外国人がメインなのだろうか。いや、日本人でもこのフロアに来るような方々は英語が出来て当然ということなのだろうか。そんなことを思いつつ、私は記憶のはるか彼方に追いやったはずの受験英語の知識を何とか引っぱりもどし、「え、えーと、あの。…ど、どんなのみものがあるんですか?」と、しどろもどろなカタコト英語を繰り出しました。

するとスタッフの方は微笑んで「何でもございます。」と応えてくれました。もちろんこれも英語です。ぱっと見は日本人かと思ったけれど、よくよく見たら東南アジア系のお顔立ちかも…いや、それより飲み物どうしよう。最初はやっぱり優雅にシャンパンか。いやでも高いのかしら。「追加料金とかってかかるんですか?」って聞きたいけど、英語が出てこない。

私のテンパっている雰囲気を察したのか、気付いたら隣のテーブルに座っていた外国人男性が「ナンデモアルヨ。」と声を掛けてくれました。ありがとうございます。しかし私は質問がしたいのでして…けど英語で何て言えばいいんですかってこの人に聞くのもどうなんだ。考えるのを放棄した私は結局ビールを頼みました。"Sure."とスタッフの方はニッコリ。素敵な笑顔。スムーズに英語でやり取り出来てたらどんなによかったでしょうか。もっとマジメに英語を勉強しとけばよかった…と後悔しました。

ほどなくしてビールが運ばれてきました。細身のグラスの中で上品に泡立つそれはシャンパンのようでした。うん、これはこれで結果オーライってことで。ひとりで乾杯しようとしたその時、先ほどの外国人男性と目が合いました。優しく笑いかけてくれ、「そちらに移ってもよろしいですか?」と、流暢な日本語で話しかけられました。驚きつつも、助け舟を出してもらった恩もあるしな…と思い、どうぞ、と応えました。

(つづく)