ただ、そばに居ればいい
私の父は、ALSという難病で数年入院生活を送っていた。その期間は私が小4ごろから中3まで。
筋肉がだんだん衰えていく病なので、最終的には人工呼吸をつけての寝たきりの状態だった。
母が懸命に看病をしていたことを覚えている。
病室からの景色
自分で歩いて、食べられて、話ができていた、元気だった頃の父の姿から大きく変わっていく過程を見て、まだまだ子供だった私には受け入れられない部分があった。
そんな父の姿を見るのが怖かったけど、母がお見舞いに行くたびに私も一緒についていった。
病室には入るけど、何か父に話しかけることもなく、病室の隅に座って窓の外の景色をずっと見ていた。
ちょうど中学校のグラウンドが病室からよく見えていた。テニス部が練習をしていて、私も当時テニス部だったからよく覚えている。
人工呼吸をつけていたから、たん吸引をしないといけない。
トイレに行けないから、排泄物の処理をしないといけない。
父を看病する音や臭いを感じ、私はやっぱり怖く感じてしまい、その姿を見ないように窓の外の景色をずっと見ていた。
何も手伝えなかったのだけど…
今なら、父の看病をできていると思う。
だけど、当時子供すぎた私にはできなかった。
何も母の手伝いができないまま、私が中3の時に父は他界した。
母と、ふと父の話になった時、
「お兄ちゃんは、病院までくるけど、『車の中で待ってるわ』と言って、病室には来なかったけど、えみちゃんは病室まで来てくれたもんね」
と言ってくれた。
本音を言えば、母は色々と私に手伝ってほしかったかもしれない。
だけど、私がそばにいてくれただけでも母にとっては救われた所があったかもしれないと、
その会話から伝わった。
慰めや励ましも大事だけど
辛いことがあったとき、温かい言葉に救われる。
だけどその言葉を受け取って、そこから再スタートをきれるかは、本人次第。
いつか動き出せるその日まで、そばにいて待っている人がいることが、本人にとって何よりの強みになるのではないだろうか。
私の家族や友達にとって、私もそんな存在でいられるようにいたい。
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