見出し画像

ドイツ版良妻賢母のイメージ

『王妃ルイーゼ』 1896年 ベルリン刊
Roehling, C. / Knoetel, R. / Friedrich, W., Die Koenigin Luise in 50 Bildern fuer Jung und Alt. Berlin, Verlag von Paul Kittel. 1896 <R18-350>
<First edition, oblong 8vo, 50pp, half cloth binding, rubbed in spine and back cover>

在庫あり:お問い合わせはこちらまで
極東書店 - ホームページ (kyokuto-bk.co.jp)

本書は存命のうちからプロイセン王国で慕われていた、プロイセン王妃ルイーゼ(Luise von Mecklenburg-Strelitz: 1776-1810)の生涯を絵本にして刊行したものです。

ティルジットでナポレオンと対峙するルイーゼ

彼女の人生を象徴するのは、ティルジットでの講和会議の際に、ルイーゼは会議から排除されたフリードリヒ・ヴィルヘルム3世に代わり皇帝ナポレオンと講和条件の緩和とプロイセン王国の存続のために単独交渉に臨んだこと。1810年ルイーゼが34歳の若さで亡くなると、窮地にあったプロイセンを救った彼女の早すぎる死がプロイセン国民のさらなる敬意を集めたといわれています。

ポツダムでの国王一家
良妻賢母イメージのルイーゼ

先代までの貴族的な国王と異なり、夫婦仲も良好で、王妃だけでなく国王も家庭に関わるなど、当時新興してきていた市民層の理想とする家族像とも一致していことから人気が高かった国王一家。他方でルイーゼ自身はナポレオンへの宣戦布告を国王に進言したり、プロイセン改革をおこなったシュタインやハルデンベルクに支持を与えるなど、政治的な関りも多かった女性といわれています。

王妃による慈善活動

ただ本書でのルイーゼはどちらかと言えば、この絵本が発行された19世紀後半から20世紀前半にかけてヴィルヘルム時代の女性の典型的とされた姿、ドイツ版良妻賢母である「三つのK:Kinder, Küche, Kirche」のイメージを前面に押し出して描かれています。
政治的な行動の描写は抑制的に、しかし愛国的であるとともに、典型的な女性の分野で活躍する王妃という、ヴィルヘルム期女性の理想像の提供こそが本書の発行目的であったと考えれます。ヴィルヘルム期のジェンダー観を確認できる一冊です。

参考文献:弓削尚子「軍服を着る市民とルイーゼ神話 : 近代ドイツにおけるジェンダー秩序一考」、『ヨーロッパ研究 = European studies』、12、5-21頁

〒101-0061
東京都千代田区神田三崎町2-7-10 帝都三崎町ビル
株式会社極東書店

*店舗・ショールームは併設しておりません。
まずはお問い合わせくださいませ。

https://www.kyokuto-bk.co.jp/