マガジンのカバー画像

妖精郷の音楽

6
イギリス・アイルランド幻想訳詩集
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

「The Enchantress」 シェーマス・オサリヴァン

きみがぼくの隣を歩いていたから、さらりと撫でつける きみの明るい髪を風はなびかせて 時はつぎつぎと不滅の翼をひろげて飛びたち 散る花も永遠のものに見えたんだ きみがぼくの隣を歩いていたから、そっと触れている 白く咲き誇る林檎の花よりもその指は白く 木の間の道は永遠の陽の光に満ちて 芝生を歩めばそこは妖精の国のようだったんだ きみがぼくの隣を歩いていたから、くすくすと笑って 音の波紋を静寂の岸辺にひろげ 悲しみはぼくの胸から永遠に飛び去り 故郷の沈黙へと永久に飛んで