16歳から17歳までの詩片 1
空
山に水は流れ
水は空に吸い上げられる。
空は野に潤いを与え
野は、川を造る。
雲は風に吹きとばされて
遠い時がごうごうと流されていく。
そして俺の命は一つの粒。
人の命は一つの粒。
ああ俺は風に流されていく。
時と共にはるか遠くに永遠に流されていく。
流されていく。
グッド・バイ
ドドドドド
時の流れは今日を指す
時の流れに飛び込んだ
ウゴカナイ
ウゴカナイ
俺の体、俺の手と足
ココロガ
ココロガ
ウゴカナイ
時の流れの溺死人
煙
少年は澄んだ目で工場からあがる煙を見ていた。
煙は流れる雲に中和しようとして
空に上がっていった。
少年は小さな手を固く握っていた。そして澄んだ目で煙の行方を追っていった。
小雨が何粒か少年の体の上に落ちた。
少年は体に落ちた雨を見た。
そして不思議に思った。
なぜ黒い雨が降らないのか
目の前をきらきらと光る白い車が、通りすぎていった。
生きるのでしょうか
生きましょう
朝のために。
その手は何を待つのです。
その目は何処を見るのです。
一人でさみしく思っても
一人でかなしく思っても
生きましょう。
明日の朝のために。
太陽系
夜に心に光るのは太陽でしょうね。
太陽が光るのは消えているからでしょうね。
生きる苦しみは光るもの。
生きていくということは死んでしまうということではないでしょう?
命があるということは結局死んでしまうということではないでしょう?
そのうち待っていると何百年も死なないひとがでてくるかもしれませんね。
そうしたらその人のために乾杯でもしましょうか。
あのころ
あのころを思い出す。
楽しかったあのころを
あのころと変わらないのは、
星の光と怠けた心
あのころ言葉を知らなくて
何も語れなかったけれど
今は言葉を知りすぎて
何も語れないようだ。
昔の夢はすべて悲しい。
あのころ、あの時、あの笑い。
無題
太陽がささぬ部屋のうち中
天空の中心の太陽の光
唯一、窓の表面にのみ映え。
立ち上がろうとする気力だけ。
精神は高々と舞い上がり、
ここに一つの殻が残る。
夏
ぬるま湯のような風に
つかりながら。
頭を机にあずけ。
かるくまぶたを閉じている
と、
あけっぱなしの窓から、
ぶんと羽虫がとんでくる。
ものけだるげに億劫に
そいつを指で
ひねりつぶす。
外はからっと晴れていた。
町
アスファルトに散らばる、
割れた破片をふみつける。
ざらざらとした感触が。
思い切りけとばす。
なお鏡は割れ。その破片がなお外界を。
割れた世界を映し出す。
どこかで人のはしゃぐ声がする。
夏は終わったのだ、
そんな気がした。
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