Rainy Day

雨は嫌いだ、癖毛がうねるから。
そう言うと君は僕の髪の毛を触りながらハハハと笑った。
「いいじゃん、トイプードルみたいで可愛いよ?」
わんこくんとわざとらしく僕を呼ぶから少しだけわざと拗ねてみたけど、全く気にする素振りもなく、君は僕の髪の毛を触り続けていた。
6月の雨は昔はしんしんと降っていたのに、最近はザーザーとやかましい音に変わった。
多分1人でいたらとても憂鬱でたまらないだろうこの季節、ハハハと笑う君に僕は妙に救われている。
このご時世、どこかに自由に行くのは少々憚れる中、こうして何もせずただのんびりと2人で過ごす時間は何よりの安らぎである。

君が僕の髪を触るのをやめ、膝をポンと叩いた。
僕は黙って君の膝に頭を乗せると湿気でうねった僕の髪の毛をそれはそれは愛おしそうに撫でた。
「今度は赤ちゃんみたいだね」
犬の次は赤ちゃんだそうだ、ふざけて親指をおしゃぶりする真似をすると手を叩いて君が笑うから、僕もたまらず吹き出した。
笑顔が太陽みたいだ、って初めて褒めた時君は顔をさくらんぼのように真っ赤にして照れたっけなんて思い出したように話してみると、君はあの時と同じように今度は耳まで真っ赤にして照れ隠しに僕の頭をポンと叩いた。

気付けば夕方になっていたので、僕たちは晩御飯の準備をし始めた。
トントン、グツグツと雨の音に代わって小気味の良い音が家の中に溢れた。
「今日はちょっと辛めにしてみようよ」
中辛でもヒーヒー言うのに、大丈夫だろうかと考えながらカレーにガラムマサラをいつもよりも多く入れてみた。
鼻をつく刺激的な匂いに隣で顔をしかめるものだから、また笑ってしまったところバカにしてと少しだけ怒られたけど、笑っていたから多分平気だろう。
そうしてできあがったカレーだが、多少耐性のある僕でもこれはと感じる匂いだった。
「いざとなったらこのヨーグルトを飲めば平気だよね?」
少しだけ身構えた君は恐る恐るカレーを口に運ぶと遅れてヒーヒー言い始めた、言わんこっちゃない。
ひゃーひゃー目の前で真っ赤な顔して悶えていた君が妙に可愛くなって思わず口にすると、頭皮まで赤くして君は照れた。
これはカレーのせいだからと頑なに認めないから、それが可愛らしくてまた笑った。
外では雨が降り続けていたけど、僕の耳の中はそれ以上に君の声でいっぱいになっていたから、もう気にならなくなっていた。

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