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talkin’ about Ayako Wakao 2

(仮) 娘が階段を上る時/溝口健二✨女が階段を上る時 (主演/高峰秀子/監督/成瀬巳喜男)


個としての女優が銀幕で存在感を輝かせるには、会社の商品である映画を、作品にまで昇華できる監督との出会いが不可欠。十代最後の年、戦前からの名匠、溝口健二監督から役をふられました。戦後復興に伴走する映画界への時代の要請が、新しい銀幕の華を求めるのは必定であったやな。

祇󠄀園囃子/1953 大映
監督/溝口健二
(web)

芸妓・美代春(木暮実千代)の家に、舞妓志望で訪ねてきた娘・栄子 (若尾文子)。

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仕込みっ子を取るほどの余裕がない美代春はいったん断るが、必死の眼差しで懇願する娘の強い意志に根負けする。そして零落した栄子の父親が自分の昔の馴染客で、亡き母親はかつての芸妓仲間であったと知る。

いやはやなんとも瞳は一途
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*若尾文子の父は戦前、無声映画の弁士だったが、戦後は長靴を扱う小商いをしていたという。それほど余裕のある家計ではなかったと想像できます。(しかし若尾自身はあるインタビューで、普通の会社員と答えてますが)

君の瞳に恋してる!

髪結って、こんなんなりましたけど
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Can't Take My Eyes Off You
            (1967/vo./ Frankie Valli)
            (w./B.Crewe & m./B.Gaudio)

                                            (youtube)

栄子の何としても花街で身を立てねばという眼差しに、映し絵のように重なる若き女優の瞳。常に映画表現を追求し、高めてきた溝口監督の眼光はしっかり捉えていたんやな。

姐さんのお座敷にお供して修業の日々
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ようやくお披露目の時がきて
お茶屋さんへご挨拶に回ります
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美代栄、見事に仕上がりまし嘆!
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厳しい修業の一年を経て、美代栄という舞妓になりやんしたが、ある夜、無体に迫ってきた常連さんの唇を噛んで、重傷を負わせてしまう。芯強めの娘です。若尾の内なるものが見事にシンクロする、感嘆面!  

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しかしその事件をネタに美代春姐さんは窮地に追い込まれる。
芸妓家業を仕舞おうとまで思いつめるが、祇園囃子が遠のいていく晩、美代栄と一緒ならまだやり直せるという一筋の光が残される。それは美代栄の優しさと剛い心があるからこそ。

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戦前世代の美代春と戦後世代の美代栄が互いに寄り添って、新しい道を進む。溝口監督の視線はそこに何らかの希望を向けているのかや。その銀幕に映える若尾文子は、
華はだ感!

祇園囃子 (唄/美空ひばり/1973)
*オリジナル1930/藤本二三吉/詞/長田幹彦/曲/佐々紅華

                                            (youtube)

それから3年後、溝口監督は再び若尾文子を起用します。
「祇󠄀園囃子」 では実年齢より4歳ほど若い役でしたが、本作では逆とあいなりました。

赤線地帯/1956 大映
監督/溝口健二
(web)

「赤線地帯」 はスター女優に偏重しない群像劇が重層的に画かれる溝口ワールド。

「夢の里」の人々
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花街や娼家を舞台に、玄人物を多く手がけた方が、売防法公布2ヶ月前に公開された本作品が最後の映画となるとは、いやはや何とも映画作家として撮りきった感!

若尾文子はすでに娘から女へと変貌している。とはいえ、後に開花するエロスの突出した役柄ではない。

娼妓(うかれめ)に手練あるは当然にして
当世書生気質/坪内逍遥
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スター女優になっていても、溝口監督の映画世界での一存在。全方位に目配りした女性群像劇ゆえですな。
古典に題材を得た 「西鶴一代女」「雨月物語」「山椒太夫」 をして、ベネチア映画祭で3年連続受賞するなど、日本映画を世界に認めさせた名匠の、同時代の女性の生きざまにフォーカスする執念が、見事に結実したものと思います。

大映女優連に囲まれても余裕ですが
何か?さすがの溝口健二
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*(ここに写られた方々、若尾さんを除いて皆さんすでに星になられていやはります)。時の流れは、いやはや何とも早いもので、、、

星の流れに(唄/藤圭子/1970)
*オリジナル1947/菊池章子/詞/清水みのる/曲/利根一郎

                                             (youtube)

特殊飲食店 「夢の里」を舞台に、若尾は、(ハナエ) 木暮実千代、(ゆめ子) 三益愛子、(より江) 町田博子の年増トリオが、男や金に苦労し、生活に疲れ果てているのに対し、客を手玉に取っては金を貢がせ、同僚へ貸して利子を稼ぎ蓄財する。

お客を煙に巻くのもお手のもの
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ドライな戦後的処世術で資金を作り、色街から足を洗う女 (やすみ)を涼しい顔でサラリと演じる。
関西から流れてきた京マチ子 (ミッキー)が奔放に、後先もなく享楽的な生きざまを見せるのに対抗するかのように。

店の看板嬢は何かとそりが合いません
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堅実すぎる「やすみ」は、貧しさがしみ込んだ南東北/北関東系の庶民性をまといながら、生来の美貌を武器にのし上がる典型であります。
生気を無くした小暮たち年増組と京/若尾の美形組、さらにそのニ人の階層違いの育ちから来る異質感  (ミッキーは父親と確執をもつ財産家の娘) が交錯する。
公認赤線終末期の情況を背景に、苦境にあえぐ女たちの行く末を、90分のフィルムで描いてみせる、これこそ人間縮図。それほど世間は変わっていないと、現在の私たちに突きつけるかのようでもある。そして監督は、むしろ老いはじめてもなおこの世界から抜けられない、年増トリオの物語に十分な尺を取っている。
ラストシーンでは、それまで皆の陰に控えていた、山出しの下働き・しづ子 (川上康子) がクローズアップされる。

客になかなか声をかけられない、しづ子
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布団屋の店主におさまった 「やすみ」 に代わって、初店に出たものの、客引きをためらう元はごく普通の田舎娘。化粧をし、着飾って夜に踏み出す先は、、、?

その鋭い切り口と深さを感じさせる遺作であっ嘆!やな。

My Foolish Heart (vo./青紀ひかり/2011)
(1949/w./N.Washington*m./V.Young)

                                            (youtube)

さて、
「今宵はここまでに致しとうござりまする」


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