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映画『パーフェクトブルー 』

9/15からリマスター上映している『パーフェクトブルー 』を観た。

本当に秀逸で、観終わった後はぼんやり物思いに耽ってしまうような作品だった。

この作品は、妄想と現実がシームレスに繋げられているためこれが現実かと思えば妄想だったの繰り返しが続き休む間もなく、無駄がなかったように思う。

いくつか、印象に残って書きたいことを書く。

①未麻が成長する場面
1番印象に残ったのが、未麻を追いかけている途中でルミちゃんが車に轢かれそうになる場面だ。
この場面は、未麻から離れたアイドルとしてのミマの人格が未麻の中に戻る重要なシーンだと考える。

未麻はルミちゃんが轢かれそうになる時、ルミちゃんとアイドルとしてのミマを重ねて見た。そのまま、轢かれるのを見たのなら散々苦しめられたアイドルとしてのミマを消すことができただろう。しかし、そうしなかったのは、アイドルとしての私も本来の私の1つなのだと認められたからだと思う。アイドルとしての私が存在しても、揺るがない自分を作れた瞬間なのだ。この成長は、轢かれそうになる前、未麻がルミに「私はわたしよ!」と言った場面や、映画の1番最後の「私が本物」と言った場面に現れている。

当初の未麻は、周囲の理想の未麻像に悩まされて自分がわからなくなっていた。まさに「あなたは誰?」の状態にあったわけだ。しかし、上記に書いた場面で「私はわたし」という、「あなたは誰?」のアンサーがなされている。

また、最後のシーンといえば、未麻が「私が本物」といい笑った時なぜかアイドルの未麻に見えた。最後の最後にホラーの要素を入れているのがおもしろい。

②ルミちゃんの心情
ルミちゃんは以前アイドルだったが成功しなかったという過去が田所さんとの会話から窺える。未麻のマネージャーとしてそばで見ていくうちにアイドルとしての未麻に憧れ、自分を重ねるようになった。でも、未麻がアイドルを辞め女優に専念していくなかで自分が理想とするザ•アイドルとしての未麻像が崩れ、それならば消してしまおうと考えるようになった。その大きな転換点となったのが未麻のレイプシーンの撮影だ。アイドル=純潔が成り立つような世界で、レイプシーンに映るということは完全にアイドルではなくなってしまうということである。このシーンはルミちゃんの中のミマというアイドル像が崩れた瞬間だった。
また、未麻にとってはこのシーンはほんとうに女優を目指してよかったのか迷いがある中でアイドルとしての自分を断ち切る決定打となった。もうアイドルとしては戻れない中で、アイドルの理想を押し付けられた結果アイドルとしての人格が外に出てしまい、未麻にとっても重大な転換点となるシーンだった。

③ストーカー男の声
ずっと未麻に付き纏っていてヤバそうな雰囲気を放っていたストーカー男だが、未麻を襲う際に出た声はとても意外だった。なぜか、この高い声を聞いた瞬間小物感が漂った。低い声じゃなく高い声にあえてすることで黒幕じゃない、まだ何かあると思わせる仕組みになっているのだと思う。

④感想
この作品を見て感じたことは、周囲は自分がどんな人かを勝手に決めつけてしまうので、自分の軸を持っていないと周囲が決めた自分(理想)に呑み込まれてしまうということだ。みんな周囲が理想とする仮面をつけて生活していて、ちょっとでも理想に反することをしてしまえば勝手に失望する。その中で、他人が決めた理想も全部包み込み、揺るぎない自分を持つことが大切なのだ。



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