そしてワタシたちは正義のミカタになった。-Prologue- 「来襲」
冷たい視線がキャンバスの奥から向かっていく。
「なに?」
『別に』
彼女はいじけて目を逸らす。
「しょうがねえじゃん、大学院生にもなると調べ物が必要になっていくの。そんくらい我慢してくれよな」
あと3分半…。
『そんなに彼女そっちのけにして研究したいなら、菜緒と別れたら?』
「なんでそんなことになんだよ…。なんだ、俺とセックスしたくなったのか?(笑)」
『アホじゃないの。焦ってすぐ下ネタに走って茶化すそのアンタの悪いところ、嫌い』
さらに氷化させた彼女の視線が俺を刺していく。
「止めてくれ菜緒。その視線は俺に効く」
『ずっとふざけてばっかじゃん(笑)よくこんなのが大学院生になれたね(笑)』
彼女は少し意地悪な顔をしてニヤつく。
「うるせぇ、院生になれたんだからこっちのモンだよ」
あと3分…。
『そもそも水産系の大学に受かったのも奇跡じゃない?』
「いや奇跡じゃなくて必然だから(笑)」
『ふーん、受験のときに散々菜緒に泣きついてきたくせに(笑)』
「そりゃ、受験期なら不安になるし、菜緒の方が頭いいから泣きつくだろ」
『あのときに的確な勉強法教えた私に感謝しないとね?(笑)』
「はいはい、あのときはありがとうございました」
『なんか心こもってなくない!?』
あと2分30秒…。
「あのさ、菜緒」
『ん?』
「よく聞いてくれ。菜緒だけでも助けたい」
『どういうこと?』
「いいか、菜緒は今から全速力で向こう側に走れ。D2出口から降りれば菜緒は助かる」
『翼は?』
「俺は大丈夫さ。もう時間がない。走ろう」
『う、うん…』
彼女は不安になりながら、身の回りのものをバッグに入れていく。
残り2分前…
「最後に一つ」
『なに?』
「菜緒、今までありがとう。愛してる」
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そのとき、私は妙な胸騒ぎがした。
『菜緒も翼のこと愛してる…。今も…これからもずっと…!』
「それだけ聞けただけでも俺は良かった。さあ走って!」
儚い笑顔を浮かべた翼を見た私は涙を払いながらD2出口へ駆けていった。
私が出た1分後…
大学図書館にヴィランが来襲して、その場にいた人々を惨殺した。
それを予知していた翼は…
私を守るために…。
To be continued...