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プーチン大統領の「新恋人」が司るロシア「情報戦略の実態」 取材・文◉浜田和幸(紙の爆弾2024年5月号掲載)

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#ロシア #プーチン #ウクライナ #カバエワ #イギリス育ちのバービー #ナワリヌイ


「終身皇帝」への道

 現在72歳のロシアのプーチン大統領は、この上なく元気で、国民向けの演説でも逞しいメッセージを発しています。3月17日の大統領選挙も危なげなく再選し、「終身皇帝」を目指しているに違いありません。そうした野心こそが、彼の若さの原動力なのでしょう。
 大統領選の表向きは、ウクライナ戦争を通じて大ロシア帝国を復活させるという「ロシアの夢」を掲げたものでした。多くの戦死者や負傷者が出ているものの、「彼らは祖国のために勇敢に戦う英雄だ」と持ち上げ、国民に寄り添う姿勢を見事に演出しています。
 3月1日には反政府運動の最前線で戦ってきたアレクセイ・ナワリヌイ氏の葬儀がモスクワで執り行なわれ、大勢の参列者が「プーチンは殺人者だ。プーチンのいないロシアを!」と怒りの声を上げました。とはいえ、間近に迫っていた大統領選においては、有力な対抗馬は事前に排除されていたため、プーチン大統領の勝利が既定路線であることに変わりはありませんでした。
「反プーチン」の動きもないわけではありません。しかし、ネット上を含めて情報管理を徹底させ、不穏な言動は極力排除するのがプーチン流と言っても過言ではありません。結果的に、プーチン政権に敵対するような政治活動は秘密警察によって鎮圧されてきました。プーチン大統領にとって「向かうところに敵なし」といった状況です。
 そんなプーチン大統領は選挙を念頭に、2月29日に議会と国民向けに大演説を行ないました。テレビ中継はもとより、ロシア各地の映画館や街頭スクリーンも総動員し、プーチン大統領の選挙公約を大々的にアピールしたわけです。まさに、選挙運動そのもの。
 とはいえ、演説の途中、身体の震えや目線がふらつくなど、体調不良を思わせる場面もありました。それでも巧みなカメラワークなど、健康不安を感じさせないような配慮もあって、ほとんど問題にはなりませんでした。それどころか、アメリカのメディアやコメンテーターの間ですら、バイデン大統領の一般教書演説と比較して、「プーチン大統領の演説の方がはるかに堂々としており、中身も濃いものであった」といった高い評価が下されたほどです。
 そのプーチン演説では、ウクライナ侵攻の正当化や、戦況がロシア優位に進んでいることを強調し、万が一、アメリカが参戦するような場合には、核兵器を使って反撃するとの強硬姿勢を明らかにしていました。と同時に、欧米による経済制裁にもかかわらず、「グローバル・サウス」諸国との経済関係を強化することで、ヨーロッパ最大の経済大国になったことを自画自賛したほどです。
 その上で、「数年以内に日本を抜き、世界第4位の経済大国に躍り出る」と、大胆な見通しまで打ち出しました。実際、ロシアは天然ガスや石油をインドや中国などに安価な値段で大量に輸出しており、貿易統計上はコロナ以前より黒字額を大幅に増やしています。
 ただし、GDPに占める軍事費は2021年の3.6%から、今や7.1%に急増中。国民生活の向上には必ずしも役立っているとは思えません。おそらく多くの国民の間では、表には出せないものの、「戦争継続に走る独裁体制への反発」や「より多くの自由を求める欲求」が溜まっているのではないでしょうか。
 そうした国民の間に鬱積した感情にはプーチン大統領も気がついているようです。そのため、これまでの演説ではなかったことですが、国民に向かって「お酒を飲むことは控えよう。家族を大切にしよう。子どもをたくさん産み、育てよう」と訴えました。
 その間、演説会場では参列者による80回ものスタンディング・オベーションが見られ、巧みな演出を通じてプーチン大統領は、国民から圧倒的な支持を得ていることを誇示しました。
 この時期にあえて「お酒や不謹慎な行動を自粛しよう」と訴えたのには理由があります。何かといえば、プーチン大統領との親しい関係をアピールしてきたテレビ司会者が、軍の施設内で仮面の乱交パーティーを開いていたことが暴露されたのです。それなりの地位にある有力者が300人も集まり、ウォッカを“がぶ飲み”しながら、踊り狂っての狂乱ぶり。
 その様子がネット上で拡散し、プーチン大統領へも飛び火しそうな雲行きになってきていました。そうした懸念材料を払しょくするためにも、「家族を大切にしよう」とのキャンペーンを打ち出さざるを得なかったのかもしれません。
 プーチン大統領自身は肉体派を誇示し、柔道やアイスホッケーの愛好家として時間を割き、精力絶倫ぶりを見せびらかすような姿勢ですが、そうしたスキャンダルには巻き込まれないように用心深く動いているようです。

大統領の「新たな恋人」

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