8時だヨ!積ん読日記

積ん読の山に眼を向ける。

そのなかに、ひときわボロい文庫本が5冊あり、ただならぬ雰囲気を醸し出している。 その5冊とは。

夏目漱石「道草」(カバーがない。汚い)
大江健三郎「燃えあがる緑の木」(全3冊。なんか、臭い)
寺山修司「家出のすすめ」(林静一のカバーのイラストが怖い。やはり、臭い)

これらの本をくれたのは、Aさんである。オレの友人だった。正確に言うと、オレが去年まで通っていた就労移行支援の職員さんである。

Aさんは、顔は西郷隆盛の錦絵にそっくりで、元・柔道部員である。柔道家らしく、耳が潰れた形をしている。で、モテないのだが、妙に明るい性格なので女性たちから余計キモいとか言われてしまう、なんだか憎めない人だった。オレとAさんは、お互い本好きだったので、意気投合し、職員と利用者の壁を乗り越え親しくなった。

就職が決まったお祝いにと、Aさんがくれたのが上記の5冊である。だが、あまりにも汚いので、あんまり触れていない。読んでない。でも、捨てることなんて出来ない。だって、親友がくれた本なんだもん!

あとで聞いた話だが、オレが就職してすぐにAさんは辞めてしまったらしい。理由は、わからない。

いまでもこの5冊は、よくわからないオーラを放ちながらオレの部屋にたたずんでいる。そして、この5冊を見るたび、オレの目の前には、西郷隆盛の錦絵がうっすらと浮かんでくる。おお!Aさんよ!

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