見出し画像

西洋医学と患者さん


私は病院で働いています。

調べてみると、
日本に西洋医学が伝わったのは
長崎が発祥だそうです。

西洋医学は投薬や手術といった方法で、
体の悪い部分に直接アプローチしていく治療です。

例えば、癌が見つかったら、
癌の大きさにもよりますが、
手術か、抗がん剤を使って治療する方法が説明されます。

私は病棟で働いているので
手術か、抗がん剤治療(その薬の初回)
をする患者さんと出逢います。

治療が上手くいくケースも
あると思いますが、

私は
入退院をする方と関わります。

その中で
〇〇さんの今を
残しておきたいと思います。

〇〇さんは
癌の終末期、自宅で療養していたけれど
食欲不振で入院。

これまで入院して
治療を受けておられたので
ナースたちは顔見知りでした。

点滴をして食欲が戻れば
自宅退院の予定でした。

でも、食欲は戻らなくて
点滴をせざるを得なく

痛みには麻薬の調布剤を使って、
頓服もレスキューが処方されてました。

日に日に
状態が進んでいき

先生から家族には病状説明が行われ
DNARも確認されていました。

家族の意向で
本人には余命未告知でした。

現在ベッド上全介助。
「自分で動きたいけど動けん。」
「今日も自分で起きれんかった」

と、どうにか自分で動こう
(家に帰りたい)という
〇〇さんの気持ちが
いつも伝わっていました。

でも、
昨夜の夜勤では

「薬も注射も気休め。飲みたくない。
それよりきつか。眠りたい。眠らせて!」

と、頻回にナースコールをして
訴えられるのでした。

目には涙が滲んでいて、
その言葉から、
魂の叫びというか、
〇〇さんの怒りや悲しさや苦しさが
ビシバシ伝わってきました。

〇〇さんは
自分はもう長くないと
分かったか、

これまで
溜め込んでいたものをやっと
吐き出せたのかと

思いました。

先生に連絡相談して、
呼吸が止まらない様に
注意して薬を使って、

その晩、静かに眠られました。

緩和治療の見直しが
必要なタイミングかも知れませんが、

患者さんには

①身体的苦痛
②精神的苦痛
③社会的苦痛
④スピリチュアルペイン

という全人的苦痛があると言われています。

それをを学んできてますが、

患者さんを目の前にして、
できる事って
限られているんです。

先生の指示を見て対処する

根本的な解決でなくても
頭を切り替えて
他の患者さんを見る

自分の心がついて行けない時もあります。

どこの現場も同じだと思いますが、

私たちは、
このような患者さんと
西洋医学の狭間で働いています。


夜勤が終わり帰るころ、

〇〇さんは目が覚めて
昨日と同じようにナースコールを押して
訴えられていました。

その
ナースコールの音に
後ろ髪引かれながら帰りました。




















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?