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生きてて忘れちゃう大切なこと

映画『窓ぎわのトットちゃん』を観て感じたことを書きます。


12月、この作品に出会ってから今日で3回ほど観た。上映が続く限りできる限り観に行きたいと思っている。


自分は作品を観ている時に、クリエイターが考えていることや細かいディテールに注目して、なんでそれを入れたのか、あの描写がなんだったのか等を考えることが好きだ。


けど、この作品にそれらはあまり重要ではないのではないか。真っ直ぐに素直に内容を受け止めることが大切なことを教えてくれた。


(映画のキービジュアル)


『窓ぎわのトットちゃん』は黒柳徹子さんの自伝的物語であり、同名タイトルでアニメ映画化したものである。そしてこの作品は主人公・トットちゃんが通う「トモエ学園」の小林校長先生のことを書き記した作品である。


この物語の中心人物はトットちゃん、小林校長先生。その2人を通してたくさんの感情が出てくる嬉しい、戸惑い、悲しみ、動揺など…。


しかし「怒り」は少ない。


小林校長先生の話をしよう。


(小林校長先生)

「トモエ学園」は今でいう「発達障害」や「身体障害」を持った児童も通う学校だ。彼はトットちゃんが主語のない話をずっとしたときも根気強く付き合ってくれたり、肥溜めを漁ってめちゃくちゃにしたときも怒らなかった。


けど2回怒る場面がある。


1回目はトットちゃんの担任・大石先生が授業で尾てい骨の説明をした際、発達障害を持った生徒に「しっぽが残っているんじゃないの?」と言ってしまったとき(これは劣っているというメッセージを発してしまうことになる)。


2回目は戦争によってトモエ学園の生徒たちに影響が出てしまったこと(食料を自分たちより兵隊を優先するように考えたり、大砲や兵隊の絵ばかりになる、疎開することになる等)。


彼は「みんないっしょだよ」ということをしきりに使う。それはファシズム的なものではない。隣人がどんな性質を持っていてもみんなで助け合う、気にかけること、一人一人変わっていてもみんな自由に過ごしていいことの現れだ。


上記の2つは「人が人を大切にすること」を教えたかった、伝えたかった気持ちが踏みにじられてしまったシーンだ。



トットちゃん(黒柳徹子さん)


トットちゃんが他者に「怒る」象徴的なシーンがある。トモエ学園をからかいにきた悪ガキたちが泰明ちゃんの小児麻痺に気がついたとき


「見ろ!トモエは変な学校だ!」

「そんな身体でどうやって戦う!」

「兵隊になれない穀潰し!」

と心無い言葉をかけるシーンがある。


(悪ガキたちに石を投げられるシーン)

彼女は「兵隊さんになれなくなって、泰明ちゃんは学校の先生になれるわ!」と反論し「トモエ学園!いい学校!」と大声で歌い撃退する。


シーンは前後するが小児麻痺を患っている友人の泰明ちゃんが体を思うように動かせないことを知った彼女は、木登りを通して思う存分体を使うことの楽しさや、一人じゃ見られない世界を見せるこの作品の名シーンも登場する。


どちらも常に人を大切にする2人。他者が他者を大切にしなくなったとき初めて声に出し「それはだめだ!」とメッセージを発する。そんな「怒る」必要がある時に「怒った」小林校長先生、トットちゃんを尊敬する。


今もトットちゃんもとい黒柳徹子さんはろう者の社会参加を支援、ユニセフ親善大使を務め、多く人たちの助けや力になっている。


https://www.unicef.or.jp/partner/kuroyanagitetsuko/

これはフィクションでも創作ではない、実際に生きた人が体験した自伝だ。映画で描かれていたトットちゃんの爛漫な性格は黒柳徹子さんの今を見ても繋がっていることがわかるだろう。


映画『窓ぎわのトットちゃん』を観た私は考えた。これを観て自分はどうしたらいいのかを。


トットちゃんを受け入れた優しさ。生徒に言ってはいけない言葉を言ってしまった大石先生に向けた厳しさ。「みんないっしょ」という他者が他者を気にかけ助け合うことを教えてくれた小林校長先生。


大人に「卑しい歌を歌ってはいけない」と理不尽に叱られ泣いていたトットちゃんを機転で笑顔にした泰明くん。


木に登ろうと力を貸して泰明くんを笑顔にしたこと。悪ガキが泰明くんの小児麻痺に差別的な目線や言葉を向けたとき怒ったトットちゃん。


そして今なお多くの人たちの力になる活動を続ける黒柳徹子さん。


トットちゃん達から私は、自分の周りに生きる隣人のことを思いやれるか、寛容さを持つことの大切さを学んだ。この物語の出来事や人々の振る舞いは今もテレビから流れ続ける世界中のニュースと繋がっているのだろう。隣の国や隣人、世界からはぐれてしまいそうになっている人や弱い人への冷たい目線や悪意がじわじわと暮らしのなかまで近づいてこようとしている時代だからこそ、今、自分は人に対して何ができるのか。この作品を観た人が感じた優しい気持ちを他者に向けてくれることを願わずにはいられない。


トットちゃん、小林校長先生、大切なことを気づかせてくれてありがとう。

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