プロレスとの出合い〜週刊プロレス1500号


中学時代、私は勉強ができず、定期テストの順位は下から数える方が早かった。

当時わたしは柔道部に所属しており、練習もなかなかハードで、身も心もいっぱいいっぱいになってた。

授業中も家でも、常にぼーっとしてた気がする。
嫌な言葉をかけてくるクラスメイトもおり、毎日嫌な気持ちになっていた。



中学3年生の夏ごろに、親の知人からプロレスのチケットを貰った。
ふーん、ドラゴンゲートって言うんだ、初めて聞いたな。

全日本プロレスは、見に行ったことがあるけどね。
ブードゥーマーダーズめちゃくちゃ怖かったなぁ。
暴れまくるため首輪をつけられたゾディアックが、TARUに引っ張られて入場してくるシーンは衝撃的すぎた。

場外乱闘のときにブラザーヤッシーに追っかけられたこともある。
当時小学生で特に何も修羅場を経験してこなかった私は、初めて死を覚悟した。

「この人はすごいんだよ」と母に教えられた、アブドーラザブッチャーと写真も撮った。
丸くて大きい黒人のおじいさんが椅子に座っており、近くのテーブルにはたくさんの千円札が山盛りに置いてあった。
2000円払えば、1枚写真を撮ってくれるらしい。
「有名」ってお金になるんだなぁと感動したのを覚えている。
座っているだけで、千円札が山のように集まっていた。



もともと両親はプロレスファンで、プロレスはわりと生活に身近なものではあったが、私はそんなにはまらなかった。
ちなみに、2人の初デートは、汐留でやった大仁田厚vsターザン後藤の電流爆破デスマッチらしい。


ドラゴンゲートの地方大会を見に行くため、近くの会場へ向かった。
いよいよ試合開始。

あれ?なんか私の知ってるプロレスとは少し違う、、、?
すごい跳躍力だなぁ。
選手みんな体がバキバキでハンサムすぎないか?
テレビで見る芸能人みたいにかっこいい。
衝撃だった。
夢中でリング上をみてた。

中でも1番きらきらしてた選手は、Gamma選手。
金髪坊主で腹筋はバキバキ。
竹刀を片手に暴れまくっていた。
対戦相手にダメージを与えて寝かせ、Gammaはコーナーポストの上にのぼる。
口に水をふくみ、対戦相手の顔をかけていた。
汚水攻撃である。


もう私はGammaに一目惚れをした。
一緒に観戦していた両親も初めてのドラゴンゲートだったらしく、「楽しかった!」と興奮している。
どさくさにまぎれて、試合終了後に売店で「蹴り殺すぞ!コラ!」と書かれたTシャツを買ってもらった。

そこから私の生活は、ドラゴンゲート、プロレス中心になった。

ショッピングモールへ行くにも、塾へ行くにも、「蹴り殺すぞ!コラ!」Tシャツを着て行った。


両親もプロレス熱が再燃したようで、週刊プロレス毎週購入&スカパー格闘技パック(サムライTV、GAORA、G+、テレ朝チャンネルが見れるため主要プロレス団体の試合が全て追える夢のようなプラン。唯一追えないのはwweくらい)は確約された。
ありがとう両親、マジ感謝だよ卍


週プロやサムライTVを見ているうちに、他団体も色々見るようになった。

中学3年の夏ということもあり、ストレスだった部活を引退したせいもあってか、毎日まあまあ楽しくなった。
今日水曜日だから早く家帰って週プロ読まないと!
録画しておいたドラゴンゲート無限大とインディーのお仕事を見ないと!
選手のブログは毎日チェックしていた。
友達に、プロレス布教活動もしなければ。
毎日やることが多すぎて忙しいから、嫌なことを言ってくる人も眼中に入らなくなった。


学校の三者面談では「今の成績で行けそうなところは、、、〇〇高校(地元のど底辺高校)かな?」と言われた。
そーなんだ、ふーん。
焦った親は「今度のテストで250点満点とったら、ドラゴンゲートの北海道ツアーに連れて行ってあげる」と提示してきた。

選手と直接お話しができるファンミーティングに参加できたり、憧れの札幌テイセンホールで試合が見れる。
冬に開催される北海道ツアーに私はどうしても行きたかった。
テスト満点とれば行けるんだね!
やるぞ!


即猛勉強開始。
成績はぐんぐんのびてきた。もともとが低いから伸び率が良い。のびしろしかないわ♪





そんなある日、いつものように週プロを読んでいると、ある記事を見つけた。

「週刊プロレスはもうすぐ1500号を迎えます!そこで読者の夢を叶えます!応募はこちらまで!」みたいなことが書いてあった気がする。

え〜
絶対汚水攻撃浴びたいんだけど!!
メール送ろうと♪







後日、ベースボールマガジン社から自宅に電話がきた。
私は興奮&テンパリすぎて何もできず、母とドラゴンゲート担当編集者の金子さんが、電話で色々やりとりをしてくれた。

なんか私、汚水攻撃浴びれることになったらしい、、、
プロレスファンになって数ヶ月だけど、もう夢叶っていいの?!
うちのお父さんなんてプロレスファン歴40年以上だけどまだ夢叶ってないよ?(夢の内容→KENTAとタッグを組む)



当日、岐阜県の会場にお母さんと向かう。

金子さんと待ち合わせをし、試合前の会場に入れてもらう。


しばらくすると、Gammaさんが来た!!!!!
え?!?!CIMAもススムもKAGETORAも来た!!!!!
死ぬほど大好きなWARRIORS-5全員集合?!?!?!

興奮しすぎてあまり記憶がないが、私は無事に汚水攻撃を浴びることができた。
サインも貰えたし、写真も一緒に撮ってもらえた。
夢のような時間だった。
こんな高揚感を感じたのは人生初だったと思う。

「テスト満点とったら札幌ツアー行けるんです!」と伝えたら、「WARRIORS-5全員でお待ちしてます」と言ってくれた。

(後日談→テストは240点くらいで250点満点に達しなかったため札幌には行けず。今まで普通に100点前後の成績だったため、自分の大きな自信にはなった)




いよいよ週刊プロレス1500号発売された。
棚橋、小島、潮崎のメジャー3団体のチャンピオンが表紙。


汚水攻撃を浴びてる私が、カラーで掲載されていた。


うれしすぎて、会う人会う人にこのことを報告した。
するとある日、他クラスの話したこともない男子が「まじのさんってプロレスラーと戦ったらしい」と噂しているという情報が耳に入った。
だいぶ歪曲して伝わっているようだが、おもしろいから放置しておいた。


他にも色々な人の夢が叶っていた。
プロレスファンって、おじさんおばさんばかりのイメージだったけど、同世代の子たちもいるんだなぁ!!
学校には全然プロレスファンいないから、なんか嬉しかった。
きっとこの子たちも、学校でプロレスの話したいけどできないウズウズを抱えてるのかな。
勝手に仲間意識がでてきた。


日向あずみにインタビューしていた同い年の女の子は、数年後JWPで女子プロレスラーとしてデビューしている。

真壁刀義と対談してた男の子は、有名プヲタとして、おしゃれなプロレスTシャツを作っていたり、海外に観戦に行ったりしてる。


Gammaの汚水攻撃を浴びていた女の子は、男に金を抜き取られ、相席ラウンジでタダ飯タダ酒をくらっている。


Gamma選手は今年の夏に引退した。
まだ動けるのに、かっこいいのに。
かっこいいまま引退するプロレスラーが1番かっこいい。

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