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日本全国ローカル梅の魅惑

今年私が入手し漬けた(梅干しまたは梅漬け)梅の品種と産地を、入手順に書き出してみる。

①豊橋の梅(品種不明、豊橋の道の駅にて購入)
②信州産小梅(品種不明、横浜市内のスーパーAで購入)
③フルーツ梅(正式名称不明、横浜市内のスーパーBで購入)
④十郎梅(神奈川県小田原市産)
⑤高田梅(福島県産)
⑥おばこ梅(山形県産)
⑦竜峡小梅(長野県産)
⑧群馬の梅(品種不明、横浜市内のスーパーCで購入)
⑨橙高梅(和歌山県田辺市産)
⑩越の梅(新潟県産)
⑪城州白(京都府産)
⑫谷沢梅(山形県産)
⑬なにわ梅(別名八助梅、秋田県産)
⑭おうみ梅(秋田県産)
⑮南高梅(岩手県一関市産)
⑯与太郎梅(岩手県奥州市産)
⑰節田梅(山形県酒田市産)
⑱豊後梅(山形県酒田市産)

ざっと数えて全18品種。これだけでも私がはまるとどうなるか、なんとなくご想像頂けたかと…。自分でもちょっと呆れる。
とは言え、最初の数種類は単純に様々な漬け方(塩分や紫蘇の有無等)を試したり、ジャムや梅味噌を作ってみたくて入手したが、橙高梅あたりからは名前や産地に興味を惹かれ、容量・容積オーバーと自覚しつつも好奇心が勝り購入に至った。

梅の収穫はごく短期間に限られる。特に今年は暑さのためか例年より早く、私が梅を求め始めた6月初旬には関東では既に収穫・販売を終えた梅林も多かった。このため以後は他地方の梅を主にメルカリ経由で入手したのだが、そうしてみてかなり驚いた。次から次へと初めて目にする名前の梅が売り出されるのだ。当然ながら販売期間は短く、数量も多くはない。今このタイミングを逃せば次は来年になってしまうし、来年同じように手に入るとも限らない。ならば今!買うしかない!!と、6月から7月上旬にかけては毎日のようにメルカリで新たな品種を目にしては、躊躇しつつも(欲しいが見送った品種もそこそこある)購入ボタンを押下する毎日だった。
一方で手元の梅たちも欠かさず様子を見、皮が破れたりカビたりしていないか、順調に漬かっているかを朝夕必ず確認した。塩漬けして一ヶ月近く経つ分は天気予報とにらめっこして天日干しに進み、早朝外に出して昼と夕方に必ず様子を見た。何度か上下を返したり位置を変えたりし、干し終えた分は重量を量って記録した。よもやそんな生活になるとは思っておらず、大分前から決めていた旅行もあり(結果旅先でも生梅を買った。笑)、6月から7月にかけては本当に忙しかった。

だが、ものすごく面白かったのだ。梅は品種や産地により特性が異なる。そのことが、梅に触れるうちに実感としてわかって来た。大きさや色、香りや皮の厚さも違えば、同じ塩分で同じように漬けても決して同じに仕上がらない。同品種の同ロットでも、塩分を変えたり副材料(はちみつやりんご酢等)を試すとかなりの違いが出る。そうした違いが私には新鮮だった。もっと試したい、もっと知りたい欲求がどんどん高まって行った。

そうして怒涛のような梅入手&仕込みにひと段落ついた辺りでふと思った。全国の梅の産地や品種の特徴が一覧できる、マップのような資料はないか?来年梅を入手するにあたり、そうしたものを参考にして好みの品種を検討できないか(でないとまた買い過ぎて今年みたいになりかねない)。
探してみるとこれが案外ないのだ。観梅用の花梅に関する資料は広く存在しているが(花梅の品種は国内だけでも数百種類あるらしい)、食用の実梅に関する資料は、各産地での調査資料は存在しても、他との比較や一覧という観点でまとめられた資料は、私がネットで探した限り十分な内容・ボリュームのものは見つけられなかった(存在してもネット上にない可能性も)。その種のニーズはこれまであまりなかったのかも知れない。私には大いにあるんだけどな。あったら嬉しい人も案外いるんじゃないかと思うんだけどな…。

そんな訳で、梅仕事を終えた私の次なる目標は「日本全国ローカル梅探し」「ローカル梅の(食べる側としての)特徴」をまとめる、になったが、なかなかうまくは行かなかった。
梅を語る語彙がいたく貧困であることに、今更ながら気付いてしまった。
子供の頃から慣れ親しんだ梅の味を説明するのがこれほど迄に難しいとは。酸味にもいろいろあるし、香りもいろいろだ。香り自体の特徴(桃みたいだとか柑橘寄りとか)に加え、梅の場合は香り方の特徴が大きい。口に入れた時点で感じる香り、噛んだ時に漂う香味が相当異なる。それに皮の固さや実自体の味だけでなく、最後に種をしゃぶった時の風味というのも大きい。予め種を除いて食べる方も多いかも知れないが、梅干しの種はしゃぶると美味しく、口の中がさっぱりとする。その風味が良い梅に出会うと嬉しいものだ。
斯様に梅に関する言説は難しく、一年や二年では進められそうにない。

さらに、上記リストには実は「梅」ではないものも含まれている。当たり前に梅と呼ばれ、長く親しまているが実質杏、若しくは梅と杏の掛け合わせの品種も日本には結構あるのだ。
そんな梅の沼。果たしてどこまで踏み込み、進めて行けるだろうか。

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