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改めて八助梅の特徴を確かめる(おうみ梅との相違、おうみ梅の由来と謎)〜初めての紫蘇巻きあんずに挑戦(八助梅・おうみ梅その4・2024八助梅その1)

晴れた朝、八助梅を外に干している。
先週届いて一部を塩漬けしていたものだ。

干す前はこんな感じ。
1kg購入したうち、600g強に相当する11粒を10%の塩で5日間塩漬けした。

やはり通常の梅と比べて梅酢の出が今ひとつだったので、念のため途中から冷蔵庫に移していた。

まる1日干して表面は概ね乾いた。もう1日干そうか迷ったが、気温の高さを考えて次の工程に移る。塩漬けで出た梅酢(あんず酢)と砂糖150gで半月程度漬け込む。

塩漬けしていた袋に戻し入れ、砂糖(粗糖)を加えた。やはり念のため冷蔵庫に入れておく。発酵がちょっと怖い。

なお、漬け汁の一部はあく抜きした赤紫蘇を漬け込んでいる。

半月後にこの紫蘇で八助を巻いて天日干しを行い、さらに砂糖を加えて熟成させるとしそ巻き杏ができあがる。八助は杏だから、美味しくできると思うのだが、どうだろう。

という訳で、昨年からの疑念を晴らすべく今年も買った二度目の八助梅。その経緯については過去記事(主に「その3」)をご覧ください。

まずは色と形から確認。
表面がつるっとして、先端に向かってやや尖っていくこの形状は昨年と同じ。薄いあんず色、みかん色も昨年とほぼ同じだ。
どうやら認識は間違っていなかったらしい。

続いて計量。
直径5〜6cm×53〜58g程度のものが多く、中には60g超のものも。香りはあまりしない。その点はやはり先ごろ買ったばかりの杏、幸福丸と共通している。

それでは、最大の懸案だった「種」について確認。
今回の「おうみ・八助取り違えていたんじゃないか疑惑」は、直近で幸福丸を買ったことでより強まった。幸福丸の種を見た時に、「杏の種ってこうだよね…」と思ったのだ。

杏の種は、まるでそのために作られた部屋のような空間にやや余裕をもって収まっている。種周りの壁は果肉質が異なり、種は何本かの繊維質で守られ、果肉と密着していないため取り出しやすい。種は濃い茶色で、丸くて平たい円盤型。これらの特徴は多くのウメとは異なる。

図鑑「アンズ」みたいな幸福丸の断面

多くの場合、梅の種はラグビーボール様の細長い形で、なり口と逆側が尖っている。色もそれほど濃くなく、厚みをもって膨らんだ形をしている。

例えば上から節田梅、十郎梅、杉田梅の種。大きさこそ異なるが、形は似ている。

昨年漬けた節田梅
今年漬けた十郎梅の梅漬け(カリカリにはならず)
美味しかった杉田梅ゼリー

だが過去記事掲載のため改めておうみと八助を食べ比べた際、そう言えば種の色や形が違っていたと思い出した。
一方は梅っぽい形、もう一方はあんずに多いと思われる円盤型。
私はこれまで前者が八助、後者がおうみと認識して来たが、八助があんずならば種は後者なのではないか。――だとすれば、私はこれまで両者を取り違えていたのか??

というのが今回の疑念の経緯。その確認のために今回八助を購入した。この種を見れば、一年越しの疑念ははっきりするはずである。

それでは。
いざ、確認!

…おお…。
やはり梅的ラグビーボール先とんがり型。一般的な梅より種ははるかに取り出しやすいが、幸福丸のような濃色円盤型ではない。
ここで昨年の取り違え疑惑は「やっぱり間違ってなかった」で終結(お騒がせしました)。とは言え気になる点が残る。ならば「おうみ梅」とは何者か?という疑問。
確かに八助には杏らしい特徴が様々見られ、生食もできた(試しに食べてみた。幸福丸ほど甘くないが、あくがなく生食は可能)。だが梅漬け・梅干しにして食べ比べた際、より酸味がなく杏っぽい特徴を示したのはおうみ梅の方だったのだ。おうみ梅とはいったい何か。どこから来たのか。

「おうみ梅」の名はおそらく近江商人に由来すると思われる。彼らが運んできた品種故にそう名付けられたのだろう。だが近江商人は道中各所で商品を仕入れては売るスタイルなので、「おうみ梅」が近江地方から持ち込まれたとは限らない。むしろ近江から北へ至る道中で仕入れた可能性の方が高いと思われる。さらに、最近読んだ関連書籍の「江戸時代の近江商人の出店分布図」を見ると、私がおうみ梅を買った秋田県能代市~山本町付近に近江商人は出店していない。梅の栽培が盛んな酒田、或いは南部あたりに伝わったものが持ち込まれたのだろうか。山形には「おみ漬け」というやはり近江商人由来の漬物があるくらいで、他にもその名を取った可能性は大いにある。或いはまったく別のどこかから持ち込まれた可能性も勿論ある。

おうみ梅の特徴(おそらく杏だろう)からすると、杏の産地である長野あたりから持ち込まれた種が在来種と掛け合わされたか、南部地方の杏(もしかしたら八助かも)がベースとなっているのか、それ以外か。果物寄りの特徴が強いので、掛け合わされた相手も杏、若しくは桃かも知れない。
いずれにせよ、現状ネット上におうみ梅に関する情報はほぼない。「おうみ梅」で検索すると当サイトが上位に来てしまうほどで、現在どの県で栽培されているかも不明だが、おそらく今回購入した秋田県北部あたりにわずかに残るだけなのだろう。
おうみ梅については、またいつか新たなヒントに出会うまで謎として保留しておく。
もしおうみ梅をご存知の方がおられましたら、些細なことでも結構ですので、是非コメント欄に情報を頂けますようお願いいたします。

さて、1kg買った八助のうち600gは「しそ巻き杏」、残り400gは炊飯器で甘露煮(下記「梅ゼリー」レシピの前段階)にしてみた。杏として考えた場合、加熱するとどうなるか興味があった。

やはり梅より肉質が固いのか、6時間保温機能で加熱してもあまり柔らかくなった感じはしないが、甘酸っぱくて美味しい。近々焼菓子等に展開しようと思っている。

おうみとの違いがわかってすっきりし、今回味や果肉の特徴についてもより認識を深めたので、八助への愛着も昨年より強くなった。形がかわいいですよね、ハート形っぽくて。

しそ巻き杏の完成は約2ヶ月先なので(砂糖漬け半月後に紫蘇で巻き、漬け汁に数日漬け込み天日干し⇒さらに砂糖を加えて1ヶ月熟成)またその頃に続報を書こうと思う。


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