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滋養としての「トップスのチーズケーキ」

先週ウイルス性胃腸炎に罹患し、数日間まともな食事ができなかった。当然ながら体重は減り、服は目に見えて緩く、体力も落ちたため、回復食は自然と「栄養補給」が最優先に。

絶食から素うどん、雑炊、果物にヨーグルト、少しずつ食べられるものが増えて行き、ようやくたんぱく性の食品や乳製品が食べられるようになった頃、唐突かつ燦然と脳裏に浮かんだのが「トップスのチーズケーキ」。
あの濃厚で甘くない、潔く白いチーズケーキ。あれでなくては駄目だった。他店のチーズケーキやレアチーズでは駄目で、あくまでトップスのあのチーズケーキ限定。

とは言え思い浮かんだ当日は買いに行く体力がなく、一日様子を見ても食べたい気持ちに変わりはなかったので久々に身支度をし、二駅先の最寄りの店舗まで朝一番で買いに行った。

折しも時期はバレンタイン。ガラスケースに並ぶケーキの殆どがチョコレートで、そちらは各種揃うのにチーズケーキは一台しか見当たらない。それもサイズが大きい。
お店のお姉さんに「チーズケーキの一番小さいのはどれですか?」と尋ねると、「Sサイズなんですが今は品切れ中でして、Mサイズのみなんです」とのこと。ならばMを買いましょう。迷わず購入、チーズケーキのM。Mを買ったのは初めてかも知れない。Sなら夫と二人で一度で食べ切るが、Mはそれ以上かかる。それでも食べたかった、どうしても。

久しぶりに見る真っ白な直方体。表面の生クリームのデコレーションも昔と変わりない。そう、これです。トップスと言えばこれ。真っ白な、酸味のきいた爽やかなチーズケーキ。
すると夫が「トップスの白のケーキって久々に見る気がする。茶色いケーキのほうがよく見るよね」。世の中的にはそうかも知れない。でも私にとってはトップスと言えばチーズケーキ。くるみがたくさん入った甘いチョコレートケーキの方は少々苦手だった。

それにしても、何故こんなにこのケーキを思い詰めたのか改めて考えてみると、「良性のたんぱく質が採りたかったから」
おそらく今身体に足りないのはそれ(乳たんぱく質や乳脂肪分)なのだろう。数日前から生クリームを使ったケーキや牛乳たっぷりのシチューやグラタンが食べたかった。私にはやや珍しいことだ。普段なら高カロリー&高脂肪の生クリームはどちらかと言うと避けて通るか、食べても少量に留める。従ってトップスのチーズケーキも何年ぶりか、すぐには思い出せないくらいだ。でも今回すっと思いついたのは、おそらく昔から食べていたからだと思う。

トップスの創業は1964年だそうだ。旧TBS会館の店舗へは行ったことはない。トップスがレストランだということも進学で上京するまで知らず、てっきりケーキ店だと思っていた。
トップスは1980年代後半の秋田駅構内に店舗を構える数少ないケーキ店のひとつだった。秋田市内に電車通勤(当時はまだ電化していなかったが)していた父が時折、この白いチーズケーキを買って来てくれた。
家族の誕生日やクリスマスにもケーキはあったが、このケーキは父が好きで、なんでもない日にふと買ってくれていた気がする。
どこで知ったのか、最初の時に「これ美味しいんだよ」と自慢気に言っていたのを朧気に覚えている。職場や取引先等で口にする機会があったのか、評判をどこかで聞いたのか。
その濃厚で酸っぱいチーズケーキは兄には「甘くない」と評価が思わしくなかったが、母と私は気に入った。濃厚なので一度にたくさんは食べられず、数センチずつ何度かに分けて食べるのが楽しみだった。

父は何かとこだわりの強い人で、食へのこだわりも強く、気に入らないものや身体に良くないもの、納得できないものはまず買わない。だからトップスのチーズケーキにも「上質の材料」のイメージがあったのだろうし、大人になり自分の舌で確かめてもそう思う。

元気な時はカロリーが気になってできない「大人食い」を、体調を崩したが故にしようとは・・・。罰当たりな気がしなくもないが、嬉しい。贅沢。
Mサイズ(公式サイトでは4~6名様分)の約1/4を切り分け、重量を計ってみると84g。100gあたり388kcalなので、約326kcalだ。今は元気とカロリーが欲しいので、迷わずいただきます!

いやー美味しい~。これですよこれ。
このねっとりとしつつも嫌味のない、ほどけるような口溶けの上質なクリームチーズ。控えめなクッキー台に、レモンの爽やかさがほのかに香るなめらかなクリーム。美味しいです。求めていたのはやはりこれ。

まだコーヒーは飲めないのでオレンジの香りの紅茶をティーポットでたっぷり淹れ、ゆっくりといただく。身体に良いものを食べている感じがとてもする。内側から力がつく感じも。
当たり前のことだけれど、身体は食べたものからしか作られない。良いものを摂れば身体にしみ入るのは当然で、病後の私は所謂「身体によくないもの」を受け付けなくなっていたから、その意味でも間違いはなかった。ああ美味しかった。満足。

結論。
トップスのチーズケーキは、滋養になる。
また元気が足りなくなったら、躊躇せず頼ろう。

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