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パイロット

幼い頃から私は、父に連れられて飛行場によく行きました。ターミナルには遊具もあって、少しは楽しめましたが、私たちは飛行場のターミナルではなく、真逆の滑走路の側で飛行機を眺めることが多かったのです。



飛行機の離着陸を眺めることは嫌いではありませんが、一日中そこにいると流石に飽きてしまうものです。そんな私に父は「お前のために飛行場に連れて来ている」と言います。

父は私に将来パイロットを目指すよう勧めていますが、飛行機を眺めていてもただの観察者でしかありません。飛行機を眺めていればパイロットになれるなら、飛行場の近くに住んでいる子供たちはみんなパイロットになれるはずです。 



また父は「パイロットはええぞぉ、月給100万円やぞ」と私に言うのですが、それだけでは現実的な未来を描くことはできません。しかも、父が私に勧める職業は日によって変わります。時には「プロ野球選手になれ、契約金はわしが管理したる」と言い、また別の日には「庭師になれ、庭師はええぞぉ」と言い、さらには考古学者になれと言います。まるで日替わり定食のように、私の将来に期待するのです。

私は父に対して「ちゃんと働いてくれ」と思っていました。このような父では、ちゃんとした収入もなく、母も家で内職をし、外に出てはパートを掛け持ちしています。家の経済状況は言うまでもありません・・・・。

もはや、父は奇天烈な人物です。彼との関わりは毎日が不安です。

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