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紙に書くことで事業は動き出す-補助金活用で加速する中小企業の成長戦略

補助金活用の現状と課題

「事業を成長させて、キャッシュが余る状態にしたい」

そう願わない経営者はいません。
そう思っているとしたら、補助金を活用しない手はありません。

もうずいぶん前から、中小企業や小規模事業者向けの補助金制度は、政府の経済対策の重要な柱として拡充されてきました。

しかし、その活用状況は必ずしも理想的とは言えません。

多くの企業が補助金の存在を知りながらも、効果的に活用できていないのが現状です。

補助金は便利になってきている

補助金の手続きは面倒になっている面もありますが、相対的にみて使いやすく便利になってきています。

1.補助金の多様化:
政府や地方自治体は、デジタル化支援、事業再構築、省エネ推進、海外展開など、様々な目的の補助金を用意しています。これにより、企業は自社のニーズに合った支援を受けやすくなりました。
2.申請のオンライン化:
多くの補助金で電子申請が導入され、手続きの簡素化が進んでいます。これにより、地理的な制約が減少し、より多くの企業が申請しやすくなりました。
3.中小企業支援機関の充実:
商工会議所や中小企業団体中央会などの支援機関が、補助金に関する情報提供や申請支援を強化しています。

しかし、このような充実した環境にもかかわらず、多くの企業が補助金活用に苦戦しています。

主な課題は以下の通りです:

補助金制度が抱える課題

1.情報過多と選択の困難さ:
補助金の種類が多様化したことで、逆に自社に最適な補助金を見つけ出すのが難しくなっています。情報が錯綜し、経営者が適切な判断を下せないケースが増えています。
2.申請書作成のハードル:
オンライン化が進んだものの、依然として申請書の作成には専門知識や詳細な事業計画が必要です。多くの中小企業では、この部分でつまずいてしまいます。
3.事業計画との不整合:
補助金申請のために急遽事業計画を作成するケースが多く、本来の経営戦略に補助金活用計画がそぐわなくなることがあります。これは補助金の効果的な活用を妨げる要因となっています。
4.資金繰りの問題:
多くの補助金は後払い方式のため、事業実施時の資金繰りが課題となります。つなぎ融資などの対応が必要ですが、この点の準備が不十分な企業も少なくありません。
5.実績報告や成果報告の負担:
実績報告や、補助金獲得後の成果報告に大きな労力がかかることを懸念し、申請自体を躊躇する企業もあります。
6.継続的な活用の難しさ:
一度補助金を獲得しても、それを継続的な成長につなげられない企業が多いのが現状です。補助金に依存しすぎず、自立的な成長を実現することが課題となっています。
7.デジタルリテラシーの格差:
オンライン申請の導入により、デジタルスキルの差が補助金獲得の可否に影響を与えるようになっています。特に小規模事業者や地方の企業で、この点が課題となっています。

5番も近年かなり負担となっています。

最も損をするパターンは、わたしが見てきた中では、3「事業計画との不整合」が多いです。
つまり、補助金で買ったけど使わなかったものが多い。

安物買いのゼニ失いになってしまっているのです。

これらの課題を克服し、補助金を効果的に活用するためには、経営戦略の明確化、計画的な申請準備、そして補助金を単なる資金調達手段ではなく成長の触媒として位置づける視点が重要です。

補助金活用を通じて真の競争力強化を実現する企業と、そうでない企業の差は今後さらに広がっていく可能性があります。

戦略の明文化がもたらす効果

多くの中小企業経営者は、経営戦略を頭の中に描いているものの、それを文書化することの重要性を見過ごしがちです。
しかし、戦略を明文化することは、単なる形式的な作業ではなく、企業の成長と補助金活用に多大な効果をもたらします。

事業計画を紙に書き出すこと。それはとても多くのメリットがあります。

事業計画を書き出すメリット

1.思考の整理と深化:
戦略を文字に起こす過程で、漠然としていたアイデアが整理され、より具体的で実行可能な計画へと発展します。この過程で、自社の強みや弱み、市場機会、脅威などが明確になり、より深い戦略的思考が促されます。
2.組織内のコミュニケーション向上:
明文化された戦略は、経営者の vision を全従業員と共有するための強力なツールとなります。これにより、組織全体の方向性が一致し、各部門や個人の行動が戦略に沿ったものになります。結果として、組織の一体感が醸成され、効率的な経営が可能となります。
3.意思決定の指針:
日々の経営判断において、明文化された戦略は重要な指針となります。投資判断や人材採用、新規事業の検討など、あらゆる場面で戦略との整合性を確認することで、一貫性のある意思決定が可能になります。
4.PDCAサイクルの実現:
戦略の明文化により、具体的な目標設定と進捗管理が容易になります。定期的に戦略の見直しと修正を行うことで、環境変化に柔軟に対応しながら、継続的な改善が可能となります。
5.外部利害関係者との関係強化:
取引先、金融機関、投資家などの外部利害関係者に対して、自社の方向性を明確に示すことができます。これにより、信頼関係の構築や資金調達の円滑化につながります。
6.補助金申請の効率化と成功率向上:
明文化された戦略は、補助金申請書作成の基礎となります。自社の現状分析、目標設定、実行計画などが既に整理されているため、申請書の作成が格段に容易になります。また、戦略に基づいた説得力のある申請内容により、採択率の向上が期待できます。
7.補助金の戦略的活用:
明確な戦略があることで、単に資金が得られるからという理由ではなく、自社の成長戦略に真に必要な補助金を選択し、活用することが可能になります。これにより、補助金が一時的な資金調達手段ではなく、長期的な成長の原動力となります。
8.人材育成と組織力強化:
明文化された戦略は、従業員の教育・育成にも活用できます。各自の役割と全体の方向性の関連を理解することで、主体的な行動が促進され、組織全体の力が向上します。
9.イノベーションの促進:
戦略の明文化によって現状と目標のギャップが明確になることで、そのギャップを埋めるためのイノベーションが促進されます。新たな事業アイデアや業務改善の機会が見出されやすくなります。
10.レジリエンスの向上:
明確な戦略を持つことで、予期せぬ事態や危機に直面した際も、迅速かつ的確な対応が可能になります。戦略を指針として、状況に応じた柔軟な判断ができるようになります。

戦略の明文化は、一見煩わしい作業に思えるかもしれませんが、経営者だけができる重要な経営行動です。

経営者の特権でもあります。

ぜひ、普段の仕事から離れて、高い目線で仕事について考えてみてください。

自宅が落ち着かないなら、ホテルや旅館に泊まって書き出してみるのもいいですし、コンサルタントと対話して、考えをまとめていく方法もあります。
今なら、ChatGPTと対話しながらアイデアを引き出す方法なんというものもあります。

特に補助金活用を通じた成長を目指す中小企業にとって、戦略の明文化は避けては通れない重要なステップと言えます。

事業計画と補助金の連携方法

効果的な補助金活用には、事業計画に沿って補助金を活用していくのが不可欠です。

補助金に合わせて事業計画をこねくり回すのは、私は否定的です。
それでも専門家が支援するとと補助金は貰えるかもしれませんが、無駄金になることが多いのです。

何度も書いていますが、単に資金を得るためだけの補助金申請ではなく、長期的な成長戦略の一環として補助金を位置づけることが重要です。

以下に、事業計画と補助金を効果的に連携させる方法を説明します。

事業計画と補助金を連携させる方法

1.事業計画の基本構造の確立:
まず、自社の中長期的なビジョン、ミッション、戦略目標を明確にした事業計画を策定します。この計画には、市場分析、SWOT分析、財務計画などの要素を含めます。これが補助金活用の基盤となります。
2.補助金ニーズの特定:
事業計画の中で、特に資金が必要な部分や、外部支援があれば飛躍的に成長が見込める領域を特定します。これらが潜在的な補助金活用ポイントとなります。
3.補助金情報との突合せ:
特定したニーズに合致する補助金制度を調査します。この際、単年度の補助金だけでなく、複数年度にわたる支援プログラムも視野に入れます。
4.事業計画の調整:
選定した補助金制度の要件に合わせて、必要に応じて事業計画を微調整します。ただし、本来の戦略目標を損なわないよう注意が必要です。
5.補助金活用計画の策定:
事業計画の中に、補助金活用の具体的なスケジュールと期待効果を組み込みます。これには、申請準備、事業実施、成果報告などの工程を含めます。
6.KPIの設定:
補助金活用による成果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。これにより、補助金の効果を客観的に評価し、次の戦略立案に活かすことができます。
7.リスク管理計画の統合:
補助金が獲得できなかった場合や、予定通りに交付されない場合のリスク対策を事業計画に組み込みます。これにより、補助金に過度に依存しない健全な計画となります。
8.社内体制の整備:
補助金申請と活用を円滑に進めるための社内体制を事業計画に盛り込みます。責任者の指名、専門家との連携、社内教育などが含まれます。
9.相乗効果の追求:
補助金活用を通じて得られる知見や人脈を、他の事業領域にも波及させる計画を立てます。例えば、ある事業での補助金活用経験を、別の新規事業立ち上げに活かすといった具合です。
10.段階的な成長計画:
初期の小規模な補助金活用から始め、徐々に大型の補助金や複合的な活用へと発展させていく段階的な計画を策定します。これにより、補助金活用のノウハウを蓄積しながら、着実に事業を成長させることができます。
11.柔軟性の確保:
事業環境の変化や新たな補助金制度の登場に対応できるよう、事業計画に柔軟性を持たせます。定期的な見直しと修正の機会を計画に組み込むことが重要です。
12.長期的視点の維持:
補助金終了後の自立的な成長シナリオを事業計画に明確に位置づけます。補助金を「飛躍のための一時的な支援」と捉え、その後の持続的な成長につなげる道筋を示します。

事業計画ができることで、補助金活用の準備が整います。

中長期的な目で見ると、事業計画にあわせて補助金を活用することは難しくありません。

これによって、単なる資金調達以上の価値を補助金から引き出すことができます。

補助金を戦略的に活用し、中長期的な企業価値の向上につなげることで、設定した事業の目標に早く近づけるようになります。

事業計画って書いても無駄?

子供のころ、夏休みの計画を立てて上手くいかなかった人は多いだろう。

計画は立てても上手くいくことは、ないと言い切ってもいい。

それでも書くのにはメリットがある。

どこに商機(勝機)を見出して、どこにリソースを集中させるかは、計画を立てないとはじまらない。
計画を立てないと、現状を数字で分析する機会もない。

計画があって、数字が生まれ、数字を調整しようとするから、アイデアが生まれていくのだ。

この工程を飛ばしてしまうと、事業は緩やかに失速することになる。

事業計画ってどうやって作る?

では事業計画ってどうやって作るか。

一番いいのは、人の力を借りることだ。

例えば東京。
TOKYO創業ステーションのサービスでは創業助成事業として「事業計画書策定支援」を行っている。

これも東京都の例だが、東京商工会議所でも事業計画作成の支援を行っている。

有償になってしまうが、補助金を使って割安で「早期経営改善計画策定支援」を受けることもできる。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html

誰かと並走すると、事業計画はできやすい。

並走が嫌なら、書籍を使って一人で取り組んでみてもいい。

どんな本でもいいけれど、しばらく事業から離れて、楽しく取り組めるものがいいと私は思う。

お勧めはこちらの本です。


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