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来年の日銀総裁退任を待たずに金融緩和策の修正へ

日本銀行は、19~20日に開催された金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持すると全会一致で決めた。一方で、金融緩和策の一部が修正されるため、市場では事実上の「利上げ」と受け止められ日米の金利差縮小が意識され、ドル円は137.30~40円から円買いドル安へ急速に進行。一時は131円を割り込む場面もあった。
ドル円チャート  資料: Trading View

日銀のYCC運用の見直し


今回の会合では、金融緩和策の一部であるイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用見直しが決まった。国債買入れ額を月間7.3兆円から9兆円程度大幅に増額すると共に、長期金利の変動幅を0.25%から0.5%へ引き上げ、イールドカーブ全体の形成を促していくという。一方で政策金利は据え置きとなった。

イールドカーブ・コントロール(YCC)
2016年9月に導入された金融緩和政策枠組みの一つ。金融市場の調節によって短期金利、長期金利の誘導目標金利を操作を行う。国債買い入れやマイナス金利政策を行い、利回り曲線とも言われるイールドカーブを適切な水準に維持する。

金融緩和策の修正は出口戦略ではない?

日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は、20日金融政策発表後に記者会見を開き、今回の金融政策の修正は、「利上げ」や「出口政策や出口戦略の一歩ではない」と大規模な金融緩和策の継続を強調し、また、YCC運用の見直しにより金融緩和の持続性を高めるのが目的だと発言した。

世界は、新型コロナウイルス流行を背景に経済活動が低迷したため、各国政府が金融緩和や財政出動を行ったことで物価が上昇。政策金利を引き上げるなどの金融の引き締めを行っている。米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を4.25~4.5%にすることを決めたほか、アジア近隣諸国も一斉に利上げを行っている。
日銀によるとエネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により昨年に比べ今年の消費者物価の上昇が見られ、物価見通しについても上昇傾向にあるという。インフレ高を抑制するには、近い将来利上げや大規模な金融緩和の出口戦略を行わなければならない
また、日銀の黒田総裁は23年4月に任期終了となることから、市場では任期中の金融引き締めはないと見られていた。そのため今回の発表を受けて市場は金融緩和策の修正という日銀の決定で円高に大きく振れたほか、10年の国債利回りが上昇したため、債券市場は大幅続落で引けた。(利回りが上昇すると債券価格が下落) その動きを受け株式市場は不動産株などを中心に売りが先行し、市場全体が年末の日銀サプライズ相場となった。
10年国債利回り  資料: Trading View







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