フランス政治の今~理想は挫折するのか~
「人間は自由で権利において平等なものとして生まれ、かつ生きつづける。社会的区別は共同の利益にもとづいてのみ設けることができる。」
1789年のフランス人権宣言は上記の第一条の条文から始まる。
これ以降、フランスは人権理念の母国として、世界の自由主義化を牽引してきた。
しかし、その理想が今挫折の危機に瀕している。
ポピュリズムの台頭と民主主義政治の機能不全
2024年7月の議会選挙で、与党・中道連合は大きく議席数を落とし第二党となり、左派連合が第一党となった。また第三党の右派連合も僅差の議席数となっており、世論が分裂した状態となっている。
今回の選挙では、右派連合のポピュリズム的な選挙活動が注目を集めた。若くハンサムな党首を据え、SNSを活用して若者からの支持を拡大した。
ポピュリズムは、「権力を批判し民衆に訴え支持を拡張する運動」を指すが、民衆の理性ではなく感情を扇動するような形を取ると、将来世代を無視した短期的な利益や感情論に寄った主張に陥るリスクがある。
今回の選挙選挙は、そういったポピュリズムの負の側面が出ているように見えてならない。右派連合・左派連合ともに生活苦にあえぐ国民に対して、移民や権力者と言った分かりやすい「敵」を設定し、それを排除するあるいは将来を無視した生活救済金をばら撒くような政策を提示している。
しかし、上記の政策は、一時しのぎにはなったとしても、生活苦の救済には繋がらない。
民主主義は、市民が感情ではなく理性に基づき意思決定をしなければ、合意には至らないので、意思決定ができず、政治が前に進まない。
そのため、現状が改善されず、停滞を続ける。
それはフランスだけでなく、先進諸国全般に広がる問題だと思う。