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読書感想文②『「社会正義」はいつも正しい』

今回も最近読んだ本の感想を書き留めたいと思います。
最近、「ポリティカルコレクトネス」や「アイデンティティポリティクス」という言葉が日本でも聞かれるようになりました。本書では、その震源地であるアメリカから、こういった概念が自由や科学を重んじるリベラリズムをを蝕んでいることを指摘しています。

本書の要旨~社会を破壊するものの正体~

現代社会は「分断」に悩まされています。
その理由が「アイデンティティポリティクス」や「ポリティカルコレクトネス」であり、それらの理論の下敷きにポストモダニズムがある、と本書は考えます。

ポストモダニズムは2つの原理と4つの主題で構成されています。
・知の原理:客観的知識や真実の獲得に関する急進的な懐疑主義と、文化構築主義への傾倒
・政治原理:社会は権力体系とヒエラルキーで構成され、何をどのように知り得るかはそれによって決まるという考え

主題①境界の曖昧化:客観や主観、事実と信念といった社会的に重要な分類の客観的正当性を否定すること

主題②言語の権力:客観的事実が単に言語による構築物と見なされること

主題③文化相対主義:事実と知識は社会の中で作用している支配的言説と言語ゲームによって構築されるため、いかなる文化規範群も他と比べ優劣は言えないとする主義。

主題④個人と普遍性の喪失:自立した個人や人間全体と言う概念がでたらめであり、小さな局所的集団に注目すること。

上記の概念が、近年物象化され権力化された応用ポストモニズムになったことで、科学や自由と言った近代の基盤となる概念が破壊の危機に瀕しているそうです。

例えば、
講義で男女に特有の特徴について言及した教授が性差別と批判されたり、人種差別の歴史抗議で差別用語を紹介しただけで人種差別に加担していると糾弾されるなどです。

本書の結論~どうすればいい?~

著者はリベラリズムこそが社会を前進させるうえで最良の思想であると考えており、自由な思想言論と言った価値を守っていこうと訴えます。ポストモダニズムもその主要な価値を棄損することは許されないのです。

感想

ポストモダンはニヒリズムだった。
応用ポストモダンも力への意志を希求した別種のニヒリズムだった。
だから「ポリティカルコレクトネス」も「アイデンティティポリティクス」も社会のオルタナティブにはなれない。結局、近代の限界の延長にしかないからだ。
僕らは近代思想そのものを問い直し、近代以外の思想との統合を図らなければならない。
その意味では、本書も近代の限界の中に位置づけられるのではないだろうか。


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