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寂しがりの一人好き【短編小説】

一人が好きだ。
そのくせに寂しがりなのは一体何なんだ。

休日。いつもより1時間遅く起き、まだしっかり開いていない眼をこすりながら洗面所へ。
あまり健康的とは言えぬ菓子パンとコーヒーのみの朝食を済ませる。テレビを眺めながらダラダラする。それからやっと重い腰を上げて部屋の掃除の開始。

それから身支度をして買い物へ出かける。
おなじみのスーパーだからどこに何があるかは把握済み。必要なものをさっさとカゴに入れたらレジを通ってすぐに家路を目指す。

人混みはキライ。
街の喧騒や子どもの泣き声、選挙カーから響き渡るウグイス嬢という名のオバサンの声。
あぁもう、早くお家に帰らなきゃ。

そうして家に帰ってホッとしたはずなのに。
なんだかとっても寂しいのはどうしてかしら。
カーテンの隙間から差し込む真昼の日差しが明るすぎるから余計にそう思うのかしら。

誰かに会いたい気がする。
だけど一人が好きなんだよなぁ。
ワタシってわがままね。

気がつくと約1時間後には玄関の外に出ていた。
散歩をする気らしい。
真っ昼間だが、11月にもなると涼しい風が頬をなでるため暑さは感じない。
この秋から冬に変わる感じがたまらなく好きだ。

近所の遊歩道を歩いてみる。近所だが、特に知り合いもいないため気楽。
先ほどのスーパーの近辺とは違い、初老の男性やシルバーカーを押したおばあさんがポツポツと歩いているくらいでとても静かだ。

静かだが、誰かしらはいる。この空間が私の寂しさを少しばかり和らげていた。

しばらく歩くと今度は下校中の小学生。
私とすれ違うとやや恥ずかしそうに
「こんにちはっ」と小さく挨拶された。
ワタシもお辞儀をしながら「こんにちは」と挨拶を返す。
相手が小学生だろうが、挨拶してくれた人には敬意を欠かしたくないからね。

それから30分ほど歩いてみたが、知り合いとは誰一人会わない。すれ違う者は皆見知らぬ人。
それでもこの昼下りの休日、この世界にはワタシ一人じゃないことが証明された。
家という箱の中では一人ぼっちだったのにね。

大袈裟かしら。ふふ。

今度の休日は面倒くさがらずに
ちゃんと知り合いとランチにでも行くように
したいわね。
一人が好きなんだけど、たまには、ね。


短編小説とはいえ、ほとんど自分のことだったりします。笑
エッセイのような、作り話のような。
そんな作品もこれから作っていきたいです。

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