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やり残した事と残り時間

人は自分が死ぬ時を知っているのだと思うことがあります。

勿論、何日の何時に死ぬといった具体的な事までは分からないでしょうが、何故だか分からないけどこの人にだけはすぐにでも会っておきたいとか、この用事だけはすぐに片付けておかないとといった種類の衝動を感じる事で自分の死期を悟っているのかもしれません。

私の経験をお話しします。

私は元々洋食のコックさんでしたが、ある時期から印刷物などのデザイナーとして生活していました。色々な事情や経緯があり成り行きでデザイナーとして独立開業する事になってしまったのですが、その時に大変お世話になったデザイナーさんがいらっしゃいました。

この方が目を掛けて下さったお陰でデザインの勉強もさせていただき、なおかつ仕事もいただいて何とか創業当時の苦境を乗り切った経験があります。

私にとっては大恩人なのですが、仮にSさんとします。

そのSさんが体調を崩し仕事を辞めて自宅に引きこもっているという話しが聞こえてきました。

元々お酒の量が過ぎる人でしたので、恐らくアルコールが原因で体調を崩されたのかなと思っていたのですが、やはりそうだったみたいで、自宅にこもっていたら更に酒量が増えるだろうし良くないなと思いながら、こちらかは連絡が出来ずにいました。

そんな気がかりな状況が数年も続いたでしょうか。あるとき急にそのSさんが電話を掛けてきてくれました。

懐かしいやら嬉しいやら申し訳ないやらの複雑な気持ちでしばらくお話しさせて頂いたのですが、会話の内容は本当にたわいのない世間話に終始しました。

そのSさんの訃報が聞こえてきたのは、その電話からまだそんなに経っていない頃でした。

実はSさんからの電話を受けたのは私だけではなかったようで、当時の同業者数名がやはり突然久しぶりに電話を受けて、同じくたわいのない世間話をしたと話していました。

私はこれと全く同じ経験を別の人でもしていまして、その人も当時の仕事仲間だったのですが、しばらく疎遠になっていたのに急に電話を掛けてきてくれました。

話しの内容も同じく「最近どう?」といった程度の世間話し。何か用事があって掛けてきたわけではありませんでした。

そしてその人も、それからほどなくして亡くなりました。

こういうのを虫の知らせと言うのでしょうかね。二人ともまだ死ぬような年齢ではありませんでしたので、まさかあの電話が最後になるとは全く思いもしませんでした。

ある程度、自分の死期を悟ったお年寄りであれば、生きている内に電話をしておこうと考えるのも納得も出来るのですが、この二人に関しては周りの人達も誰も亡くなる事は想定していなかったと思います。

この事があってから私は、何か思い立ったことがあれば、躊躇せずにやってしまう事にしています。だって人間、明日も生きているかなんて誰も分からないですし、誰もがその時に向かって進んでいる事だけは間違いないのですから。

死んであの世に行ってから、「ああ、あの人に電話しておけば良かった」とか思いたくないですからね。


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