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一日一詩。

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言葉にできないコトバをことばにします。
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2023年2月の記事一覧

【詩】知らない人たちの密林

僕の周りには知らない人たち 知らない人たちが、たくさん、たくさん 見渡すかぎり、そればかり、そればかり 知らない人たちばかりがたくさん パソコンとにらめっこ知らないお兄さん 携帯とにらめっこ知らないお姉さん なにとにらめっこ? けげんそうな顔の知らないお母さん 会話の動きだけが見える知らないお友だちは口パクのエキストラみたい 皆それぞれの世界でそれぞれを生きている だから僕らは知らない人たち 知らない人たちの溜まり場 知らない人たちの行列 知らない人たちを捌く知らない人

【詩】電車のなかで

何も知らなかった頃 誰もが全てを知りたがった 電車に乗れば それはもう冒険で これから待ち受ける未知が 楽しみでしかたなかった 高速で通り過ぎる窓の外 動いてないのに動いている不思議 周りに座っている知らない人の奇妙 不定期に止まったり動いたりする意味 喋っている人がいないのに聞こえてくる声 いつ来るのか分からない終わり 全てが疑問で、 全てを知りたがった なんで?どうして?これはなに? 声をあげると優しくパパは注意する 「静かに」 目に映る全ての疑問に 僕は沈黙し

【詩】裸眼

僕は、目がわるいから 眼鏡をかけて視力を矯正している 僕は、頭がわるいから 勉強して頭を矯正している 僕は、性格がわるいから 怒られて性格を矯正している 誰しもわるいところがあって、 眼鏡をかけるだけで救われ、 努力するだけで救われ、 孤立するだけで、 救われる 裸眼で見る世界の生きづらさが 誰かのほんとうの生きづらさだとして だれがわるいか、ほんとうにわるいか

【詩】動く絵の具

絵の具が踊っている 四角い板の中で 美しく色とりどりに でも絵にはなれない ただ 動く絵の具

【詩】夜の散歩道

風呂上がりの火照った体を夜風に当てたくて こんな時間にまた靴下と靴を履く 夜道を好きな時間に歩ける平和を ありがたいものと感じてしまう哀しみ 視界の先には美しく橋を照らす街灯 辿り着くともといた所の暗さが美しい ないものねだり 夜の散歩道 まぶしいくらいに働く街灯のせいで 気づかれない今日の満月に気づく 満月がぼやっと霞んで三つくらいに見えるのは 弱い視力のせいか、薄い雲のせいか もしもでこぼこ道だったら五回は転んでいる ずっと満月を見ながら歩ける平らに感謝 終

【詩】ひとりぼっちのふるさと

ある日、消えたふるさと 突然、ひとりぼっちの私 みんなにはあるふるさと 私にはないふるさと 新しく出会うふるさと 私の義理のふるさと しかしそれでもふるさと ひとりぼっちではない私 ある日、思い出すふるさと 今、ひとりぼっちではない私 消えたふるさとはいま ひとりぼっちのふるさと 淋しかったのはまさか 私だけではなかった ふるさとだってきっと 淋しいひとりぼっち 忘れないよきっと 無くさないよきっと またいつかいっしょに すごそうふるさと

【詩】優しい人になるよりも

優しさという名もない花を 今日はいくつ見つけただろう 幸せという小さな生命を いくつ気づかずに踏みつけただろう 輝く太陽にはなれなくても 照らされていない輝きを 見つけることはできるかもしれない 優しい人になるよりも そこに優しさがあることを