ねこっかぶり 改訂版


猫が言ってた死ぬのはまだ早いって
まずその身にかえってくる因果にきっちり落とし前をつけてからだって
そんな耳が痛いことを
面と向かって言ってくれた
俺にもかつて友達がいたんだよ 一緒にドラクエのレベル上げしたり
防波堤から飛び込んだり ウミウシぶつけ合ったり ロケット花火で撃ち合ったり 俺が高校やめようとしたら本気で泣きながら止めてくれた 中卒なんかで世の中でたらクソムカつくオヤジにこき使われてよボコられてよ くやしいことしかねーからや オメーマジで高校やめんなって だから卒業できた あいつが高校やめる時ただ俺は黙ってみてたのに
あいつの母親が自殺した時もそうだった
言い淀んで飲み込んだ言葉
何も言ってやれんかった
いつだって優しいやつだったのに
貸した金はもういいから
真面目に生きろって言ってくれたのに
後ろめたくて恥ずかしくて
勇気がなくて俺は逃げたんだ
あれからずっと
喉に引っかかってぶら下がって
誰とも仲良くできないまんま
俺のペラペラの言葉は
目測を誤ってどこにも届かない
みんなどうしてる? 俺にも
家族はできたけど
ひとりででかくなったツラして一丁前に
へんなタトゥーなんか右腕と
左脚にいれちゃってや やめとけって言ったのにタバコもやめとけって
あんなに言ったのに
親の話なんか聞きやしないんだから
だから猫と話してるよ 気が向いた時にフラっとカリカリ食べにくる灰色のハチワレ 俺の人生なのになんかずっと借り物みたいだ
おそるおそる野良猫に触る
それにそっくり
なんなんだろうねこれ 自分より不幸な人をみて自分のこと慰めようとするこのこころ そんなんだからみんな遠くへ行っちゃうんだろって 欠伸しながら猫が言ってた なんだよ ちぇ 
振り返れば身に覚えがある悔恨ばっかりだもう懲り懲りだ
なんかいい手立てがあった筈なのに
反故にしたものが多すぎて
手が回らない
人並みになりなさいって泣く母と
なんもできないやつだと怒鳴る父
それを踏まえて分離する
さけるチーズみたいに
やけに容易く
無理矢理口角をあげて
笑え笑え笑うしかないだろ
こんなもん
裏切ったり裏切られたり
殴られたり殴りつけたり
踏んだり踏まれたり
切った張ったで
タリラリランのコニャニャチハ
きっとこれは蛇足だけど
きっともう引き戻せない
いつもいつもいつも
そう

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