ホテルふたりぼっち


あなたのくやしさはこの暑さにやられて
蒸発してしまって
だからもう泣かなくなってしまって
そうだこうしたらいいよ
市営プールに沈む蓋のないビンを
イメージして
底についたら見上げてみたらいい
少し心細いけど案外きれいだったりして
泣いても泣いてもほったらかしにされた
子供はやがて泣くのをやめる
泣いてもどうにもならない事を
思い知るから

諦めてただ我慢強くなっただけ
強いってそういことじゃないから
歯を食いしばって耐えてきた人ほど
死にたいとかじゃなくて
ふと生きる事が
どうでもよくなったりして

あなたの哀しみはこの暑さにやられて
蒸発してしまって
だからもう泣かなくなってしまって
もういいよ靴なんか脱いじゃって
裸足になってあそぼあそぼ
はしゃいだり
浮かれたりぬか喜びしたり
泣き喚いたり愚図ったり
くだらない事でケラケラ笑って
大人になったらしちゃいけないって
誰が決めたんだよ
もっと大人になりなさいって
耳うちしてくるやつに
言ってやれ
オメーに
なんか迷惑かけたかよって
つうかオメーも迷惑かけて生きてるのによ それに気づいてないだけだよ
ホントおめでてーなぁって!
あんなやつほっといて
冷蔵庫にカルピスあるよ
一緒に飲もうよ
水ようかんも特別につけちゃうよ
だからほらこっちおいで
だって夏なんだから
それともこのまま
揮発する夏を二人でみてようか
やがてそれも空にかえって
もうじきくるよ
底がぬけたような夕立

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