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#3 若かりし頃の苦難

お見合いの思い出

 テレビでケイビングをしているのをみた。ケイビングは洞くつ探検のこと。テレビ番組では、ケイビングを体験しているタレントさんが「なにこれー、信じられない―」と叫びながら、洞窟の中を這いつくばっていた。
 気持ちがよくわかった。私にも、ケイビングに苦い思い出がある。

 20代の頃、私は鬼のようにお見合いをしていた。正確にいえばお見合いをさせられていた。独身のままずっとバリバリで働く能力もないと思っていたから、母親のいう通り、20代で結婚しなきゃなと思っていた。だから、言われた通りにお見合いをしていた。

 何回お見合いをしただろう。途中から数が分からなくなってしまって、数えるのを止めてしまった。
 そのぐらいお見合いしていたら、面白いこともあった。哀しいことも少しあった。イライラすることもあった。変わった人もいたし、驚くほど真面目な人もいた。悲喜こもごもだ。
 結論を言えば、それほどお金と時間を使ったのに、最終的には恋愛結婚して、私のお見合いの歴史も終わった。私の本性としては、お見合いでは収まらなかったのだと感じている。

ケイビングの思い出

 ケイビングは、お見合い相手の一人と行ったことがある。
 その人(Aさん)とは初見をクリアーして、2回目に会うことになった。2回目に会う時は、二人で待ち合わせをして、食事とか映画、ドライブなどに出かけるのがお見合いの常套だ。
 そして、女性側としてはまあデートだから小ぎれいに決めて、男性もおしゃれをして、その日のデートコースを色々と考えてきてくれる。私もその日、髪をクルクルカールにして、ふんわりワンピースを着て出かけた。
  Aさんの風貌の記憶は明確にはもうない。たくさんの人とお見合いをしたから仕方ない。だけど、お見合いをした人の中では、バランスのとれた標準的な感じの人だったように思う

  Aさんとの待ち合わせ場所に行き、Aさんの車に乗った。Aさんは今日行く場所は秘密ですと言って、ニッと笑った。車はドンドン山の中に向って行った。ここはどこだろうっと思っていたら、ある洞くつに着いた。洞くつの観光かなあと思ってついていったら、Aさんが今日はケイビングをしましょうーと明るく言った。当時の私はケイビングを知らなくって、何それ??とい感じだった。尋ねる間もなく係の人に促されて、更衣室にいった。置いてある服をみたら、黄色のツナギ服に、長靴、黄色のヘルメットにはライトが付いていた。どういうこと?と思いながら着替えた。私のクルクルヘアーは・・・、私のワンピースは・・・。。更衣室の鏡で、つなぎに着替えた自分をみて、こんなはずじゃなかったのに・・と思うとか急に悲しくなった。
  係の人の説明を聞いていると、これはとんでもないことになっていると気時付いた。私の辞書には、探検の文字は全くない。
  とはいえ、相手はまだ会って2回目の人だ。冷静にそつなく対応しなければいけない。その日の私はよそゆきの私だから。
  これはどうしたものか、こまったぞ・・・とグルグル思案しながら、係の人の案内でAさんと私はどんどん洞くつの中に入っていった。
  狭い洞くつの中を這いつくばって進んで、どろどろになって10分もしないうちに、私の中の糸が突然プツンと切れてしまった。プチンなんてかわいいものじゃないくて、ブチ切れたが近いかな。
  「私、もうやりません。帰ります。一人で行ってください」とAさんに言って、洞くつの入り口に戻った。
  一番申し訳なかったのは、一緒に洞くつに入った案内係の人だった。これはどういうことだ??? 何が起きた??ケンカ勃発か???という表情でオロオロしてたな。そりゃそうだよね。二人はカップルでデートで遊びに来てると思ってたと思う。
     でも、会って2回目で、まだお互いよく知らないのに、黄色のつなぎにケイビングって、どうですか。私のプチンは間違ってたでしょうか
  どうやって家に帰ったか全く覚えてない。Aさんとのお見合いは終わりとなった。

後日談

  翌日、会社の友だちにケイビングの話をした。
  お見合いってことはカットして、突然ケイビングってものに友だちに連れていかれて、どろどろになってオシャレも何もなかったと。
  
  当時、ケイビングは全く知られていなかったから、友だちたちは、すごく興味を示して、へ―おもしろそうー、私もケイビングしたいーって言いだした。そこが気になる?  挙句の果て、週末の休みに連れて行ってーと言い出した。会社の友だちがあまりにしつこく言うものだから、しぶしぶ私が運転して連れて行くことにした。私は絶対にしないから、遠くで待ってるからねと何度も釘を刺しおいて、行くことになった。

 思い出の洞くつについて、私は入り口で待つつもりでいたら、なんとお見合いの時に担当してくれた係の人が出てきた。あの時の気まずさと言ったら忘れようがない。係の人に気づかれないように、パンフレットで顔を隠して下を向いていたが、係の人は私にいった。「先週、来られてましたよね。かなり怒って帰った・・・」。顔にはなぜまた来たの?と書いてあるように見えた。
 そうです、その通り。すいませんでした、というしかなった。

 お見合いには、いろんな人がいて、面白かったなと思う。でも、きっと私も変わった人と言われていたと思う。


回想

 大事なことを書き忘れてた。
 今思えば、Aさんは悪い人じゃなかった、むしろいい人だったんだと思っう。実は相性も悪く無かったのでは・・・と感じてる。当時、私は20代前半でのほほんと生きていたから、その時にはAさんの良さが分からなかったんだと思う。
 なぜなら、結局私はAさんみたいな、いかにもケイビングでも行く?と言いそうな人と結婚したからだ。でも言わないかな、閉所恐怖症だから。
 とはいえ、Aさんも事前に言ってくれたらよかったと思うケド・・・。Aさんも、私もウブだったんだなーってことにしとこう。



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