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2020診療報酬改定:こどもの運動器疾患への手厚い診療が大きく認められたよって話

こんばんは
今回は少し変わった話をします。

そう、みなさんの好きなお金の話です。

われわれ医療者は提供する医療に対して自らが報酬を決定しているのではなく
2年に一度改定されている診療報酬というものをもとに算定しています。

診療報酬が上がると同じことをしていても収入が増えるし
医療費が爆増しているため、集中し過剰だと思われる分野の診療報酬に関してはマイナス改定となることもあります

病院やクリニックはそのたびに方針転換が必要になり
国は診療報酬の改定によって医療の方向性をコントロールしています

これまで小児運動器疾患に対しての加算は特になく
手術や内服薬の処方を行う機会が少ないため
小児をみていくことは赤字営業が確実とされていました

小児運動器疾患がほとんど公的病院で対応しているのはこのためです

しかし最近になって、先人の努力により
少しずつ小児運動器疾患についての知見が広まり
早期の介入と継続した診療が必要であり
地域の医療機関で受診ができるように診療報酬得の改定が行われています

1.小児運動器疾患管理指導料の誕生

2年前の2018診療報酬改定から小児運動器疾患指導管理料というものが加わり
運動器に障害のある児の整形外科での継続した診療が勧められてきました

これによって、小児病院の少ないスタッフにギリギリ支えられてきた医療が
民間に開放され、その機能の底上げが期待されていました

さて、中身をみてみましょう。

B001 28 小児運動器疾患指導管理料
250点

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こういった文章はなんて読みにくいのでしょう

要約するとこんな感じです

・外来で6歳未満の小児運動器疾患を有する患児が紹介受診されたとき
・専門医が計画的に治療や指導を行うと
・6ヵ月に1回だけ250点を算定できる

6ヵ月に1回なので1年で5000円の収入ですが
医療費抑制の流れの中で、新しい算定が加わったことは画期的でした

2.2020年の改定内容

導入から2年が経過し、これでは良くない点も分かってきました

小児運動器疾患を有する患児の数が一番多いのは10歳〜14歳らしいんです

たしかに先天性疾患や発達異常など
1%いるかいないかの疾患よりも

外傷後のフォローや側弯症などの
学童期にわかる運動器疾患の方が圧倒的に多いです

そして、半年ごとのフォローではなく
初診時からしばらくは、定期的に受診をすすめる内容に変更された点も評価したいです

●変更点
・紹介された患者→×紹介は必要なし、継続的にみていることが必要
・年齢の幅が広がりました 6歳未満→12歳未満
・6ヵ月に1回算定→半年以内であれば毎月算定可能,その後は半年に1回

今回の改定には施設基準の厳格化と届出制度ができました。
おそらく前回までの制度では基準のみみたして
専門医の診察実態のない算定が多くあったと考えられたのではないでしょうか

3. 加算でどのくらい変わるのか?

では実際の診療の例をとって計算してみましょう

初診時から半年間は月に1回250点が算定できます

検診や他院紹介によって
週に10件、該当年齢の新規患者が来院すると仮定します

通院がその後も必要な症例で算定可能なのは

(疾患の頻度と半年間の通院回数の目安)
・側弯症 5% 通院2回
・扁平足 2% 通院3回
・股関節脱臼 0.5% 通院5回
・斜頸 0.5% 通院2回
・その他の疾患 1% 通院2回

くらいでしょうか
(他は軽症で通院継続なし、または外傷など)

半年で25週とすると
新規で250人になります
計算すると算定回数は53.75回です

ここに250点が計算されるのでおよそ13万円の収入増加につながります

これは新規患者のみで計算しているので
さらに継続が加わることになります

なんとなくお分かりいただけたでしょうか

4. 患者負担の増加はなし?保険医療の仕組みから考える

この人口減の時代においては
ほとんどの自治体で12歳以下の医療費の自己負担分が返ってくる制度があります

加算の適応範囲が広がることで医療費全体が増えるのではと考えますが
自己負担額は税金から支払われることになるのです

患者さんや家族には実質的な負担増はありません

また、医療保険組合や国の増加分はそのうちの3割であり
残りは市町村などの自治体負担になると考えることもできます

診療報酬を決めるのは国の機関ですが
実際の影響を受けるのは自治体なのだというところがポイントです

この改定を機に
小児運動器疾患に関する知見が広まり
現代の子どもに起きている以上に対しての危機感が広まればいいなと考えています

その危機感についての詳しい内容は
また別の機会にお話します

中川将吾
小児整形外科専門ドクター

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