乳児健診も中止に!?股関節脱臼が増加する危険性についての真実

こんばんは.自粛ムードが最高潮になっていますが、普段から休みの日は家で子どもと遊んで一緒にご飯食べているので、なんら変わりない日常を過ごしてたりします。

小さいうちに触れ合うことはとても大切と言われます。子どもは触れ合いによって愛情を感じるのみではなく、親の会話や行動をものすごく観察していて、マネをすることで成長していきます。休みの日はできれば両親そろって子どもと接してあげると良いです。

さて,今日は先日Twitterで注意喚起を行いました。
股関節脱臼症例が今後増えるかもしれないと言う話です。

こういったtweetを行ったところ、やはりそういった心配をしている方が数人いらっしゃいました。

この話題について詳しくお伝えしようと思います。

1. どうして今股関節脱臼の心配なのか

股関節脱臼は先天性股関節脱臼という名で知られており、生まれてくる赤ちゃんの1000人に2人前後で発生すると言われています

その名の通り、股関節が脱臼してしまっているので、成長障害や関節の変形が起こります。無治療のままや治療開始が遅れてしまうと変形性股関節症となり、将来的に人工関節の手術が必要になるケースもあります

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予防法はいろいろ言われていますがはっきり証明されているものはありません。現在の医療では早期発見、早期治療が有効だと言われており、発見の手段として乳児健診が行われています。

乳児健診がこの新型コロナ感染症の拡大防止のため、自治体やクリニックなどによっては中止または延期になっているとTwitterのTLで流れてきました。

検診を受けていても約15%で診断されずに1歳を迎えていることを考えると、(これについては少し言い過ぎですが)診断の遅れからさらにその確率が増えることになると予想されます。

これから運良く騒ぎが収束し、2ヵ月遅れで診断、治療となったとしても、生後半年を過ぎると、その後から治療したとしても成績不良に繋がると言われています。

新型コロナ感染症はたしかに未曾有の惨事を引き起こしていますが
それによって被害を受ける子どもが増えるのは
子どもの未来のためにも避けなければいけません

2. 健診内容はどんなことか

乳児健診は自治体ごとにどの様に行うかが異なっています。

つくば市では4ヵ月健診として行われています。

ほとんどの子で4ヵ月というのは首がすわっており、そこが最初のターニングポイントであるため、その時期に行っているといわれています

小児整形外科としてはすでに遅いのですが...

4ヵ月でまずは疑いとして精密検査に送られます。予約を取って受診する頃には5ヵ月。治療開始して、初回の治療の判定が出る頃には半年を超えてしまいます。

治療はもちろん早ければ早いほうが良いので、すでに遅れているスケジュールがさらに遅くなってしまうのは非常にまずい状況です。

実際の健診は

・股関節とお尻まわりのしわの形の左右差比較
・股関節の開き具合の確認
・股関節他動運動時のクリック音の確認
・脚をそろえて足裏を地面につけた際の膝の高さの差(Allisサイン)
(施設によっては股関節エコー)

などで確認します

慣れている医師であれば1人2分程度で終了します

筑波大学では生後1ヵ月での健診を案内しており、1週間で20人くらいの検診を行います。そこで疑いがある人は外来受診をすすめたり、抱っこの仕方指導をして経過をみたりしています。

いまはちょうど冬生まれの子たちが健診を受ける時期です。

冬生まれに股関節脱臼が多いことは昔から言われており
さらに危険性が高い状況と言えます

3. 股関節脱臼予防のためには

検診が受けにくいのであれば脱臼予防はどうすれば良いの?

よく言われているリスクは

・女の子
・骨盤位(逆子)
・家族歴発症(おばあちゃんが股関節悪いとかも含む)
・オムツが替えにくい

などですが、向き癖が強い子も反対側の股関節の動きが不良になりやすいです。

これには生まれたときから子どもに備わっている反射が関係しているといわれていますが、最近の研究では否定されており、真偽は不明です。

自分はたくさんの赤ちゃんと運動力学、解剖学を勉強してきて、下肢のコントロールが未熟なことが影響していると考えています。

お母さんの体の中にいるときは羊水と呼ばれる水の中に浮かんでおり、脚は体の前でたたまれた状態になっています。

生まれてきて急に重力下で脚が伸ばされることで、自分の脚がどこにあるのか、なぜ重いのか、そして股関節前面あたりがなぜか引き延ばされているのか、おそらく不安になるでしょう。

赤ちゃんはまん丸にすると安心するといったことも言われています。

これは背中を丸めるとともに、脚をからだに近づけて安定させることを意味します。

脚をささえることで筋肉の緊張も緩和され、股関節脱臼に特有の腸腰筋という股関節前方の筋緊張も緩和するでしょう。

これはあくまでも推論ですが、今後詳しく研究してみたいと思っています


ここまでお読みいただきありがとうございます。

股関節脱臼の心配をしていますか??
小さい赤ちゃんがいますか??

最後にもう一度言います。

股関節脱臼はいち早く診断と治療を必要とします


心配な方はいちはやくご相談ください


中川将吾
小児整形外科専門ドクター

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