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【活動報告】第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会

日本のプライマリ・ケアの学術団体を代表する「日本プライマリ・ケア学会(JPCA)」の第15回学術大会が6月7日から9日にかけてアクトシティ浜松(静岡県)で開催されました。

ファミラボ関係者も家族支援・家族志向のケアに関する企画・運営に携わりましたので、ここに報告致します。

学会ジョイントシンポジウム(日本家族療法学会)『家族療法/システミックな考え方と技法を、どのように高齢者診療に織り込むか?』

昨年第14回JPCA学術大会でも日本家族療法学会(JAFT)との合同シンポジウムを開催し、引き続き今年も合同シンポジウムが開催されました。

高齢者にどのように向き合うのか、これは超高齢化社会において医療だけにとどまらない社会的課題であり、高齢化は身体的変化だけでなく、生物心理社会的なシステムにも強く影響を与えます。

生物心理社会的な喪失は、家族にも喪失感をもたらすと同時に、親子や夫婦間などの関係に介護-被介護者の新たな関係性の変化をもたらします。高齢化における家族の存在は重要です。

今年は家族療法の専門性がどのように高齢者診療における家族理解と家族支援に活用できるかについて議論し、現場での高齢者診療についての考察を深めていきました。

座長は、三重大学総合診療部の若林英樹先生、KPCLの児島達美先生です。

講演の概要:
①プライマリ・ケア側からみた高齢者の家族志向のケア
松下明(岡山家庭医療センター)

プライマリ・ケア医の立場からみた家族志向のケアの総論について講演されました。「家族志向のケアの5つのレベル」や「家族志向のケアの3つのタイプ」の紹介がありました。また、近年家族のパワーが低下していることに対し、どのように向き合うかについて述べた上で、これからの新しい医療モデルと家族についてまとめられました。

②高齢者へのバイオサイコソーシャルアプローチ
渡辺俊之(渡辺医院/高崎西口精神療法研修室)

精神科医の立場からみた家族療法の総論の講演でした。「現実の家族と心の家族」、バイオサイコソーシャルモデルの重要性から「高齢者システムの縦軸と横軸」のお話がありました。その上で、プライマリ・ケア医に期待することを最後にまとめられました。

④家族療法の視点をどのように家族看護実践に活かすか
~誤嚥性肺炎を繰り返す高齢患者家族への意思決定支援~
藤原真弓(堺市立総合医療センター)

家族支援を専門とする看護師の立場から見た家族療法の実践の講演でした。家族システム理論について紹介された後、誤嚥性肺炎となった患者とその家族についての事例をもとに、医療現場における家族アセスメントとアプローチを紹介されました。

④医療現場における高齢家族支援を家族志向のケアの観点から考える
宮本侑達(ひまわりクリニック)

プライマリ・ケア医の立場から家族志向のケアの実践の講演でした。医療現場で家族と関わる5つの深さについて紹介された後、認知症の診断となった患者とその家族についての事例をもとに、医療現場における家族アセスメントとアプローチが紹介されました。

質疑応答:
指定質問者として、永嶋由紀子医師より「認知症など、医療者と家族の会話は進むが、本人が取り残されがち場合に、どのように本人を取り残さずに会話を進めることができるのか」「家族の中で自分のの気持ちを表現できない人がいた場合、どのように引き出すのか」と質問がありました。他に「いろんな職種がいると、どうしてもどちらかにチームで肩入れしがちな人がいる。その場合、どのようにいろんな人に肩入れをするのか」といった実践的な質問がありました。それぞれの先生方のTips が聞くことができ、大変勉強になりました。

所感:
高齢者とその家族はプライマリ・ケアでよく関わりますが、家族療法/システム理論的な立場から捉え直すことで、新たな理解や支援が見えてくると実感しました。今後、家族療法の先生方とさまざまなライフサイクルについて議論ができたら面白いと思いました。(宮本)

インタラクティブセッション『家族志向のケアの学び方~ファミカン(事例検討会)を通して家族を診る『お作法』を知ろう !~』

企画責任者:田中道徳(岡山家庭医療センター)

オンデマンド配信にて「家族志向のケアの学び方~ファミカン(事例検討会)を通して家族を診る『お作法』を知ろう!」という企画を行いました。

当初は現地でカンファレンスを行う予定でしたが、残念ながらオンデマンド。しかし、そこはオンデマンドならではの利点を活かして、初学者にもわかりやすい形にして、レクチャーを組み合わせて事例をイメージできる仕掛けを入れ込みました。

全体の流れは
1、 総論:家族志向のケアのレクチャー
2、 事例編:三角関係化(不安定な二者が第三者を巻き込む)、家族パターン(家族のコミュニケーションパターンを分析する)、ライフサイクル(家族の発達段階を分析する)
3、 まとめ:家族志向のケアの効果
アンケート結果

非常にわかりやすかったという声をいただきました。オンデマンドから発展して現場でもぜひやりたい企画になりました。次は現場で皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

ポスター発表『プライマリ・ケアにおける家族志向のケアの学習目標の考案』

宮本侑達(ひまわりクリニック)

日本のプライマリ・ケアの現場での家族支援がどのように学習され、どの程度実践されているかについて、総合診療専門医/家庭医療専門医認定試験に使用される評価ポートフォリオを用いて分析した研究報告です。

分析の結果、家族支援の実践実態が明らかになり、「実践の契機」「アプローチ手法」「自己対応の評価」「アウトカム設定方法」「経験学習内容」のカテゴリーに分類することができました。

一方、家庭医/総合診療医の家族支援の実践実態は明らかにできましたが、学習実態については明らかにできませんでした。そのため、学習ポートフォリオやインタビューによる学習実態調査が必要であると締め括られました。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

9月30日までシンポジウムとインタラクティブセッションはオンデマンド配信にて視聴可能ですし、ポスターはEポスターにて随時閲覧可能です。是非下記リンクより参加登録ください!

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文責:宮本侑達(ひまわりクリニック)、田中道徳(岡山家庭医療センター)
編集:若林英樹(三重大学総合診療科)


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