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【活動報告】医学生・研修医向け家族ライフサイクルWS開催@JPCA夏セミ

家庭医療に関心を持つ医学生・研修医が一同に集まって学ぶプライマリ・ケア連合学会(JPCA)主催の合宿『学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー』(通称『夏セミ』)が毎年8月に開催されています。

ファミラボでは2018年よりワークショップを行っています。

今年は8/12-14に開催され「高齢者の家族志向のケア〜ライフサイクルから考える〜」というワークショップを開催致しました。

内容

家族システム理論、家族ライフサイクル、特に高齢者のライフサイクルに焦点を当てたレクチャーを行ったのち、事例のアセスメントを考えるグループワークを行いました。

事例は85歳で認知症が進行し、口からの食事が困難となった男性とその家族についてです。同居する息子様を胃ろうを作るのに反対され、遠方に住む娘様は胃ろうを作ることに賛成され、意見が異なっているという状況です。

グループワークでは、この家族では何が起こっていて、どのように関わっていけば良いかについて話し合いました。

臨床経験がまだない学生の皆様には少し難しいテーマかと思いましたが、実際にはたくさんの意見が出て大変盛り上がりました。

特に印象的だったのは、とある学生さんが今置かれているご自身のご家族の状況が事例と似て悩んでいると、その体験を話されたことです。

彼女から、今回のワークショップを通じて自身の置かれた状況を少し俯瞰的することができ、どうしたら良いか参考になったと感想をいただきました。

家族志向のケアのワークショップは、患者さん・ご家族への接し方の学びだけでなく、医療者自身の人生の学び・振り返りにもなることを感じました。

参加者からの質問

当日はいくつかの質問をいただきました。回答をつけてご紹介いたします。

Q)家族ライフサイクルの第1段階が子どもの誕生から始まらず、「巣立ち期」なのは何故でしょうか。

A)あくまで家族ライフサイクルは家族の変化を中心に据えたモデルです。

「巣立ち期」という若い成人の時期は、次世代の家族を築く基盤となる時期のため第1段階としてあります。

すなわち「巣立ち期」という段階はアイデンティティの確立、自己管理能力、新たな人間関係を築くスキル、将来の計画と目標の設定といったその後の人生を築く上で重要な時期です。

若い成人の時期は、次世代の家族を築くための基盤となる重要な段階であるため第1段階としてあります。

ライフサイクルには「個人ライフサイクル」というものあって、これは個人の発達を段階的に捉えたモデルであり、こちらは子どもの誕生からを扱っています。

Q)家族のことを患者さんやご家族に聞く場合、どれくらい聞いていいのか、と躊躇します。先生方はどのようにして関係性を構築していますか?

A)医療者が家族の話を聞くことは、患者さんやご家族も治療や診断に必要だから聞いているということが暗黙の了解として得られていることが多いため、侵襲的に思われる方は少ないように思います。

逆に、医療者だからこそ、家族関係のような普段話せないことも話せると語られる患者さん、家族は多いです。

ただ、それでも話を聞くときに配慮することは医療者に求められます。その際「他の患者さんにもいつも聞いているので、伺うのですが」と「一般化」して聞くことで侵襲性を下げることができます。

ラポール形成の技術も役立つことが多いので知っておくと良いでしょう。

Q)意見が異なり、関係性が良くないため問題が起きていると考えられる事例に対し、どのように接していけば良いでしょうか。

A)まずは関係性がどのようのであるかを治療者が理解する必要がある。

医療者が関係性がよくないと思っても、当事者はそうは思っていないこともあるので、関係性をどのように認識しているのか確認すると良いでしょう。また、関係性の認識も理由まで尋ねることで理解が深まります。

また、意見の相違は必ずしも関係性が悪いことと一緒ではないことが多いです。治療者が意見の相違を問題ないものとして扱い、必ずしも仲裁しようと思わなくても良いです。

逆に、どちらか側に肩入れしすぎると話がより拗れるので、公平に双方の意見を尊重しながら関わることが必要です。

その上で、もし家族間で話ができていないのであれば、その話し合いを促進する役割が医療者にあります。その際「これからどうしたら良いか?」と未来志向の質問をすることで話し合いを促進しやすくなります。

参加者からの感想

参加者の皆様からお寄せいただいた感想を一部紹介いたします。

・ライフサイクルの学術的な面と実臨床のどちらも学ぶことが出来ました。
・患者さんをライフサイクルの視点で解釈するのが新鮮で面白かったです。
・家族のメンバーごとに視点を変えて捉えること、また家族の歴史をたどることもとても重要だと学びました。
・家族図と家族のライフサイクルを組み合わせてここまで具体的にワークをすることは初めてだったので、大変勉強になりました。
・先生方の貴重なフィードバックもいただき新たな気づきも多く得ることができ、大変充実したセッションでした。
・ファシリテーターの先生も、私たちのコメントを尊重し一緒に考えてくださったので、とても話しやすく楽しかったです。
・家族志向のケアについて聞いたことはあるものの、心理学のような概念が多く、難しく感じていました。先内容をコンパクトに絞って、段階を踏んでグループワークと解説をしてくださったので、大変理解しやすかったです。
さいごまで読んでくださりありがとうございます!

最後まで読んでくださりありがとうございます!

ファミラボでは医療現場からできる家族支援について学びを深め、持続可能な個人・家族・地域の幸せに貢献できるよう、家族支援の啓発活動を続けていきます。

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文責:宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)

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