見出し画像

★映画鑑賞note:"Brazil" the Criterion Collection

画像1


『未来世紀ブラジル』アメリカ公開を巡る、監督と配給会社の戦いは有名ですが、そのルポルタージュ本『バトル・オブ・ブラジル』に、94分の"Love Conquers All"版(ユニバーサルが編集した短縮&ハッピーエンド版。のちに米テレビ放映用に使われたとのこと)のことが詳しく書かれていました。なんだかテリー・ギリアム監督では絶対ありえない内容だったので、どんなものか興味があったのですが、米クライテリオン盤に収録されているとのことで。。。勝手に廃盤だと思っていたら、先日たまたま見たクライテリオンのサイトに現行品で載っていて、日本のAmazonでも在庫があったのでDVDを購入しました :^) 

<参考:『ブラジル』製作時のエピソードについては、Yahoo!の⬇️の記事も詳しいです>


♦︎3枚組の1枚目は監督による"Final Cut"版(142分)。(※日本版でも採用されているヨーロッパ公開版は、もともとノーカット版だったが、こちらはオープニングがアメリカ版で採用された雲の映像になっています)レストアされてて映像が綺麗だし、音もデジタルリマスターされてるからか、手持ちの日本版より台詞が聞き取りやすくて良いです!!(英語字幕あり)

特典で監督によるコメンタリーが収録されているのですが、ほぼ休みなしで早口で話してるので、面白いけど、ちょっと疲れます。。。😅

♦︎2枚目は"The Production Notebook"ということで、映画撮影時に製作されたドキュメンタリー「What is Brazil?」や、『バトル・オブ・ブラジル』の著者による、監督、プロデューサー、「戦い」の相手だった当時のユニバーサルの役員たちへのインタビューをまとめたドキュメンタリー「Battle of Brazil」、他にも脚本・プロダクションデザイン・コスチューム・ストーリーボード・サウンドトラックなどなど(まだ全部見れていないのですが)、お腹いっぱいになる内容。(字幕なし)

♦︎そして3枚目が、例の"Brazil : The "Love Conquers All" Version(94分)。1枚目のオリジナルより50分近くカットされています。Gilliam expertのDavid Morganという方による詳しいオーディオ・コメンタリー付き。

短縮版、プロの手でサクッと纏められてますが、肝心の内容が薄いというか、重要なシーンの数々(テロのシーンの幾つか、セントラルサービスの二人組のシーンや夢のシーンの殆ど、ファーザークリスマス(Mr.ヘルプマン)、ママの友達のお葬式、最後のシーンetc.)や、センサーシップ的に問題ありそうな場面やジョークがカットされてしまったことで、『ブラジル』が伝えるメッセージや警告だったり、深く感じたり考えさせられたりすることが、すっかり消えてしまった印象でした。

そしてぶつ切りにされた結果、ストーリー展開が唐突なので、ラブコメとしてもイマイチな印象。。。ボツになったフィルムを使って、いろいろ繋ぎ合わせて編集されたとのことですが、キャラクターもいまいち魅力に乏しい、B級C級の作品になってしまった印象でした。オリジナル版が生絞り果汁100%なら、こっちは砂糖たっぷりの30%の薄いジュースでしょうか。。。🍊 テレビ放映ではこちらの短縮版が使われていたとのことで、これを見て「つまらない映画」という印象を持つと思うと残念です。私は好奇心と突っ込んだコメンタリーのおかげで、ファンタぐらいには楽しめましたが。(笑)コメンタリー、字幕が無くて全部聞き取れなかったので、また見てみようと思います。


"Love Conquers All"版オープニング


オリジナル(ヨーロッパ)版オープニング


★ちなみに以前書いた『ブラジル』の感想はこちら(『ドン・キホーテ』とごっちゃになった、分かりにくい内容ですが。。。):