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"Brazil" ⇄ "The Man who killed Don Quixote"


映画館で「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」を見て以来、ギリアム熱が再燃しています。高校生の頃からモンティ・パイソンが大好きで、ギリアニメーション(オープニングやスケッチの間につなぎで入るアニメ)が特にお気に入りで、その流れでギリアム作品もレンタルで見たり、劇場公開の際はチェックしてたのですが、社会人になってからはフェードアウトしていました。(正直「Dr.パルナサスの鏡」「ローズ・イン・タイドランド」は、いまいちでした)
中でも一番のお気に入りは「未来世紀ブラジル」で、現代社会に対する痛烈な批判を感じるストーリーに衝撃を受けつつ、アール・デコ〜50’sなレトロフューチャーなセット、60'sのカルト映画のようなキッチュなキャラクター、如何にも80’sなドタバタ・ラブコメなど、どこかノスタルジックな「20世紀のどこか」が、お気に入りでした。

年初に映画館で「ドン・キホーテ」のチラシを見かけた時も、「やっと完成したんだ〜」とは思ったものの、公開直前まで迷ってやっと見に行きましたが、久々に頭から足まで、夢と悪夢を行き来するギリアムワールドに浸かって、モンティ・パイソンや過去のギリアム作品を思わせる場面や、夢の世界のようなスペインのどこまでも美しい景色、主演2人の好演もあって、すっかり夢中になってしまいました。

Toby(サンチョ)役のアダム・ドライバーの身体を張った演技もさることながら(「パターソン」の静かで優しい兄ちゃんのイメージがあったので、意外でした)、憂い顔の騎士になりきったジョナサン・プライスの熱演に、すっかり感銘を受けてしまいました。表情豊かな、くりっとした目で物語る様々な感情表現だったり、騎士らしいnobleさだったり、可愛げのある動きだったり。歌うと、やたらといい声だったり。どこか狂ってるけどチャーミングなおじいちゃん💗  鑑賞後、映画について調べて、やっとドン・キホーテ=「ブラジル」のSamだと分かったのでした😅

コロナ自粛の影響もあってか、早々とネット配信が始まったので、先日早速レンタルして見たのですが、再見すると「ブラジル」と共通するシーンがいくつかあることに気づいて面白かったので、「ブラジル」も見返して、考えを巡らしてみました🔍 



★以下ネタバレあります。(台詞等、若干聞き取り間違ってるかもしれませんが、お許しくださいませ)

“Brazil”

*“Trust me” : 印象的なのがJillのトラックにしがみついてるシーンで、窓に何度も紙に書いたメッセージをくっつけてアピール。“Trust you” “You don’t trust me” とかのヴァリエーションも。キーワードのように何度も出てくる。(⇧の予告編にも出てきます)

*”I LOVE YOU”: ↑のトラックのシーンにて、フロントガラスに器用に反転書き☝️
直前のトラックの中でも”I mean I love you”って告ってます(←大好きなシーン。この映画、ロマンチックなシーンは大体途中で潰されてますね😅)。

*蝿: 最初のシーンで、バチンと落ちてTuttle→Buttleと誤植タイプしてしまうところ。

*穴:SamがButtle夫人を訪ねて行ったシーンで、天井に開いた丸い大きな穴から、Jillが覗き込む。→ SamとJillの出会い

*テロ: レストランとかショッピングモールとか、結構ショッキングな場面。Samのママやお友達のお金持ち達は無関心で食事を続ける。

*名前:Jackの夫人(Allison)の名前がMr.Helpmanが間違えて呼んだBarbaraに変わってしまう。→JackはそのままBarbaraで呼び続ける

*顔: お友達のお葬式の場面で、一瞬ママの顔がJillの顔に変わる→戻る

*ラスト: 最後10分くらいの展開が凄まじい。”He’s gone”の衝撃といったら。ハミングが続いてるとこから、事切れたのではなく、現実から夢の中に逃げ込んだ感じがします。(少なくともSamの頭の中では) 百人百様の解釈があると思われるエンディング。

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“Don Quixote”

*”Trust Me”:ジプシーが口癖のように何度も言ってる。Tobyも何回か言ってた気がします。

*”I LOVE YOU”: Tobyの回想シーンで屋根の上のAngelicaがTobyに囁く。

*蝿: 最初のCM撮影のシーンで、Tobyが蝿を叩き落としている。

*穴: 学生時代のTobyが、夢の村を歩いていると、ガラスのない四角い窓の向こうにドン・キホーテ役のイメージにぴったりな、靴職人の老人を発見。→ TobyとDonの出会い

*テロ:「自爆テロよ!」お城のパーティの余興シーンで。実際にはテロは起きないけれど、目の前で酷いことが起きても、自分たち以外には無関心なお金持ち達の姿とか、共通する感じです。

*名前: Melissa→Saraに

*他にもTobyがSamに重なるところ多々。DonやAngelicaが屈辱を受けても、じっと眺めて何も出来ないところとか。
Donのキャラも、Samの思い込み激しくて勝手に突っ走ってくところが重なってきます。
↑“Brazil”でのSamのキャラが、”Don Quixote”だと二人に分かれてる感じがします(最終的ににはひとつになりますが)

“If she can see how crazed I can be without a cause, think how crazed that she will imagine I can be with one.”(日本語は「どれだけ愛に狂えるか」でしたっけ)のくだり: 鞭打ちの苦行の場面と、Donの最後のシーンにもちょっと出てきますが、これってSamが”Brazil”でJillに向けてずっとやってたこと?   <2020.10.4追記:⬆️英語のセリフ修正しました>

*顔: Angelicaの仮面が外れると、ボスの妻Jaquiに。

*ラスト: 色々あったけれど最終的にはハッピーエンド。。。?”Brazil”のハッピーエンド版? 正気に戻ったキハーノ老人(ドン・キホーテ)が帰宅すると、直ぐに病気になって亡くなってしまったセルバンテスの原作とも違う、夢が現実を乗り越えた感があります。”He’s gone”には違いない😇 Sam=Donは元の世界に戻っていきましたね。「去年の巣はもう空っぽだ」という台詞が印象的でした。

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☆「〜ドン・キホーテ」、「ブラジル」以外の他のギリアム作品やパイソンズネタも挟み込まれていて、見るたびに発見があるのが面白いです。(映画館で見たとき、隣の席に座った方が、終始くすくす笑っていて、きっとこの人も私と同じ、モンティ・パイソン・ファンに違いないと思いました😏)あと、監督の作品に一貫して流れるテーマ、夢を信じる力だったり、人々を押さえ付ける権力や暴力に対する抵抗であったり、現代社会の問題に対する批判であったりと、凝ったセットや美しい衣装、壮大な自然のロケーションなどの映像美に魅了されつつも、場面場面に込められたメッセージがやはり印象的でした。


★ジョナサンおじいちゃんの演技が見たくて、他の出演作を色々見ているのですが、ギリアム作品以外では、チャーミングで落ち着いた温かい人物だったり(「2人のローマ教皇」&「キャリントン」)、冷徹さの中に憂いを秘めた人物だったり(舞台 "Merchant of Venice")、我儘で情けない旦那さん(「天才作家の妻」)だったり、どこかトチ狂ってる人(笑)のイメージと違うのでびっくりでした。「五線譜のラブレター」での歌声も素敵です👼♪

(↑ロシア語版?なので、台詞が吹き替えになってますが。。。)