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映画鑑賞note:英国的な映画

<Top画は:https://en.wikipedia.org/wiki/River_Camより引用>


🇬🇧「アナザー・カントリー」"Another Country" (1984)

図書館で借りた『スクリーンの中に英国が見える』という本に、「キャリントン」と同じ枠(「イギリスは暗い」/同性愛映画)で紹介されていて、「夢見る頃を過ぎても」の渋いイケメン、ルパート・エヴェレットの若い頃も見てみたかったので、レンタルで借りてみました。コリン・ファースも少し前に「ロイヤル・セブンティーン」のお父さん役で見たばかりだったので、二人とも若い!と思いましたが、さほど印象は変わらないというか、さすが演技上手いし、年齢の割に落ち着いた印象。もともと二人とも舞台版のキャストで、後に映画でも演じたとのことで、自然に役がはまってる感じでした。(ちなみにルパートさんは「未来世紀ブラジル」のサム役の候補にも挙がってたそうです。。。二枚目過ぎてサムはちょっと違う気がするけど)

美青年映画として当時人気だったそうで、お耽美ものかと思いきや、共産主義に傾倒し、ソ連のスパイとして活動した人物の、パブリックスクール時代のお話ということで、ラブストーリーというよりは青春物語。階級社会や軍国主義、差別や学校での体罰など、息の詰まるような厳しい学生生活の中で、自らの意思や思想に従って行動し、やがてそこから抜け出していく過程が描かれていて興味深かったです。ただ、その後の、スパイになった経緯などは語られていなかったので、モデルになった人物やスパイ(ケンブリッジ・ファイヴ)についても、また勉強してみようと思います。

男子校の寮でのお話なので、ファッションは皆似たり寄ったり(スーツとかブレザーとか)ですが、制服のネクタイが可愛い色合いだったり、ガイのストライプのパジャマとか花柄のベスト、ガイとジャッドのニットのベストが(ジャッドのは穴が開いたりほつれてたりしている)いい感じだなぁと思いつつクレジットを見たら、衣装が「キャリントン」と同じ方 (Penny Rose) でした!ナチュラルで上質な感じが素敵です。「日の名残り」もそうですが、良い部分も(旧態依然とした)良くない部分も含め、第二次大戦前のクラシカルなイギリスの雰囲気に浸るには、いい作品だと思います。夜の逢い引きのシーンが印象的な、美しいケム川(Top画参照)や、ケンブリッジ大学の歴史ある建築、影と光のコントラストを生かした映像美も楽しめます。


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🇬🇧「日の名残り」"The Remains of the Day" (1993)

カズオ・イシグロの小説が原作の作品。映画館で「2人のローマ教皇」を見た後に、スウェーデン語のレッスンだったので、先生に映画の話をしたら、アンソニー・ホプキンス主演で、先生のお気に入りの映画ということでオススメしてくれました。まさしくイギリスの執事("Butler")、品格を備えたプロフェッショナルな執事の仕事ぶりが素晴らしいですが、仕事に徹するあまり素直になれない、スティーブンスの様子がもどかしいです。

第二次世界大戦前の、イギリスの貴族のお屋敷での政治的会合や歴史的な出来事を、そこに居合わせた執事の目から振り返る部分と、現在(1950年頃?)の、お屋敷の主も長年仕えたイギリス貴族からアメリカ人に変わり、初めて取得したバケーションでの、コーンウォールへの自動車旅行で出会う人々や出来事、そしてかつての同僚ミス・ケントンとの再会が、静かに繊細に描かれていて、最後にふわっと浮き上がるようなクライマックスがやってくる感じでした。クラシカルな映画の雰囲気というか、直接的な表現でなく、言葉の裏や様子から推し量るような感じは、日本的な情緒にも似た感じがしました。(スウェーデン人の先生に言わせれば「すごくイギリスっぽいお話」だそうです)

セットではなく実際にイギリスの貴族のお屋敷で撮影されたという映像が、美しくて素晴らしいです。日本人が憧れる『英国』(歴史があって、威厳のある、重厚な。。。)の雰囲気を味わうには、もってこいの映画。世界史の授業はよく寝てたので、『ベルサイユ条約』と聞いても内容をさっぱり思い出せませんでしたが(笑)、当時のヨーロッパ各国の関係や、ファシズムなど、大戦期のイギリスの政治や時代背景について理解してから見たら、もっと深い見方ができると思います。


♦︎レンタルDVDを借りて見たのですが、特典映像として、キャストやスタッフが撮影時のエピソードなどを語ったインタビュー(DVD用に製作されたもの)、映画の舞台となった当時のイギリス貴族を取り巻いていた状況の解説、公開時のメイキング映像等を含むドキュメンタリーに加え、監督・プロデューサーと主演のエマ・トンプソンによる音声解説も収録されていて、映画のバックグラウンドについてかなり詳しく知ることができました。イギリスの執事についてやイギリスらしさ(国民性)、階級制度が生み出す歪みなど、映画のテーマとなった事柄についてわかりやすく説明されていて、興味深かったです。