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Fahrenheit 451 (華氏451)①

レイ・ブラッドベリ「何かか道をやってくる」の感想の記事に、次はこちらの作品の感想を・・・、と書いたので、映画版と原作の両方の感想を。まずは映画から。

★映画観賞note 「華氏451」


フランソワ・トリュフォー監督の1966年版です。(2018年にリメイクされています)小説を読むと未来の話に思えますが、こちらの映画はほぼ当時風で、フューチャリステックな演出は少ないので、今見るとレトロ感ばっちり。おしゃれなインテリアのセットは、1960年代のインテリア雑誌を眺めているようで楽しいです。いかにも合成映像な、空飛ぶ警察官のシーンは70年代の特撮映画を思い起こさせます。。。映画というよりテレビドラマを見ている気分。乗り物にはEXPO'70(大阪万博)感が漂います。ヒロインのジュディ・クリスティが、いかにも60's Cutieで可愛いので、レトロファッション好きにもオススメ。時折挟み込まれるシュールな場面は、モンティ・パイソンぽい?


映画を先に見るか、原作を読んでから見るか、というのがありますが、この作品はどちらでも大丈夫だと思いました。私は映画を先に見ましたが、原作と設定が結構変わっていたり、重要なある事件&登場人物も省略されて、だいぶ違う話になってます。焚書や、政府によって思想も娯楽もすべてコントロールされた社会、といったエレメンツは残しつつ、映画としてまとめやすいようにアレンジされています。SFとしての「華氏451」より、本を愛する人々(Book People)の物語としての「華氏451」に重きを置いた印象です。

原作ではモンターグが出会う女の子は高校生の設定でしたが、映画では妻役のジュディ・クリスティが、1人二役ということで、小学校でインターンとして働いている設定。(20歳前後?)いつの間にかいなくなる原作とは違い、最後まで登場します。モンターグ役のオスカー・ウェルナー(「さすらいの航海」の教授役の人。あれの10年くらい前の作品なので若い!)、原作で描かれたモンターグのイメージぴったりの、ぼんやりした感じの青年。昇進の話を持ちかけられ、上司のいいなりになってる無気力な青年➡︎女の子と出会い、読書に目覚めて反乱を起こす、という流れが「未来世紀ブラジル」感も。(ディストピアものでは定型のパターンですが)隊長ベイティー役の俳優さん(シリル・キューザック)、いい味出してます。

全体的に漂うシュールな雰囲気は、そもそも本が禁止され燃やされる社会、消防士が水ではなく火を放つということ自体がシュールの極みなのだ、とも取れます。本が燃えるときのオレンジ色の炎だったり、黒い花びらのように丸まって、燃え尽きてしまう様子が美しく、目に灼きつきます。



*ネタバレになりますが、ラストの森のシーンが美しく、素晴らしかったです。目や耳に訴えかけてくる映像、輪唱のように響く朗読の声や音楽の効果など、まさに映画の醍醐味だと思いました。(原作とはモンターグの選んだ本が違うのも印象的)


➡︎ 原作の感想は次回に続きます。