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🌼南砺市へ 〜自然と民藝と土徳に触れる旅〜 ②福光編(前編)

<福光へ>

福光駅に着きました。
福光は戦中〜戦後の6年間、志功さん一家が疎開して暮らしていた町。
今でも町の人々に大切にされているようです。
写真には写っていないですが、左側の駅前ロータリーに、『女人観世音』のモザイクのモニュメントがあります。


山あいの雰囲気の良い温泉宿へ一泊。
食堂には志功さんの大首絵、
階段には「心偈」が飾られていました。


ウグイスの声が聴こえる書院造の素敵なお部屋で、朝食後の時間をまったりと過ごした後(去りがたし。。。)、チェックアウト。旅館から歩いて10分ほどのところにある福光美術館へ行きました。

<福光美術館>


ちょうど日の出屋製菓の創業者のコレクション展「俳句と民藝と」が開催されていて、志功さんはじめ交流のあった民藝の作家の作品を色々と見ることができました。(今月号の『目の眼』の棟方特集にも掲載されているので、興味ある方はチェックしてみてください)

後ろの作品2つは棟方志功(基督の柵と河童の倭絵)、
手前は河井寬次郎の作品です。
寬次郎さんの作品はいつも色合いが素敵です。


民藝館などでよく見かける展示レイアウト。
志功さんの掛軸×濱田庄司の作品。
この組合わせ好きです。
志功さんの倭絵。ウズラっぽいですが。。。?
富本憲吉による、おかきのパッケージデザイン
富本さんの作品は、
大原美術館の工芸館で見そびれてしまったので😅、
まとまった数の作品を見るのは今回初めてでした。
バーナード・リーチにも通じる「味」がありますね。


河井寬次郎&柳宗悦の掛軸。
真ん中の心偈、「そういう時もあるよな〜」と字面通りに取ってしまったのですが、
家で解説をチェックしたら、さすが柳先生、もっと深い偈でした。


この展覧会はもう終了してしまいましたが、福光美術館、常設で棟方志功と、日本画の石崎光瑤の展示室があります。コレクション室にも芹沢銈介作品が展示されていたり、民藝が好きな人にはおすすめの美術館です。


そして、美術館から車で7分ほど離れたところには、棟方志功記念館「愛染苑」と、旧居「鯉雨画斉」があります。私は一度バスで福光駅に行って、レンタサイクルで向かいました。お天気で、夏日だったので、途中で美味しいジェラート屋さんへ立ち寄りつつ。。。


<福光めぐり>


福光は町を挙げて棟方推しで、ゆかりの場所も数多くあります。駅前モニュメントや記念館以外にも、河童伝説がある「だまし川」と志功さんが名付けた小川や、メイキング・オブ・ムナカタ展に出品中の『華厳松』がある躅飛山光徳寺など。

他にも行ったことはないのですが、野球の木製バットのミュージアムや種麹店やワイナリーが有名らしく、もちろん温泉、食べ物ではあんぽ柿など、田んぼが広がる山あいの長閑な町ながら、見るところや名物もたくさんあって楽しいです。自転車で巡ると、近くに医王山、遠くには立山が見え、景色がとても綺麗です。田舎の中学生だったので、懐かしい眺め。。。
駅前の市街地はまだ巡ったことはないのですが、老舗の菓子舗や江戸〜明治の面影を残した通りなど、いろいろと見どころがあるようです。
★詳しくは、こちらの南砺市の観光情報サイトをご参照ください。


ヘーゼルナッツとティラミス💕
「道の駅福光」の隣にある案内板。瞞着川で「だましがわ」と読みます。
川沿いの各所に版画のプレートがあるそうです。
だまし川。確かに河童が出そうな感じ?
志功さんも歩いて見たであろう里山の風景。


<愛染苑と鯉雨画斉>


住居兼アトリエ「鯉雨画斉」

棟方志功記念館は、駅から歩いて10分ほどのところにあります。自転車だと5分くらい。実際に旧居が建っていた場所に今は記念館、向かいの公園の一角に、旧居を移築したものが建っています。記念館の隣には、「青花堂」という小さな民芸館もあります。

記念館はこじんまりとした美術館ですが、福光時代に製作された倭絵や板画、書などを、毎回テーマに沿って展示されています。今期は武者小路実篤の「此の道より我を生かす道なし この道を歩く」という言葉をテーマにした展示でした。


これは『華厳譜』に対する、寬次郎さんからの言葉だそうです。
志功さんお気に入りだったようで、萬鉄五郎についてのエッセイにも、この言葉が登場します。


ショーケースのコーナーはチラシや本、手書きの看板などが飾られています。


先生方の案内板


アトリエ「鯉雨画斉」は、係の方に案内していただいて見学します。
受付で「どちらから来ましたか?」と訊かれて、遠方だとこちらを先に案内していただけるようです。ちょうどGWだったので、案内の方も次から次へと忙しそうでしたが、前回伺ったときは平日だったので、かなり丁寧に解説していただけました。

お地蔵さまや観音さま、天女が一面に描かれた厠、民藝作家の作品が飾られた床の間や囲炉裏、皆で集まって話をしたという、ウィンザーチェアが置かれたダイニングや、かまどのある台所など、当時のままに残されています。(東京に帰る時に持って帰ったものは、当時の同じようなものを展示しているとのこと) 昭和のレトロな建物が好きな人にもおすすめです。

もともと棟方の支援者の方の住居だったという民芸館も、美しい民藝品が調和を持って展示されていて、落ち着いた素敵な空間でした。家主だった方の人柄が伺えます。


「鯉雨画斉」の名前の由来の絵。鯉の滝のぼり。
左下の濱田庄司・作の水甕は、割れていたので東京には持って帰らなかったのだとか。
記念館の展示のテーマになっていた、武者小路実篤の句が飾られていました。
トイレの観音様(こちらは前に来た時に撮影しました)


前回来たときも感じましたが、とてもアットホームで見た後ほっこりした気持ちになれる場所。猫窓があったり、柱に残った子供たちの背を測った跡など、一家の生活の足跡もきちんと残されています。壁や襖に描かれた志功さんの作品からは、ポジティブなパワーや暖かさが感じられました。

このあとは田んぼ道を自転車で飛ばして、その日「棟方まつり」のイベントが行われていた躅飛山光徳寺へ向かいました。

<長くなったのでここらで中断、後編へ続きます>


*おまけ:福光を描いた作品いろいろ(前回来たときに撮影)

ちなみにトップ画(eyecatch)の風景が小矢部川です。