見出し画像

夢で思い出した誕生日


小学生の頃、転校生の男の子に心を奪われた時期があった。
思えば異性を友達以外の感情で見ていたのは、そのTくんが初めてで、想い続けていたのは4,5年間。

転校生の男の子Tくんは、まあモテた。
顔ではなく、面白さでモテるタイプだった。
Tくんを好きな女子は他にもいたけど、わたしが1番最初に好きだと公言した自信があった。
そのせいか
「Tくんも、ファラダのこと好きだって言ってたよ」
と友達から聞いて
有頂天になった記憶がある。
音楽室だ。
授業中に友達が、Tくんに聞いてくれたのを
嬉々としてわたしに報告してくれたのだった。

両想い…

相当に浮かれていたと思う。
今思えばTくんの口から聞いたことがあったかどうか、信憑性は定かではないのにも関わらず
両想いの思い込みの魔力は強かった。
誕生日で相性を占ってみたり、仲良くなれるおまじないを臆することなく試したりした。
友達と家に無言電話をかけたりもした。
こわいよね。
あと結構迷惑。
大丈夫分かってる。当時は分かんなかったけど。

そのくせ、告白をして気持ちを伝えるという選択肢は、わたしにはなかった。
お互いなんとなく好きっぽい、それでよかった。
そんな期間が数年続いた。

高学年になったある日
クラス替えで席が隣になったHちゃんが
「ファラダちゃん、好きな人いる?
わたし、気になる人がいて…」

えーだれだれ!!?!わたし?いないよ!
と、嘘をついた。

「Tくんなんだけどね…どう思う!?」


なんと答えたんだったか。
表情を取り繕うので精一杯だったと思う。
そこに追撃。

「告白、してみようかな…協力してくれる?」

地獄の仕打ちか。
やけくそで協力を承諾した。
数日かけて一緒に作戦を練って
放課後にTくんを呼び出す役は、わたしが請け負った。

告白の返事は、OK。
泣いて喜ぶHちゃんを前に、わたしも泣きそうな気持ちを押し堪えて、一緒に喜びながら

キモチヲ ツタエナイノハ マケ

と頭に、心に、強くインプットした。

その後も、Tくんが他の子と付き合うたびに
もやもやした気持ちがしばらく付き纏った。

ずーっと忘れていたけど、たぶん悔しかったんだろうな。自分が言えなかったから。
伝える選択をしなかったから。

今朝みた夢で、未消化だった気持ちを消化した気がした。
高校生になったわたしとTくんが、仲良く文化祭の準備をしている夢。
でもきっと恋人同士ではなくて、仲が良いのを周りに茶化されて照れ笑いしたりして、お互いになんとなく好きっぽい、そんな雰囲気。

相性占いを何度もしたせいで、覚えてしまったTくんの誕生日、今日がその日だったと思い出したのは何十年ぶりか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?