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2022年全国高校サッカー選手権奈良大会 準決勝~橿陸観戦記~

2022年11月6日(日)は素晴らしい天候のもと、3年ぶりに橿原公苑陸上競技場で有観客による準決勝が開催されました!
もちろん現地観戦に行って来ましたので観戦記を残しておこうと思います。

まえがき

準決勝前にBest4の下馬評を知っておきたくてアンケートを取った結果が以下のツイートです。

ご覧の通り今季プリンスリーグ関西2部に参入して2連覇も目指す奈良育英の下馬評が高かったです。

次点は県内屈指の進学校でありながら今季は県1部リーグ2位をキープしインハイでもBest4に躍進した畝傍の下馬評も高かったです。

2年前の代表校の山辺と、3年前の代表校の五條は、意外にも下馬評が低くて驚きましたが、下馬評通りにいかないのもトーナメント大会のあるあるなので、最終どういう結果が待ち構えているのか楽しみな準決勝2試合でした!

第1試合:山辺 vs 畝傍

両校スタメンは下記の通り1-4-4-2の変形システムで、山辺は9番が2ndトップ気味な配置、畝傍は9番がアンカー気味な配置でKICK OFFされました。

山辺高校:白/畝傍高校:赤茶

今季の対戦成績が1勝1敗と互角だった事もあってか、前半の入りはお互い慎重にロングボールで相手陣内に蹴り込むシーンが多く、畝傍が14分にCKから9番のヘディングシュートをクロスバーに当てた以外は見せ場は少なく、被ショートカウンターのリスクを回避する中盤を飛ばしたボール展開が飲水タイムまで続きました。

畝傍はロングボールをトップに当てていたけど、時間の経過とともに間延びしだして、空いた中盤を山辺に使われる様になり、山辺に畝傍ゴール前へクロスをシンプルに入れられるシーンが増え押し込まれだします。

そして押し込まれる展開が続き畝傍の集中力が欠けだしたタイミングを山辺は見逃すはずがなく、35分頃からロングフィードによる大きなサイドチェンジを繰り返し、畝傍の守備ブロックをスライドさせながら振り回し始め、得点には至らなかったものの山辺の強かさを垣間見せたシーンでした。

このまま前半はスコアレスでハーフタイムとなりましたが、ゲームプランをしっかり立てて実行する山辺と、受け身となってしまった畝傍とでは少しずつ優位さに開きがつきだしたなと感じました。

後半スタートから山辺は16番⇒8番に、畝傍は6番⇒11番へと相対するSHを交代させてきました。
確かに逆サイドのSHより目立ってなかったので両校ともに後半から手を打ってきた感じです。

そして後半立ち上がりにゲームは動きました。

まず44分に山辺が得たCKをファーサイドへ蹴り3番がゴール前にヘディングで折り返したところを、畝傍GKがファンブルして5番が見逃さず詰めてボールを押し込み先制点をあげました!

しかし畝傍にとって嫌なムードになった所を直ぐさま払拭します。
中盤からの縦パスを20番が受けて前を向きドリブルすると、山辺のプレッシングを受けながらも粘って8番への横パスを通して、受けた8番は落ち着いてミドルシュートを山辺GKの手を弾きながらもゴールに突き刺し同点としました!

ここからは山辺が更に突き放そうとボール保持する時間が更に増えて、前半終了間際に見せた対角へのロングフィードにより、両サイド深く押し込もうとする事を徹底してきます。

特に左SH20番へのロングフィードは徹底的に行い畝傍SBの2番との1対1となるシーンは多かったです。
しかし畝傍2番は山辺20番を自由にさせない粘り強い守備で突破を許さずゴールを死守します。

逆サイドとなる山辺の右サイドへの展開は7番と8番で2対1を作って畝傍のハーフスペースを狙う攻撃でしたが、こちらも畝傍SB13番の粘り強い守備で突破を許さず、畝傍が県1部リーグで最少失点を誇るのは、この両SBの上下の運動量と1対1の強さが肝なのかな…とこのゲームを見て理解しました。

こうしてこの後も山辺のデザインされた攻撃を畝傍が終始耐えるという膠着状態が続く中、延長戦でも決着がつかず1対1のままPK戦までもつれ込みます。

PK戦は延長終了間際にGKを交代させていた山辺の対策が功を奏し、山辺GKの12番が畝傍のPKを2本も止める大活躍があり、最終的に山辺がPK戦を3対1で畝傍を下し2年ぶりの決勝進出を果たしました。

【試合結果】

(スコア)
○山辺高校1(延長戦)1畝傍高校●

(PK戦)  
山辺 ○外外○○ = 3
畝傍 止外○止ー = 1
  
(得点経過)
44分:山辺⑤
46分:畝傍⑧

第1試合から延長戦+PK戦となる大熱戦をスタンドから観ることが出来て既にお腹いっぱいです…

気持ちは少し休憩しながら第2試合の準備をしたいところだったのですが、恐らく奈良テレビの中継の関係なのか直ぐに第2試合が始まりそうな気配に『マジか!』っと思ったのはここだけの話しです。

第2試合:奈良育英 vs 五條

両校スタメンは下記の通り、奈良育英はボール保持時は1-4-1-4-1で、守備の時は29番がDFラインに入って1-5-4-1に変形しており、五條は例年通りオーソドックスな1-4-4-2のシステムでした。

奈良育英:青/五條:赤茶

昨季決勝と同カードという因縁の対決も新チームとしての今季は初対戦となった準決勝第2試合です。

現地では奈良育英のシステム1-4-3-3と思ってたんですが、中継録画を見たら1-4-1-4-1とのことでした。
このへんの見極めって難しいな…
まだまだ修行が足りませんね。

さて前半戦は奈良育英の左SH29番の上下の運動量がめちゃくちゃ目について、攻守に奮闘しており絶対それ80分は持たないでしょ!ってぐらいで、左サイド起点に広いスペースにボール入れる事を常に意識した攻撃と、右サイドは右IH8番と右SH2番で2対1の場面を作りだし、五條のハーフスペースを狙っている攻撃に感じました。

ただ奈良育英の悪い時によくある全体的に縦へ急ぎ過ぎるきらいがこの日もあり、もう少し幅を使ったりパスに緩急をつけたりすれば良いのに…とは思っていました。

対する五條は今季初めて試合を観たのですが、昨季奈良テレビの中継で観た準決勝と決勝で感じた選手任せのスタイルから一転して、守備はしっかり構築されているなと思いました。
1対1でボールを奪う強さに奈良育英のボール保持者に対し蓋をして前進させない守備でゲームを安定させていましたね!

ただ攻撃面で言うと10番のポテンシャル任せなところが目につき、さすがにそれはチームとしては厳しいかなと思いましたが、後半立ち上がりに奈良育英GKがボール持ちすぎた所をプレッシングかけてボールを奪い、無人のゴールに流し込むあたりは、さすが監督に信頼されているだけの事はありましたね!

それにしても奈良育英のGKとCBはボール保持した時に足が止まって次のプレーに移行する時間がかかってしまうため、準々決勝の奈良高校戦でも同じ様なシーンがあったのですが、相手チームの前線にプレッシングされた時に簡単にボールを失う危うさを感じます。

五條は後半立ち上がりに先制してから守備を固めて、奈良育英のゴール前に入れてくるボールを跳ね返し続け、奈良育英の攻撃に対して付け入る隙を与えず、途中から右SH11番がDFラインに下がり5バックを形成して、上手く時計の針を回している様にも見えました。

この日しか今季の五條の試合を見てないのですが、例年の個人技を生かしたドリブル中心のゴリゴリサッカーから、良い意味で打って変わり堅守を思わせるサッカースタイルに変身を遂げましたね!

それに対して奈良育英は失点してから幅を使って大きく左右にサイド展開を見せて、五條の守備ブロックを攻略しようとするものの、ボール保持時のポジショニングが良くなく上手くパスが通らないため、ボール前進がノッキングによる停滞で五條を攻め倦んでいる様に見えました。

そこで奈良育英は55分に前半からよく走り疲れが見え始めた左SH29番⇒20番に、あと今日は奈良高校戦の様にライン間で自由なプレーを魅せることが出来なかったIH30番⇒22番に、交代カードを切り左サイドの活性化に手を打ちます。

その後64分に右SB25番⇒3番に交代カードを切ると右サイドも活性化して、SB3番が次第に高い位置を取れる様になりだし、ビルドアップ時にはオーバーラップを見せる機会も増えました!

五條は1点リードという事もあり、守備重視でセットプレーやロングスローで追加点を取れれば御の字だったと思うのですが、奈良育英ゴール前にボールを放り込んでも前線に高さと強度が低いため、奈良育英の守備陣に対して攻撃の効果は低かったと思います。

以上の様な状況が続く中で試合も終盤を迎えて奈良育英はゴールを奪う必要があるため、選手交代以降どんどん前線に攻め上がるオープンな展開を見せる様になっていきます。

それに対して五條は奈良育英の仕掛けるオープンな展開に付き合わなくても良かったのですが、奈良育英がボールロストして五條にやってくるカウンターチャンスに、積極的にゴール前へ攻め上がっていたので、正直このままだとヤバいかも…と思って見ていました。

そして五條の失点したシーンを振り返ると77分台にセットプレーを得て、ボール保持して時間を使うのかと思ったのですが、工夫なくゴール前にロングボールを入れて奈良育英GKにキャッチされると、底からビルドアップに繋げられる嫌なシーンとなりました。

ここは五條の素早いネガトラ対応で踏ん張り敵陣で再びボールを奪い返したので、今度こそコーナー角へドリブルでボール運んで時間を使ってほしいと思いましたが、五條7番はゴール前にドリブルでボールを運び横パスを受けた8番のシュートは枠外に終わりました。

時間のない奈良育英は直ぐゴールキックからリスタートしますが、五條は再び自陣でボール奪い返すとまたまた奈良育英ゴール前にボールを運ぼうとしてしまいます。

奈良育英はこの五條ボールを簡単に奪い返してのロングカウンターを起点として、左サイドから途中交代で投入された切り札の奈良育英20番にボールが渡り、そのまま五條バイルエリアをドリブルで持ち込んで20番が放ったミドルシュートは、クロスバーに当てながらもゴールラインを割る執念を見せた起死回生となる同点ゴールを試合終了直前にブチ込みました!

五條にとって悔やまれるのは、この一連の攻防が77分台のセットプレーから79分の同点ゴールまでたった1分ちょっとの出来事だった事です…五條サイドからすればこのセットプレーから落ち着いてクロージングに持ち込めれば、逃げ切れた可能性が高く本当に勿体ないシーンとなりました。

そしてこのままゲームは後半終了して延長戦に突入していきます。

同点とされた五條はここまで交代カードを切って来なかったですが、後半終了間際に左サイドのSH8番⇒24番とSB2番⇒5番へ、延長前半にはセンターラインのIH6番⇒14番と9番⇒19番と疲れの見えた選手に対して交代カードを切ってきました。

延長戦ともなればリスクを回避する上で、ロングボールを蹴り合うオープンな展開になってしまうものの、延長前半に奈良育英は82分に右サイドから3番のグランダーのクロスを10番がダイレクトシュートで決まったか!と思うと五條GKの好セーブで止められ、更に延長後半の91分には奈良育英22番のドリブルからのカットインでミドルシュートを放ちますがクロスバーに阻まれました。

こうして奈良育英が押し気味に進めた延長戦でしたが、五條も負けておらず延長後半の93分に24番のミドルシュートを奈良育英GKが弾き、こぼれ球を18番が詰めてシュートするも奈良育英DFがシュートブロックで阻むという熱い展開の末、結局お互いゴールを奪えないまま延長戦も終了して第2試合もPK戦に突入しました。

PK戦では五條が2人目、3人目のキッカーがポストに当てて失敗してしまい、結局PK戦は4対2で前回王者の奈良育英が辛くも五條に競り勝ち決勝進出を果たしました!

【試合結果】

(スコア)
○奈良育英1(延長戦)1五條高校●

(PK戦)
育英 ○○○外○ = 4
五條 ○外外○ー = 2

(得点経過)
43分:五條⑩
79分:育英⑳

準決勝第1試合のKICK OFFが11時で第2試合の試合終了が16時と、5時間ぶっ続けの大熱戦を観戦して身体と頭はヘロヘロになりながらも、久しぶりの充実した日曜日にコロナ禍前に現地観戦していた日常を少し取り戻せた様で、そういう喜びも重なった準決勝でした。

あとがき

今年の準決勝は残った4校が4校だけに熱戦になるやろうな…と思っていたので、各校とも試合を80分ではなく100分を見据えたゲームプランを立ててくると思っていたら、本当に2試合とも100分ゲームとなりPK戦のおまけ付きという事で、奈良県もBest8以上になるとどこが勝ってもおかしくない均衡した大会に底上げ出来たなと思います。

10年ほど前までなら奈良育英と一条の決勝戦がメインイベントで準決勝までは前座試合の様な展開だっただけに本当に感慨深いです。

いよいよ決勝戦は昨年王者の奈良育英と一昨年王者の山辺の対決であり、今季の新人大会の決勝戦とも同じカードとなりました。

新人大会は延長戦の末ラストプレーで決勝ゴールを上げた奈良育英が1対0で優勝したんですが、今大会両校の準々決勝と準決勝の2試合を現地観戦した印象でいくと、山辺の方が対戦相手に対してゲームプランをしっかり落とし込んでくるので、奈良育英は正直厳しいんじゃないかな?と思っています。

更に山辺が決勝戦でプリンスリーグ関西2部の奈良県のラスボスとも言える奈良育英に勝てば、1回戦から県内強豪を5タテしての完全コンプリート出来るので、その快進撃も期待している自分がいます!

【山辺高校の勝ち上がり】
1回戦○3-1郡山(県1部10位)
2回戦○4-0法隆寺国際(県1部6位)
3回戦○2-1生駒(県1部1位)
準決勝△1-1畝傍(県1部2位)
決勝戦?奈良育英(プリンス2部7位)
どんなけ山辺はくじ運悪いのやら…

【新人大会決勝 観戦記】

決勝戦への応援コメントは下記の高校サッカードットコムまで!
結構コメント入っています。

それでは11月13日(日)の決勝戦
@橿原公苑陸上競技場13:05開始
決勝戦をお楽しみに!

全国高校サッカー選手権奈良大会

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