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エコーチェンバーの中身

 ふと思うのだけど、エコーチェンバー化してしまうのは、その環境が少しずつ作られると言うよりも、そう言う環境が自分に適していると何処かで自覚的になっているんじゃないのかな? と言う話。

 エコーチェンバーあちこちにありますよ。
 特にまぁ陰謀論ですけれど、陰謀論ってどれもこれも似ているんですよね。

 誰かが自分を攻撃していて、それは自分が真実を知っているから……って事なんだけれど。

 いやまぁそんなに人を殺しまくる激ヤバ組織が、そんな真実に目覚めている人を殺さないはずがないのに、なんで自分だけ助かっているって話になるのかは謎だが、そんな理屈は彼等にとっては不都合なので存在しないんですよね。

 仮にコロナワクチンが政府が人減らしの為に使っているとしたら、政府に従順な人間よりも、政府に反抗的な人間殺すだろうとか思うのだけど、まぁそう言う事も彼等は「自分が特別な人間だから」と言う理屈で回避する。

 陰謀論って要は、特別ではない自分に耐えられない事から端を発していて、自分の苦痛は自分が特別な存在だからと言う位置づけにする事によって完成される。

 そう言う意味でいえば、自分のお気持ちを社会の構造の所為にしているなんちゃって社会学もまぁ、陰謀論まであと一歩と言う感じではある。

 自分が特別だから他は許されないと言う理屈を持つ人たちは、陰謀論に限らず沢山いて、そう言う人たちは漏れなくエコーチェンバー化している。

 そうなのだ、自分たちの存在の承認のためにその証拠が溢れる環境を自ら欲しているのだ。

 もっと言えば、その証拠が現実的であることも、科学的とか統計学的根拠があることも、特に気にしない。むしろ、そう言う根拠に結び着いた話は脆弱で安心出来ないので、自分たち固有の理屈を作り出すのだ。

 分かりやすいところで言えば、パルワールドが「ポケモンのパクリだ」と吹き上がった時に見られる。
 自分はポケモンを特別に愛している人間なんだと言う自己イメージのために、ポケモンの"光の戦士"(FFの文脈ではなくQアノンの文脈)だと思い込んでいる人たちの話だ。
 任天堂は大量にやって来る、「ポケモンの権利侵害を許すな」と言う抗議に対して、「権利侵害に対してはキッチリやってるからね」と言う表明を出した。だが、彼等はそれを「やったぜ、任天堂が立ち上がったぜ」と勘違いしていたのだ。

 それらは大人のタテマエ的なところがあるけれどね。
 実際問題ポケモンのパクリ疑惑は発売の一年以上前から噂になっていたし、過激に吹き上がっていた人たちがいた。
 そしてあれから半年ほど経っても特に法的な動きを見ていない。

 任天堂の法務部とあろう存在が、真っ正面から権利侵害しているゲームの発売を許すとは思えないし、パルワールドサイドだって任天堂がから何らかのアクションがあったとして、大幅な内容変更もなしにリリースして半年運営を続けるとは思えない。

 結局、(光の戦士たる)彼等は彼等の中で、勝利のストーリーに酔いしれていただけなのだ。

 こんな事例は沢山ある。
 反AI界隈が、文化庁の考え方(PDF)に対して、かなり自分勝手な解釈を繰り広げて、そして彼等の内部ではそれが正しい考えとして流通しているのだ。

 反AI派がAI絵師とやり玉に挙げた人が、証拠を出しても謝罪することはなかったし、草津町の一件で吹き上がった人たちはあれが冤罪だと判明した後も謝罪していない。

 それを認めることは、自分たちが必死に作り上げたエコーチェンバーを壊すことになるから絶対に出来ない相談なのだ。

 陰謀論とエコーチェンバー化した運動の間には、どれほどの差があるのかは難しい。

 昆虫食問題の時に、反昆虫食の人たちの中に、「レプリティアンが自分たちの食事を少しずつ混ぜていこうとしている」なんて陰謀論も出てきている。
 最初は公金チューチュースキームだとか、政治の問題にしようとしていたけれど、多分、こういう(陰謀論的)方向に絡め取っていった方が、反論に対して"強く"出られるのかもしれない。

 そう言う意味でいえば、エコーチェンバーと言うのは、陰謀論のゲートウェイドラッグのようなものだろう。

 普通に暮らしていると、こういうものは縁遠いもの、自分には関係ない頭のおかしな人の話……と思いがちだが、世の中には想像以上にそう言う人たちが存在している。
 「自分(たち)に言い訳が立てば、現実がどうであるとか、人が何を思うか」に無関心な人間は身近にいるものだ。

 こういうのは、例えばそこいらの高校生が、何かやらかして怒られても、仲間内であれやこれや悪態吐いて納得する――みたいなのから端を発するまであるだろう。

 そう言う意味でいえば、陰謀論にハマるのは人間の宿痾のようなモノなのかも知れないし、誰だってそうなり得る可能性があるのだ。

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