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【一般】痛いときは冷やすのか温めるのか:新聞記事「施術の現場より6」

 来院された患者からの質問で意外と多いのが、痛みがある時に冷やせばいいのか温めればいいのか分からないことだ。普通に考えれば冷やすという選択肢になると思うが、インターネットなどで検索すると温めるという選択肢も出てくる。柔道整復師の私の立場からすればどちらも正しく間違いである。当たり前の事だが、その痛みの種類や患部の状況により処置が変わるため、一概にどちらが正解とはならないからだ。

 では、どのような痛みの時に冷やし、また温めればいいのか。捻挫や肉離れ、打撲などのケガの場合は冷やすのが正解であろう。前の記事にもしてあるが、応急処置のアイシングがこれに該当する。ケガをすると炎症が起き、腫れと熱が発生するがこの炎症がなれけばケガの回復はしない。炎症はケガの回復の重要な要素なのだが、熱はなるべく取っておきたい。スポーツ少年団の指導者の中には、アイシングすることでケガの回復が遅れるから「冷やすな温めろ」と言っている方もいるようだが・・・。当院では、受傷直後(急性期)は当然冷やすが、ケガの治癒が促進する回復期には筋肉の緊張を取り血管を拡張させ血流を上げるために温熱を使用する。これは施術者目線の話なので、ケガをした時は冷やすで間違いない。

 一方、肩こりなどの筋肉の凝りに起因する場合は積極的に温めるとよい。凝りは筋疲労の一種であり、筋肉が硬く凝り固まった状態を指す。当然ながら筋肉内の血管は圧迫され血流量が低下し、痛みとして現れる。温熱による血流の改善は期待できるし、ストレッチ等を指導されるのもそのためである。肩こりに冷湿布飲み薬が効果が薄いのは、炎症がないからである。これは炎症が起きなくては薬を作用させるための対象となる物質が患部にないためであり、薬は痛みを一時的に麻痺させるものである。飲むことで患部の治癒が促進されるわけではないことは意外と知らない方が多い。スポーツ中に発生する明らかなケガに関しては一般の方でも判断できると思うのでRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)、もしくはPOLICE(保護・適切な負荷・冷却・圧迫・挙上)を実践してもらうことが重要であるが、そうでない場合はなかなか判断に困ると思う。そのような時は無理をせず医療機関やかかりつけの接(整)骨院に確認した方が間違いはない。入浴時に痛みが強くなるなら冷やす、和らぐなら温めるという判断の仕方もあるので参考にして頂きたい。



後記:現役薬剤師にも確認しておりますが、冷湿布は冷たく感じるだけであり、物理的に患部を冷却する事は不可能であり。しかし、患者様だけではなく柔整師の中にも冷湿布は冷える、つまりアイシングの道具として使えると勘違いしている人も少なくないです。氷バケツなど色々なアイシングの仕方もありますが、凍傷には十分気を付けたほうがいいと思います。コールドスプレーによる凍傷も結構あります。自分も、開業1年目に足関節捻挫のアイシングをし過ぎてやらかしたことが、教訓となっています。経験も大切ですが、患者様の身体を傷をつけることは許されない為、最新の注意が必要だなと、記事を書きながら思いました。冷湿布のところを補足しますと、ケガをすると脳から発痛物質(プロスタグランジン等:PG)が放出されます。このPGが患部にある受容体(センサーのようなもの)に付着し痛みが発生しますが、鎮痛剤はこのPGに膜のようなフィルターを張り、そのため受容体と結合しずらくなるため結果として痛みが感じずらくなる=和らぐという効果になります。なので、患部の修復効果は薬にはありません。そういえば、患部の修復効果といえばグルコサミンとか・・・アレについては記事にしてなかったです(涙

 

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