見出し画像

美少年探偵団/美少年シリーズについて

美少年探偵団団則
1、美しくあること。
2、少年であること。
3、探偵であること。

画像1

1 概要(はじめに)


 アニメの放送日が決定したのでそれまでに全巻読み返しておこう、そのついでにこのシリーズの記事はここではまだ書いてなかったし何か書いてみようなどと思いながら作成した、作品紹介風の何かになります。
 2021年の2〜3月あたりにじわじわと書き上げたものですので、それ以降の情報は含まれておりません。

 
 ★小説
 小説作者:西尾維新
 小説挿画:キナコ
 小説出版:講談社タイガ(全11巻、完結済)
 →スペシャル新作『モルグ街の美少年』2021 5/14発売決定

 ★漫画
 漫画作者:小田すずか
 漫画連載:ARIA→少年マガジンエッジ(講談社)
 単行本:現5巻(休止中、現在のところ再開の続報はなし)
 
 ★アニメ
 アニメーション制作:シャフト
 放送:2021.4.10 より毎週土曜 深夜2:00~
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネット(『ANiMAZiNG!!!』枠)にて放送スタート


 小説において、『美少年探偵団』とは第1巻のタイトルであり(正確には、『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』)、それに続く一連の作品群の呼称が美少年シリーズである。一方で、メディアミックスとなる漫画やアニメでは、シリーズひとまとめで『美少年探偵団』と括られている。


2 あらすじ


 美少年探偵団。それは、指輪学園中等部にて秘密裏に活動している、謎の集団。校内のトラブルを非公式・非公開・非営利に解決する自治組織を謳いつつ、ほぼ全てのトラブルの元凶であるとも言われ──依頼人のほうに守秘義務が課され、具体的な活動内容も構成メンバーも不明とされている。
 そんな噂話を小耳に挟む中学二年生の瞳島眉美は、ある日の放課後、校舎の屋上で、いつもの、あるいはこれで最後となる日課を送っていたところ、見知らぬ美少年と衝撃的な邂逅を果たす。
 訳もわからぬまま、彼に連れられて足を運んだ先は、美少年探偵団の事務所であるという、大胆に改造された美術室だった。
 困惑と驚愕の果てに、とある逆鱗に触れられ、やけっぱちとなった眉美は、室内に居座る合計5人の美少年達の前で、解決して欲しい依頼内容を口にする。
「──わたし、星を探しているの」
 十年前からずっと。




3 主な登場人物

 
双頭院学(そうとういん・まなぶ)

水色髪の小柄な美少年。
私立指輪学園中等部において名の通らない謎の人物だが、学園で名高い美少年達を率いる(?)美少年探偵団の団長。通称・美学のマナブ

袋井満(ふくろい・みちる)

赤髪、長身の美少年。
番長の異名を持ち、校外にまでその名を轟かす不良生徒。一方で、美少年探偵団のメンバーに対し超絶美味の食べ物を振る舞う、料理人としての顔を持つ、通称・美食のミチル

咲口長広(さきぐち・ながひろ)

銀髪、長髪の美少年。
聴衆の心をつかむ演説の名手として、3年度連続で指輪学園の生徒会長を務めている。美少年探偵団では副団長としてリーダーを補佐する、通称・美声のナガヒロ

足利飆太(あしかが・ひょうた)

黄髪、跳ね毛の美少年。
天使長と称されるほど整った顔立ちをした、陸上部のエース。大胆に改造されたショートパンツでレイヨウのごとき脚部を常に露出し、その姿を見た学園中の女子生徒に黒ストを履かせた伝説を持つ、通称・美脚のヒョータ

指輪創作(ゆびわ・そうさく)

黒髪、短髪の美少年。
指輪学園の経営母体である指輪財団の後継者、どころか既に財団の運営に携わっている、事実上の理事長と言える存在。美少年探偵団の中では、器用な手先で絵画や彫刻など様々な芸術品を生み出す、通称・美術のソーサク

瞳島眉美(どうじま・まゆみ)

私立指輪学園中等部二年生の少女。
本人曰く、根暗で、熱しやすく冷めやすい性格で、“目”に激しいコンプレックスを抱く。
美形を嫌っている。



4 個人的に感じた特徴・魅力など

 
 この項では、「『美少年探偵団』、及び美少年シリーズってどんな作品なんだろう?」というのを自分なりに探っていく。自分なりに、すなわち乱雑に。ネタバレにはなるべく配慮したつもりだが、いくつかシリーズの重要なコンセプトに触れているので、もしもシリーズ未読のかたが迷い込んでいらっしゃるなら注意されたし。

 
 まず、第1巻の(公式の)あらすじを見たところ、爽快青春ミステリーとある。その通り、作品のジャンルを分類するなら、ミステリーになるのだろう。
 ミステリー──「謎があって、解決される」というのは、あらゆる西尾維新作品の定石であり、美少年シリーズもその例に漏れない。ただ、同作者の忘却探偵シリーズなどと比較すると、こちらはやや破天荒というか、あまり真面目にミステリしているとは言い難い。それは世界観のフィクションレベルが高いというのもあるし、謎にも解決にも「美しさ」を重んじる、探偵団の性質にも拠っている。あるいは、完璧から程遠い少年らしさと言えようか(作中で謎解きに向いていない探偵団と称されるくらいである)。美少年探偵団にとって謎解きとは青春であり、その点に関しては、謎を解くことを趣味や興味ではなく仕事として対処する忘却探偵シリーズの掟上今日子さんとは好対照である(独立した大人の探偵と、複数の少年達による探偵団とで対になっている)。

 そもそも、コミカライズ版での原作者あとがきによると、美少年探偵団は忘却探偵シリーズから派生して生まれたという経緯があるそうだ(あちらのシリーズの語り部・隠館厄介が依頼する探偵リストに美少年探偵団が存在していたらしい)。派生しているだけあって、この2つのシリーズは随分と色合いが異なる印象を受ける。例えば美少年シリーズに今日子さんが存在しても違和感はないけれど、逆に忘却探偵シリーズに美少年探偵団が存在するイメージは湧かない。

 美少年シリーズのコンセプトのひとつとして、団体行動というものがある。作者をして、「僕が書く小説の登場人物としては非常に珍しい、団体行動ができる人達」と言わしめる美少年探偵団であるが(西尾維新作品は基本的に少人数で物語が進行しがちで、5人や6人もの集団が同時に居合わせ、行動すること自体が珍しい)、そこには西尾維新作品ならではの人間観、チーム観が伺える。

 例えば、作者の代表作である〈物語〉シリーズでは、メディア展開などでヒロインズが同時に描かれることが多いが、しかし、彼女達は決して仲良し集団というわけではない──そもそも集団ですらない。仲が良いのなんてごくひと握りで、大抵の場合、接点すら存在しない。主人公の阿良々木暦といった「間に立つ者」を通して関係が生まれることはあるが、間違っても、彼女達は一緒にオープニングソングを歌ったりするような間柄ではないのである(ちなみに、アプリゲームで一度歌った)。

 そして、その点に関して言えば、美少年探偵団も大差ない。
 探偵団を構成する5人の少年は、日常での学校生活において、基本的に没交渉な関係にある。不仲でもなく、無関係──無関係と言えないのは、敵対している番長と生徒会長の2人くらいである(この2人が、唯一の不仲と言えるか)。
 そこにはメンバー達の人心を把握し、掌握する団長の存在が欠かせないところだが、個人間において決して仲良しではない彼らが、時として抜群のチームワークを披露する。そんなところが、団体としての美少年探偵団の魅力であるように感じられる。

 それから、現実における集団とは、それを維持するために、個人の個性が埋没しがち、蔑ろにされがちな傾向にあるが、美少年探偵団は、その逆を行く。個人が個性を全開に発揮した上で、チームが成り立っている。だからこそ、毎度とんでもない方向に進みがちではあるのだが。

 チームに属することは、必ずしも自分を消すことを意味しない。
 第1巻より語り部を務める瞳島眉美は、10年前に見た星を、10年間探し続けてきた──それゆえの、誰とも共有できない、誰にも理解されない類の孤独を抱える少女である。そんな彼女の、夢に囚われ、がんじがらめになっていた心は探偵団の皆によってほどかれて、彼らと打ち解けることで孤独もまた解消されていくのだが、巻を重ね、自分らしく振る舞える居場所を見つけた彼女がどんな風に変わってゆくかと言えば、素の性格(の悪さ)がどんどん露呈していく。善性が育まれていく面も大いにあるのだが、それ以上に驚きの変貌を遂げる。
 それは、いわゆる「ありのままの自分」といった、美談のようなものが必ずしも良いものとは限らない(むしろ逆の場合が多い)好例であると言えるのだが⋯⋯、だけど、抑圧されてきた本来の性格を、包み隠さず表に出せる場というのはどこかで必要であり、彼女のそうした一面は、欠かせない個性として、清濁併せ呑むように描かれている。ほら、欠点は萌えって言うしね(言ってたっけ?)。

 
 今更だが、本シリーズは、5人の少年と、1人の少女をメインに据えた物語である。それだけを説明すれば、多数の男子がひとりの女子に迫る類のラブコメとして捉えられかねないのだが、しかし本シリーズで特筆すべきなのは、それに似たシチュエーションを展開しながらも、決して恋愛ものではないという点である。少なくとも主要人物間において、そのような感情は一切飛び交わない。彼らはあくまで「仲間」として描かれる。美少年探偵団にあるのは、団則であり、団結である。

 西尾維新作品において、恋愛というのは、それそのものがメインテーマとなることは稀であるけれど(戯言シリーズや〈物語〉シリーズでは、恋愛感情自体はよく描かれているものの、これらのシリーズを「恋愛もの」として括るのはちょっと違うよなって話。ジャンルとしては、「ミステリー」や「ジュブナイル」が先に来ると思う)、括弧書きの通り、副次的に付随しがちなものではある。そう考えると、美少年シリーズは西尾維新作品のシリーズものとしてかなり新機軸な部分を持ち併せていると言うことができる。恋愛のほかに、××も一切ないし。
 そうそう、恋愛ものではないけれど、かと言って、男性キャラクター同士の関係の掘り下げを主眼に据えているわけでもない。全くどろどろしていない。だからそっちの層(?)の需要はあまり満たさないんじゃないかなと思う⋯⋯。

 
 話が少し逸れたが、西尾維新作品のシリーズものにおける共通項として、少年少女が大人になることが挙げられるのだが、本シリーズでは、少年であろうとする少年達が描かれるというのも大きな特徴か。語り部の瞳島眉美にとっても、それは切実な問題であり。大人のキャラクターも第1巻から登場するが、そんな少年と大人の対立、あるいは両立という点にも注目して読んでみるのも一興である。


 小説に関して言えば、文章はとても読みやすい。読書入門にも勧められそうなくらい、西尾維新作品の中でも、かなり上位に入る読みやすさだと思う。西尾作品は、愛読者であるか否かにかかわらず、文章が読みやすいという読者と、文章が読みづらいという読者に分かれる上、私自身は西尾作品なら基本的に何でも読みやすいと思っている読者なので、信用に足る発言にはならないが⋯⋯。ちなみに珍しくやや読みづらいと感じたのは伝説シリーズで、その理由の多くを占めるのが、本が(物理的に)重いからである。なら美少年シリーズは軽いから読みやすいと感じている可能性も否定できないが(1巻あたりのページ数は西尾作品でも断トツで少ない。薄い!)。
 双頭院学の台詞を使用させていただくなら、私には学がないので、あまり文章について言及できることはないのだが、やや現代的な文体や語彙を取り入れているのと、「0 まえがき」「1 目の前の落とし物」「2 放課後の美術室」といった風に、節(でいいのかな?)をもって文章が小気味よく区切られているのが、読みやすさを感じる要因だと思う。

 
 ⋯⋯と、まあ色々述べたけれど、「結局、美少年シリーズってどんな作品なの?」と問われれば、尖ったキャラクター達が楽しげなやりとりをしながら、ひとつの事件に向き合っていく過程で、美しさとは何かとか、美しい心や行為、生きかたとはどのようなものなのかとか、ときにはそんなことを考えたりしながらも、最後はちょっと気持ちよく着地する、そんな感じの話であると回答したい。
 軽やかで心地良く、美しい。



5 既刊一覧

 
(一枚ずつ写真を撮っても良かったのだが、例によってそういう素養が絶望的に欠乏しているため、その代わりに最近覚えた技術を活用しAmazonリンクを貼ることにした)

 各巻についての、軽い紹介のようなもの。内容には踏み込まない。

 ちなみに、各タイトルは、江戸川乱歩作品のタイトルを捩ったものになっている。


美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星

 記念すべきシリーズ第1弾。
 キャッチコピーは、俺達に解けないハートと謎はない!

 タイトルの元ネタは、『少年探偵団』と『暗黒星』。『少年探偵団』に『美』を添えるといった、非常に嵌まっているタイトルからの、乙女ゲーム風(?)なサブタイトル。悪ふざけな感もありつつ、実はかなり面白い意味を含んでいることは、読めばきっとおわかりいただけるはず。
 
 ⋯⋯ところで、公式ホームページ等に記載されてある、「あなたは誰がお好みですか?」というフレーズは、シリーズの方向性を把握してから振り返ると、中々に異色に映る。


ぺてん師と空気男と美少年


 シリーズ第2弾。
 キャッチコピーは、俺達を、騙せるもんなら好きにしな。表紙もコピーも、何だか妙にそっち系な感じだが、誤解のないように言っておくと、勿論そういう話ではなく。全国の中学生にお薦めできる、非常に健全なシリーズである。⋯⋯ああでも、本作に関して言えば、別の意味で年齢制限が問われる要素があるな。

 タイトルの元ネタは、『ぺてん師と空気男』。五七五調で、語感が良い。


屋根裏の美少年

 シリーズ第3弾。
 キャッチコピーは、謎解きが、ぼくらの絆を強くする。なんか一人称が変わった。コピーは基本的に作中の台詞ではなく、誰の言葉なのかを想像してみるのも面白いかもしれない。

 タイトルの元ネタは、『屋根裏の散歩者』。
 ⋯⋯美しさという観点においては、真っ先に挙げたい一冊である。


押絵と旅する美少年

 シリーズ第4弾。
 キャッチコピーは、放課後のミステリこそが、青春だ! ⋯⋯五七五調で青春と言えば〈物語〉シリーズ感が。

 タイトルの元ネタは、『押絵と旅する男』。
 某人物が本格的にはっちゃけ始めるのはこの辺りからかな。


パノラマ島美談

 シリーズ第5弾。
 キャッチコピーは、俺達の旅には謎が必需品。俺に戻った。

 タイトルの元ネタは、『パノラマ島奇談(譚)』。乱歩作品に「美少年」を(強引に)代入するのが基本である本シリーズにおける例外的立ち位置。しかし、だからこそ全巻でも屈指の秀逸なタイトルになっているように思う。
 作品自体の人気もトップレベルみたい。


D坂の美少年

 シリーズ第6弾。
 キャッチコピーは、君だけの、清き一票が欲しいんだ。どんな話なのかわかりやすい。

 タイトルの元ネタは、『D坂の殺人事件』。
 個人的に一番好きなエピソードである。


美少年椅子

 シリーズ第7弾。
 キャッチコピーは、敵同士。噓があるから刺激的。本巻にも登場する敵(?)キャラクター・札槻噓(ふだつきライ)は、「嘘」ではなく「噓」である点に注意。私は足利飆太の名前をよく間違えて書いていたが⋯⋯。

 タイトルの元ネタは、『人間椅子』。


緑衣の美少年

 シリーズ第8弾。
 キャッチコピーは、青春は、NGテイクがあってこそ!

 タイトルの元ネタは、『緑衣の鬼』。それから、本編で大きく取り上げられている童話『裸の王様』とも対応した題となっている。
 裸になるのは、身か心か。


美少年M

 シリーズ第9弾。
 キャッチコピーは、観せてあげる。美しいって、どういうことか。五七五からやや大きく外れているが、なぜかこの巻だけ、作中のフレーズの引用となっている。

 タイトルの元ネタは、『電人M』。Mとは何を、あるいは誰を、指し示しているのか。


美少年蜥蜴【光編】

 シリーズ第10弾。
 キャッチコピーは、待っていて。今度はわたしが、見つけるよ。ここまで来たかと思わされる。

 タイトルの元ネタは、『黒蜥蜴』。それに加え、「光“と影”」とも掛かっていると思われる。光(美少年)と影。


美少年蜥蜴【影編】

 シリーズ第11弾。そして最終巻。
 キャッチコピーは、謎を解き、きみが笑えば大団円だ! 最早このフレーズだけで感無量である。

 『ネコソギラジカル(上)(中)(下)』然り、『零崎人識の人間関係』四部作然り、『終物語(上)(中)(下)』然り(あるいは『死物語(上)(下)』然り)、西尾維新作品の最終巻は同タイトルの分冊になる法則、もとい、例外のほうが多い規則(そもそも『終物語』はファイナルシーズンの最終作ではない)。
 
 美少年達は、有終の美を飾れるのか。美しいジュブナイルとして、物語を締め括れるのか。


モルグ街の美少年

 アニメ第2弾PVの発表と共に突然予告されたスペシャル新作。
 最終巻の後に新作が刊行されることは、西尾維新作品では度々あること。〈物語〉シリーズや『十二大戦対十二大戦』のように、アニメ化記念、アニメの放送に合わせた刊行という形になる。働き過ぎだ。

 タイトルの元ネタは、『モルグ街の殺人』。シリーズで唯一、江戸川乱歩のペンネームの元ネタとなるエドガー・アラン・ポーの作品を捩っていることは、果たして何を意味するのか。続報待たれる。


(その他)

混物語

 〈物語〉シリーズの主人公・阿良々木暦が、他シリーズのヒロイン達と時空を超えて邂逅を遂げるクロスオーバー短編集。

 美少年シリーズからは、瞳島眉美(『まゆみレッドアイ』)と、それからヒロインではないが札槻噓(『らいルーレット』)が登場する。前者は劇場版『傷物語』の来場者特典として配布されたもので、後者は単行本書き下ろし新作となる。
 『まゆみレッドアイ』は、他者視点での眉美ちゃんが見られるレアな作品なので、ファンは必読。ちなみに、書き下ろされた時点では、美少年シリーズは『ぺてん師と空気男と美少年』までしか刊行されていなかった。時期が時期ならまた違った感じになっていたかもしれない。



6 メディアミックス


 
 こちらは小田すずか氏が手掛ける漫画版。当初は『ARIA』で連載されていたが、雑誌の休刊に伴い、『少年マガジンエッジ』へ移籍した。

 美少年探偵団の名に負けない美麗な作画で、クオリティは十全。
 原作との違いとしては、一部のキャラクターのデザインが大胆に改変されている点が挙げられる。また、女性誌に掲載されていたのもあってか、キャラクターのリアクションがやや少女漫画チックになっている印象。それ以外は概ね原作に忠実なコミカライズである。

 全5巻で、小説の第4巻『押絵と旅する美少年』までのエピソードを描き終えている。ただし、同巻収録の短編『人間飆』は描かれておらず、その代わりなのか、小説第5巻『パノラマ島美談』の短編『白髪美』が漫画版5巻に収録されている。

 第5巻収録分を最後に、連載はストップしている(その後一年以上音沙汰がなく、そのまま完結となる可能性も低くない)。
 ⋯⋯ひょっとして、『パノラマ島美談』が極めて漫画化、ビジュアル化の難しい作品であることが、休止の理由なんじゃないかとか、素人感覚でそんなことを考えてしまったりもするが。
 もとより、地の文でボケて会話文で突っ込みを入れるような(逆ではない。逆もあるけど)、小説ならではの技法がふんだんに取り込まれた作品なので、メディアミックスは総じて安易ではないだろう。
 
 ──そんな作品が、どのようにアニメ化されるのかといった点にも期待がかかる。もっとも、制作会社は過去に〈物語〉シリーズを手掛けているシャフトなので、シリーズが違うとは言え、西尾維新作品をアニメにする手法は熟知しているだろうけれど。

 ちなみに、初めてアニメ化が発表されたのは、小説最終巻『美少年蜥蜴【影編】』の帯(2019年12月下旬)でのことだが、以降長らく、続報が全くなく、シリーズのファンはやきもきしていたとかしていないとか。

 そしてこの間PVが公開された。
 我々は歓喜した。



7 総括(おわりに)

  

 色々書きましたが大体こんな心境です。
 ありがとうございました。


                (始)
(「『モルグ街の美少年』感想」に続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?