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【健康経営度調査2021直前セミナー!健康経営の深化に向けて持つべき視点】MS&ADインターリスク総研 森本真弘部長をお招きして その3

2020年10月6日、MS&ADインターリスク総研の森本真弘部長をお招きして弊社主催のセミナーを開催しました。森本氏が理事を務める一般社団法人 社会的健康戦略研究所へは、私(吉田)も事業者ユニットの会員として入会させていただいております。

前回より続く

MSAD森本様講演スライド202010-22

健康経営は人、人財に投資をするものす。その投資対象である人財について少し見ていきたいと思います。VUCAの時代という言葉をよく耳にします。あらゆるものを取り巻く環境が複雑化してしまって想定外のことが次々に起こります。なかなか将来の予測が難しい時代、不確実な時代と言われています。そんな時代に企業はどういった人財を求めているのかということで、ここに並んでいるのは色々な企業の採用ホームページから求める人財像を引っ張ってきてみました。

多少意図的に引っ張ってきてはいるものの、やはり共通するワードとして、「革新」「創造」「挑戦」といった言葉が多いと感じています。従来の延長線ではない、新しい可能性に挑んで新たな価値を生み出してくれる、そんなチャレンジングな人財を求めていることが読み取れると思います。新しく採用する人財だけではなく、既存の人財にもこういった能力・素養を発揮してもらいたいと思っているのは間違いないと思います。しかし、こういった素養を存分に発揮するには、単に健康診断の数値がいいというレベルの健康ではなく、先進的企業の例にみられるような、いきいきと内側から活力が湧き上がってくる、そんな状態が必要だと思います。


MSAD森本様講演スライド202010-23

健康経営を評する言葉として「マイナスをゼロに持っていく取り組みではなく、プラスをさらに大きなプラスにする取り組み、それが健康経営だ」とよく耳にします。まさにいきいき・ワクワクした状態。単に健康なだけではなくて、いきいき・ワクワク、さらには、幸せを感じられる、そんな社員が増えてきてこそ、活気に満ちた雰囲気の良い会社になるのだと思いますし、それが実現してこそ、解決が難しかった経営課題も解決し、企業として目指している姿の実現に近づいていけるのだと思います。


MSAD森本様講演スライド202010-24

一つメッセージを紹介したいと思います。東急さんが「健康経営に取り組むDNA」とおっしゃっている五島慶太さんの言葉になります。このメッセージでは、何事も土台、ベースには健康。ここでの健康は身体的要素が強いと思いますけれども、ベース、土台には健康が必要不可欠だと仰っておられます。この点は皆さん異論のないところかと思います。

次に続くフレーズはもしかすると東急さんと私で解釈が違っているかもしれません。私の解釈は、まず健康だが、健康だけでは不十分な面があり、そこに熱と誠が加わってこないと成功はおぼつかないと仰っていると受け取っています。「熱」と「誠」が何を指してるか難しい部分はありますが、ここでの「熱」が今お話をしてきた、いきいき・ワクワクと活力が湧き上がってくる状態を指しているのではないかと思います。健康経営においてはこの「熱」をつくり出していく取り組みも求められていると考えています。


MSAD森本様講演スライド202010-25

経済産業省の資料を見ていますと、かつてはあまりなかったが最近目に留まると感じる表記がございます。もしかすると、私が従来見逃していただけかもしれませんが、この点線の部分です。スライドの上半分は冒頭でご紹介をした健康経営の概念を説明したスライドの抜粋です。スライドの下半分は健康投資管理会計ガイドラインの抜粋です。そのいずれにもWHOが唱えている健康の定義が付記されています。


MSAD森本様講演スライド202010-26

WHOによる健康の定義、皆さんご存知かもしれませんが、改めて見てみます。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態」それをもって健康と言っています。肉体的にも精神的にも満たされた状態は、皆さんイメージしやすいと思うんですね。経済産業省はそんなことを言いたくて、わざわざ資料のあちこちにWHOの定義を載せているのではないだろうと思います。

つまり、この社会的にも満たされた状態、社会的健康も忘れないでねと言いたくて載せているんだろうと受け取っています。では、このイメージしにくい、「社会的健康」って何を指しているんだろうかということです。スライドの真ん中部分に厚生労働省のホームページに掲載されていた文言を記しました。皆さんそれぞれにこの文言を読み、自分に当てはめて考えていただきたいと思っています。例えば、皆さんがここに書いてあるような社会的健康を満たされていない状態にあったとします。その状態で「体にいいから運動しなさい」とか、「食事に気をつけなさい」といった働きかけを受けたとして、取り組む意欲が湧いてくるでしょう。あるいは体がピンピン、これ以上ないぐらい元気な状態にあるとします。ですが、この社会的健康が満たされず、不十分な状態に置かれていた場合、先ほどお話をした、いきいき・ワクワクと内側から活力が湧き上がってくる状態になれるでしょうか。

つまり、健康を構成する要素はここに示した3つですが、社会的健康は単なる一構成要素ではなくて、大きな「健康」を支える土台になってるのではないか。さらにいうと、ご自身に当てはめて考えていただいたケースを改めて思い出していただきたいんですが、先ほどお話をした「熱」をつくり出すときに、この社会的健康というものが大きな役割を果たしていることに気付いていただけると思います。


MSAD森本様講演スライド202010-27

もう一枚、別のスライドを見てください。これも経済産業省がよく使っているスライドになります。男性が年齢とともに衰えていく状態を示した資料で、東大の秋山弘子名誉教授がまとめられものです。男性の7割はこの赤い線のとおり。年齢とともに衰えていく。不幸にも早くから健康を害して、入院・寝たきりになる方も2割ぐらいいらっしゃる。

しかし、一方で、この緑色の線のように、1割ぐらいの方は80歳を超えても何歳になっても元気でピンピンしている。そんなスーパーおじいちゃんもいると仰っています。このスーパーおじいちゃんに共通している要素について、経済産業省で長く健康経営を牽引してこられた江崎さんがお話しされていたのは「常に社会との接点を持ち続けてきていること」「接点を持っているだけではなく、自分は役に立っているんだ」という意識を持ち続けていることだそうです。先ほどお話をした「社会的健康」がスーパーおじいちゃんを支えている大きな要素なのだと思います。


MSAD森本様講演スライド202010-28

もう一度VUCAの時代へ話を戻します。VUCAの時代を乗り切るために企業が求めた、注目したもう一つの要素に「ダイバーシティ(多様性)」があります。なかなか先が見えない、解が見つからないという状況で、いろいろな価値観、多様性を取り入れることで、その中から解が見つけ出せるのではないか。あるいは、いろいろな価値観、多様性が混ざり合うことによって、イノベーションを生み出す化学反応が期待できるのではないかと「多様性」に注目をしたわけです。

うまく化学反応が起こればいいですが、多様な価値観、考え方というのは時には衝突を起こします。衝突を起こして疎外感を感じる人がいるかもしれない。そこで、同時に着目されたのが「心理的安全性」だったと思います。最近はこの心理的安全性を高めていく取り組みが非常に重要だと言われていますが、先ほどの「社会的健康」を高めていく取り組みというのは、実はこの心理的安全性を高めていく取組みと非常にシンクロする取組みになるのではないかと、そんな風に思います。


MSAD森本様講演スライド202010-29

先ほど見ていただいた図をもう一度見ていただきます。健康経営はプラスをさらに大きなプラスにして、いきいき・ワクワク、しあわせを演出していく、創り出していく取組みだというお話をしました。その「熱」をつくり出していくには、社会的健康に着目する必要もある。その社会的健康に目を向けたときにはスライドの右側に点線で囲った要素を意識した取り組みが必要になってくると思います。

先ほど紹介をした、コミュニケーションを重要な項目と捉える企業が多いというアンケート結果は、まさにここに目が向いてる一つの証左ではないかと思っています。「健康」というと個人の問題なので企業があまり介入すべきじゃないといった論調も聞こえたりしますけれども、社会的健康にまで目を向けると、やはり個人個人の力ではどうしようもない部分、組織・会社として取り組まないと実現しづらい要素もあることに気付いていただけると思います。

難しい話になってきたと思われてるかもしれませんが、あんまり難しく考える必要はありません。スライドにも例として挙げていますが、産業医科大の森先生を皆さんご存知ですよね。健康経営の世界では重鎮にあたる森先生が面白いお話をしていました。ある企業でエンゲージメントを高めたい。そのためにお昼休みにみんなで広場に集まって体操を始めてみたそうです。しばらく取組みを続けた上でエンゲージメントを計測したところ、有意に高まってる効果が得られた。「よしこれはいいことだ!」と、各職場それぞれでお昼休みに体操することにしたそうです。

ところが、しばらく経ってエンゲージメント計測してみると、あれれ?高まってないじゃんとの結果になったそうです。森先生は「もう少し深く検証する必要がある」と仰っていますが、体操すること自体に効果があったのではなく、お昼休みにみんなでぞろぞろと広場に集まってくる。そして集まってくる途中に、たわいもない会話をする、そこに効果があったのではないかと仰っていました。社会的健康を高める一つの取り組みになっていたといえるかもしれません。このような感じであまり難しく考えずに取り組んでいただけるといいかなと思っています。

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