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無茶振り、ハプニングだらけの旅行が最高に楽しかった件:竹田城跡地編(前編)#旅行

母との旅行で普通だった記憶はない。毎度、必ずハプニングが起きる。母の旅行計画に抜本的問題があるのは間違いない。母は元夫(私の生物学上の父)との長期に渡る離婚訴訟で無駄にした人生を取り戻すべく、苗字が変わった途端、日本全国全ての都道府県を制覇する計画を立てた。そのことに対して、なんら文句もないし、基本的に母の一人旅なので好きにしたら良いと思っている。

私に人生があるように、母にも人生があり、統計学的にも生物学的にも私より母は先に死ぬのだから、残りの人生は楽しんでもらいたい。たまに私の都合が合う時は旅行に同行する。同行するときは「今回は普通であれ」と願うが、その願いは一度も叶ったことはない。

まず母の旅行計画は突然だ。1ヶ月前に言われるのはまともな方で、今回の旅は「今週末旅行に行こうと思うけど一緒に行く?」と言われた。たまたま土日に予定もなかったので、「別にいいけど」と返事をした。木曜になって、「明日から旅行だけど用意した?」と言われギョッとした。

今週末は金曜の夕方からだった。母の仕事が終わり次第、品川駅で合流しそのまま新幹線に乗る。母は「絶対残業せずに定時で上がるから、先に品川駅で待ってて」と待ち合わせを決めてきた。ほぼ、毎日のように19時まで残業している母が、本当に残業せず、19時19分発のぞみ京都行きの新幹線に間に合うのか?チケットは前日に購入したので、先に渡された。さらに「もし私が間に合わなかったら、先に新幹線に乗って、京都駅で福知山線に乗り換えて、終点の福知山駅まで行ってね」と付け加えてきた。母はその次の最終電車に乗るとの事。いやいや、待て待て、私はまだ中学生。少しは心配して欲しい。行く前から暗雲が立ち込めてきた。「可愛い子には旅をさせよ」っていうじゃない。と楽天的な母。お母さんよ、今は令和。昭和と違って、犯罪はずっと巧妙で凶悪になっているんです。ドキドキしながら、品川駅で母が来るのを待った、時間は19時をすぎ、19時17分発のひかりもホームに現れた。「ああ、これに1人で乗るのか…」と落胆した。気軽に返事したことを後悔した。新幹線に乗るために入り口に並んでる人の列を眺めた。スーツ姿の男性も多かったが、家族や恋人、夫婦らしき人たちが楽しそうにお喋りしている。「羨ましい」と心底思った。

すると母が現れた。「魚とお肉どっちがいい?」新幹線の中で食べるお弁当の話だった。そんなことより、ラインを送れ。と思ったが、現れてくれた安堵感の方が大きかった。荷物を持って新幹線の中に入ると新幹線特有の匂いがした。狭い通路をお互い譲り合いながら通り自分達の席に着いた。席を後ろまで倒し、前のネットにチケットとお茶をいれ、前の座席についている机を手前に倒した。もちろん私は窓側だ。母は荷物を上の棚に置き、コートを脱いで荷物の横に置いた。すぐに机の上に肉のお弁当が置かれた。お腹が空いていたので、すぐに食べた。和牛ステーキ弁当、お肉は柔らかくジューシーで美味しかった。

「お肉美味しい?それ最後の1個だったんだー」母も私も肉好きだ。「一口食べる?」
と気を遣った。母は隣にいてくれるだけで十分。いつも1人だから、高いお弁当買っても美味しく感じなくて」といった。母は嫌味で言ったんじゃない。美味しそうにお弁当を頬張っている横顔を見て、今まで旅行を断ってきたことを申し訳なく思った。お弁当も食べ終わり、お腹がいっぱいになったのでウトウトし始めた、その頃にはすでに名古屋を通過していた。最近の新幹線は本当に早い。本気で寝てしまったら、終点の広島まですぐに着いてしまいそうだ。

何なく、京都駅に到着し、福知山線に乗り換えた。ここからが旅の始まりだった。
さっきまで車で富士山の五合目まできたのに、急に降りて本格的な登山に変わった感じだ。JR特急城崎線に乗ったが、終点の福知山に着いたのは22時55分だった。誰もいない何もない駅。タクシーはあるのか?もうやってないんじゃないか?心配になった。母は呑気に「星が綺麗だねー」という。少し待っていたら1台やってきた。タクシーに乗り込み一番近くのホテルの名前を言った。車内から見える景色はほぼ街灯がなくどんな街なのか全くわからない。15分ほどしてホテルに着いた。ロビーには誰もいなかった。呼び鈴を押したら、眠そうなホテルマンが出てきた。チェックインの作業を終えると、母が「6時7分の始発に乗りたいので、5時45分ぐらいにタクシー1台お願いします」と頼んだ。すると「その時間タクシーは動いてません。6時から営業開始です。しかも2台しかないので、空いてるかわかりません」と言われた。

えっと、ホテルまでタクシーで15分かかった。歩いたら30分以上、6時7分の電車に乗るには…。母はどうする気なのか? とりあえず、母は朝1番のタクシーを頼んで、部屋に向かった。今、時間は24時を回ってる。シャワーを浴びて、明日の準備をしたら2時近くになっていた。5時半に目覚ましが鳴った。寝ぼけたまま、6時に母とロビーに降りた。6時15分にタクシーがやってきた。もちろん6時7分の始発には間に合わない。さて、母はこれからどうする気なのだろう。(→続く)

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