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ライブハウスが怖くて行かない人がいる
ドルオタの主人の部屋をノックする。
「あのさ、ちょっといい?」
「なに?」
壁にはアイドルの写真や、サインを書いてもらったポスターやTシャツが飾られている。
「5月4日に行く渋谷のクラブエイジアでのライブさ、来場目標300で、もう300超えてるんだよね。まだまだ増えそうな感じで。エイジアってクアトロより大きいっけ?」
「いや、クアトロよりは小さかったはず。エイジアで300入ったら結構パンパンだぞ。俺行きたくない」
「だよね、でもフェスなんだよね。18組も出る対バンで」
「あー、だったらバラけるから大丈夫」
「フェスで、もし仮に400枚チケットが売れたとしたら、常時フロアにいる人数って平均どのくらいだと思う?」
「50か……よくて80か。人気なければ30ぐらいだと思う」
「あー、やっぱそんくらい減るか。いやさ、本当に300入ってたらスカートで行かない方がいいかなって。BAND-MAIDのときの格好で行こうかなと」
「それはないだろ。エイジアってフロア以外のところも広いから、そこで待機してる奴がいるはず。再入場ドリンク代は?」
「かかる。600円」
「それでも、まぁ、飯食うために出るやついるよ。で、物販前に戻ってくる。だいたい目当て以外は見ないから」
「じゃあ普段着で行こうかな。ロッカーもあるし」
「ロッカーは使わない方がいい」
「え」
「盗難が多いから」
「ロッカーなのに?」
「盗まれるんだよ。危ないから、荷物少なめで身につけて行け」
「なるほど。わかった。ありがとう」
ドルオタの主人の部屋を出た。
ライブのことは、ライブ慣れした人に聞くのが1番だ。
わたしもライブはそこそこ行ってるけど、主に激しすぎるBAND-MAIDなので、服装の選択肢は一択だし、フェスは一度もない。
対して主人は、お客さん1、2人しかいない地底アイドルから、TIF(東京アイドルフェスティバル)まで幅広く行っている。
さて、どうなるか。
ライブ前は、アーティストの方も、お客さんも、みんなドキドキしてる。
楽しみだけど、緊張もある。
ライブに行ったことがない人も世の中にはたくさんいて、その人たちは、どんなにそのアーティストが好きでも、ライブハウスが怖くて行かなかったりする。
家で曲を聞いたり、配信を見たりするだけで満足。
ライブ映像を見て、行った気分になってる人たち。
昔のわたしもそうだったので、その気持ちはよく分かります。
初めてはとても怖い。なんだかよく分からないから。
でも一歩を踏み出すと、家で配信を見ているのとは全然違くて、生の音楽はすごい。
とても緊張するけど、その緊張も含めて良い経験だと思えば、世界が広がっていく。
そして、度胸がつく。
その度胸が、日常生活にもいきてきて、
ライブハウスに行けた自分が誇らしく、なんだか強くなった気分になる。
わたしの推しはサポートのギタリストなので、だいたいステージにいます。
いつご飯を食べに行こうかな。
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